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終話 わらしべ転生の巻

「すっご~い。信じられないくらい大っきい!」

「あ~、ずる~い。その暴れん棒はあたしのなんだからぁ!」

「いや、待て、その男は私に暴れん棒を入れてくれると言ったのだぞ!」

「ち、ちがうもん!お兄ちゃんは、お兄ちゃんの、お……、暴れん棒はあたしだけ

のものだもん!」


 グフ……、グフフフフフ……。


 可憐な少女たちに囲まれた俺は、今まさに暴れん棒を解き放とうとしていた。


 のだが……。


 ん?まてよ。何かこのシチュエーションに見覚えがあるぞ……?


 あ、そうだ。これ夢だよ……。


 夢と気付いてしまった以上、起きたくないと思っても、ぼんやりと意識が覚醒し

ていく。


「あれ?ここは……」


 目覚めた俺が辺りを見回すと、そこは最近何度も見た、だだっ広い空間が広がっ

ている。

 そして風に乗って流れてくる『帰って来た○ッパライ』


「おいおい、まさか……」

「はぁ……。信じたくないけど、そのまさかだよ」


 背後から聞き覚えのある声がし、あわてて振り返ると、そこには予想通り、見覚

えのある子供が立っていた。


「何?何なの?あれだけのことをしておいて、なおかつ何で何回も転生の間に来れ

るの?いったい、どれだけの悪運を持ってるっていうの?」

「い、いや、俺に聞かれても……。そもそも俺が望んで来たわけじゃないし……」

「まったく……。こんな人を紹介しただなんて、どんな顔でオーさんに謝ればいい

のさ……。あ、オーさんってのは、おじさんをオークに転生させた神様のことね」


 ぶつくさと文句を言っているが、いや待てよ!そもそもがオークに転生してくれ

なんて頼んだ覚えはないぞ。俺の要望は、あくまで金髪美少年だったはずだ。

 それに、元を辿れば、お前が前回、何の役にも立たない『ほん○くコンニャク』

を与えたせいだろうが!


「それについては、見解の違いさ。僕の能力の素晴らしさを理解できない人と、こ

れ以上議論しても仕方ないよ」


 ぐっ、何かイラッとする。


 いや、今はそんなことを言っている場合じゃない。ここに来たってことは、俺は

再び転生するか、元の世界に帰るってことだろ?



「まあ、不本意ながらそういうことだよ。ただし、ルールとして、転生後に転生し

なおすことは出来ないから、もう一度元の世界に戻ることになるけどね」


 神様はため息を吐きながら、さっさと俺を元に戻す準備をしているようだ。


「とにかく、もう二度と戻ってこないでね」


 神様は心底嫌そうな顔で俺に告げる。


 まあ、とりあえず現状維持に戻るならいいか……。だが、これほどまでに失敗し

ながらも、すでに俺は二度の転生を果たし、再び元の世界に戻れるという。



 もしかして、神様の言う悪運とやらが、俺の本当のチート能力ならば……。



 徐々に遠くなる意識の中で、俺は最後に精一杯の嫌がらせをすることにした。


 俺は神様に向かいニヤリと笑うと、親指をぐっと上に突き上げた。


「I'll be back!!」


 わずかに残る意識の中で、神様の唖然とする表情だけは確認できた。


 そう、俺はいつか再び異世界に舞い戻る。そして次は、もっと優れた能力を身に

付けてやる。

 さながら『わらしべ長者』のごとく、舞い戻るたびにパワーアップしてやるぜ!


 フフ、俺、グッジョブ!


 そして俺の意識は、ブラックアウトして行った。




『ピピッ!ピピピッ!ピピピピピピピ…………』


「お客さん、起きて。時間ですよ」


 けたたましい電子音と、誰かに揺さぶられる感覚で目を覚ます。どうやら俺は眠

り込んでいたようだ。


 目覚めた天井は、見慣れた我が家のものではない。


「あ、あれ?ここ……どこだ?」

「もう、お客さん寝ぼけてるんですか?よっぽど疲れてたんですね。なんにもしな

いうちに寝ちゃうんだもん」


 隣から聞こえる女の子の声で、我に返る。そうだ、俺は風○店にいたんだ。


 おそらくは、火事になることのない世界に戻ったのだろう。


「お客さん、時間だけどどうします?延長も出来ますけど……」


 くっ、何ということだ。あの神様め。せめて、店に入ったくらいの時間にまで戻

せよ!

 いや、まさかこれも、奴の嫌がらせだろうか?


 しかし、せっかく高い金を払って店に入ったんだ。しかも、異世界で寸前のとこ

ろまで行ってたおかげで、俺の性欲はMAXだ。


 俺は、慌てて財布の中身を確認する。女の子の前でカッコ悪いが、どうせ二度と

会うことはないだろうし、今は格好より性欲だ!


 やはり、前回の俺の存在は、異世界でも現実だったように、今回もこちらの世界

とリンクしているのだろう。

 エルフに渡した分の金は無くなっていた。


 しかし……、イケる!


 まだ、延長できる金は残っている!!


 俺は、迷うことなく女の子に告げた。


「延長お願いします!」




「ありがとうございました」

「ありがとうございま~す。また来てね~」


 無表情の黒服と営業スマイルの女の子に見送られ、俺は薄暗い店の中から、清清

しい気分でまぶしい日の光の元へと歩いていった。


「あ、そうそう……」


 俺は去り際に、彼らに告げておいた。


「この店の間取りや消防設備、かなりマズイっすよ。消防の立ち入り検査が入った

ら、一発アウトです。それに、ホントに火事が起きたら、個室は袋の鼠になります

よ」


「は……?」


 二人とも、きょとんとした顔で何を言われているのかわからない様子だったが、

まあ言うべきことは言った。あとは彼らがちゃんと店長に伝えるか、店長がどう判

断するかだろう。


「じゃあ、ありがとう」


 俺は女の子にお礼を言って、駅へと歩いていった。


 オーガ?トロール?はたまた、ドラゴン?いや、まさかの逆わらしべで、スライ

ムとか?

 次に転生した時には、何になっているのか。いろんなパターンの、いろんな戦略

を考えながら……。


 その後、最終的に電車賃が足らず、家までの残り十数キロを3時間かけて歩くハ

メになるのだが……。



~Fine~

 お読みいただき、ありがとうございました。前作『遅ればせながら異世界に羽ば

たいたおっさんは暴れん棒将軍の夢を見るのか?』の続き物として書きました。

 随分と下品でいい加減な作品となりましたが、失笑交じりでも笑っていただけれ

ばと思います。もしかしたら、今後もおっさんはわらしべ転生を繰り返すのかもし

れませんが……。

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