地の巻
「ちょっと、ちょっと起きてよ!ホント困るんだけど。勘弁してよ」
遠くから聞こえる子供の声に、しだいに俺の意識はハッキリとしていく。
起き上がり辺りを見渡すと、つい1ヶ月ほど前にも見た覚えがある、だだっ広い
空間が広がっている。
そして遠くから風に乗って聞こえる、『帰って来た○ッパライ』のBGM。
おいおい、まさか……。
「はあ、信じたくないけど、そのまさかだよ……」
声の聞こえるほうを見ると、見覚えのある子供が立っている。
「もう関わりたくなかったのに、なんて悪運の強いおじさんなんだろう。まあ、転
生の間に来ちゃった以上、1回は異世界に行かないといけないから仕方ないけど、
ちゃっちゃと済ませちゃうよ」
神様は渋い顔をしながら、さっさと俺を転生させようとする。
しかし、俺の返事は神様にとって予想外だったらしい。
「チェンジだ!!」
「…………?はい?」
「だから、チェンジだって言ってんだろ。もうお前のチート能力なんてこりごりな
んだよ。なにが『世界に広げよう○もだちの輪』だ。
ただの、『ほん○くコンニャク』じゃねえか。冷静に考えたって、言葉の通じな
い異世界モノなんて見たことねえよ。そんなんじゃ物語が成り立たねえだろうが」
すでに俺の中から、神様に対して敬語を使わなければなどという考えは抜け落ち
ているが仕方が無い。
なにせこの神から貰ったチート能力は、ロクに役に立たなかったのだから。
「出すならせめて、『どこでも○ア』とか、『もしも○ックス』くらい役に立つも
のにしろよ。とにかく、お前のろくでもないチート能力なんぞいらんから、神様を
チェンジしろ!」
「チェンジって……。おじさんが良く行く店じゃないんだからさ。まあいいや。
こっちも能力を理解できない人に与えても仕方ないしね」
神様はブツブツ言いながらも、なにやら帳面を開き、律儀に代わりの神を探して
くれているようだ。
「う~ん、この人は大人気で予約待ちだし、この人は面食いだから、おじさんなん
か一目で断られるだろうし……、この人の与える能力はレベルが高すぎて、おじさ
んじゃ宝の持ち腐れだろうし……。う~ん、何の取り柄も無いモブキャラに与えら
れる能力って、結構難しいんだよね……」」
なにやら馬鹿にされている気もするが、それでも神様は真剣に探してくれている
ようだ。
あれ?実は面倒見のいい人なのかもしれない。
ちょっと言い過ぎたかもしれないと反省をしていると、お目当ての神がいたらし
く、俺に声をかけてきた。
「あ、じゃあこの人なんかどうかな?自分が望むとおりに、なんでも好きな昆虫に
転生させてくれるんだ」
「却下だ……」
「ええ~、なんで?カブトムシとかクワガタになれば、男の子に大人気だよ」
俺は男の子の人気が欲しいわけじゃない。女の子からの絶大なる人気が欲しいの
だ!
百歩譲って子供に大人気だとしても、それは男の子じゃない!ロ○ータからの絶
大なる人気が欲しいのだ!
「う~ん、じゃあこの人はどうかな?どんなブサイクだろうが、異性にモテモテに
なれるチートを授けてくれるんだけど……」
え!?ナニソレ?俺の願望にピッタシカンカンじゃん。そんな人がいるなら、早
く紹介してくれればいいのに。よし、その人に決定しよう。
「まあ、一つだけ欠点……というか、条件があるんだけどね」
ん?なんかちょっと嫌な予感がするぞ。
「まあ、転生するときに性別が転換するんだよ」
「はい?」
「つまりね、男のおじさんが転生すると、女になるってこと。つまりおじさんは転
生先で、男にモテモテになるってことさ。もちろんコレはコレで、主に新宿二丁目
界隈とかで大人気のスキルなんだけどね」
「却下だぁぁぁ!」
冗談じゃない!俺はあくまでも人間の美女や、ケモ耳の美少女に、俺の暴れん棒
をグルメに『美味○ンポ』して欲しいのだ。
たとえ女になろうが、自分が美味チ○ポする立場になるなんてとんでもない!
いや、て言うか、二丁目から転生してる人がいるの!?
「もう、わがままだなぁ。じゃあ、これはどうだい?今流行の、モンスターへの転
生さ。ちょうどスライムに転生できる人が手が空いてるんだけど」
「それも却下だ!」
冗談じゃない。美味チン○どころか、粘液体のスライムでは、俺の暴れん棒すら
無くなってるじゃないか。
あ、でも自由に変形できるってことは、もしかして憧れの触手プレイもできるっ
てことか?
一瞬考え込むが、湖で出会った水棲スライムみたいなのになったりしたら、ずっ
と岸辺で女の子を待ち構えてなきゃいけないってことか?
う~ん、やっぱちょっと違う気がするな……。
「あ~、もうさっきから何だいおじさん。要するにお○んちんがおっきければいい
んだね?もう時間もないし、この人にお願いするよ」
「あ、おい、ちょっと……」
こちらの返事も聞かずに決めた神さまは、俺の抗議の声も聞かずに能力を決定し
たようだ。
「じゃあ、よろしくお願いしまーす」
慌てて神様に駆け寄り、一旦止めさせようとするが、俺の意識は、最後までセリ
フを言い終わることなくブラックアウトしていった。