董卓顔の俺氏。書籍の重要性を学ぶ
今までの俺であれば据え膳――とか言いながら襲い掛かるところだ。
しかし、今の衰弱した俺ではどうにもならないだろう。
あぁ、何もしなかっと誰か言ってくれ――
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さて、俺はソフィアから魔力供給を受けて数日で起きれるようになった。
食べ物もなんとか食べられるようになっている。
料理を作っているのは俺なのだが。
少なくともソフィアの胃袋は掴んだ。
調味料や料理器具の問題は無かった。
ソフィアの転移魔術があれば、俺の家の行き来は容易だったのだ。
俺の家にはいろいろとものが仕込んであったのだ。
ただし、肉や野菜などは、現地調達であった。
何の肉かは問うまい。
魔界における上級モンスター肉なのだ。
つまり超が付くほどの高級食材である。
それがまずいわけがない。
俺は男料理であれば一通りこなせる。
こんなところに社会生活に出てからしばらくの外食生活から、貧乏に耐えかねて自炊に変えたところが功を奏している。
袋麺にお湯をぶち込んで煮るだけの生活でなくて心底よかった。
あれも地味に高いのだ。
ソフィアはそんな男料理を実にうまそうに食べている。
柔らかくて赤色で新鮮な色のプルプルした肉を直火で焼く。
それに絡めた柔らかい緑の葉物野菜がある。
そして、真っ黒な秘伝のタレを投入する。
それはさぞかし上手かろう。
俺は人の三大欲求のうち、ソフィアに対して2つまで満たしたことになる。
ソフィアには感謝しかない。
彼女がいうには俺を助けるためにわざわざ巫女職になったそうだ。
だが、魔人であるソフィアに対して加護を与えるようなような神などはほとんどいない。
だから巫女職になるのは大変だったそうだ。
詳しくは聞いてはいないが、きっとろくでもない神なのだろう。
もしかすると邪神かもしれない。世の中聞かなくても良いことはたくさんある。
正式名称は掛巻も畏き九頭竜が六つ――などと長ったらしい名前だったので、俺の頭の中で右から左に文字が素通りしていったが、どうやら邪神ではなく、天鈿女系の神らしい。
人を笑わせ電波することが好きな神らしいのだが、詳しいことは知らない。
この世界の伝説では確か――九つの世界を破壊して今の世界を作り出した赤巾様という主神がいて、その神が引きこもりで世界の詳細の創造をするのが面倒になってその下に800万程度の神々を作ったという神話がある。
要は多神教だったはずだ。
どっかで聞いたことがあるような、ないような――
ともかく、その契約した神が邪神でないことを祈ろう。邪神でなければ安心だ。あまり言うとフラグになるのだろうか。
――いや、邪神でも治癒してくれたのだからこの際は良いことにしよう。
もといた世界には菅原道真のように元怨霊であった学問の神様もいることだし、些細なことは気にしなくてもいいだろう。
そんなことはともかく、こうしてソフィアの巫女系魔術によって俺は復活を遂げたらしい。
親の反対を押し切って治癒をしてくれたとのことで、親公認らしい。
やはり親に対しては逆らいたい年頃なのだろう。
親御さんはきっと泣いているに違いない。泣かしたのは俺だが。
しかし、なにか外堀を埋められたような気がしてならないのはなぜだろう。
いや、ソフィアが埋めたいのであれば、喜んで自分からも埋めに行きます。
あぁ、俺はソフィアが大好きです。
「とはいえ……」
俺はこうして復活したわけだが。
問題が3つある。
1つ。筋力が回復しない――
おっさんだった身体はソフィアの治癒術によって回復している。
董卓顔であることには変わらないが。
そしてソフィアの身体に合わせるように、若返りも図らせてくれたようだ。
どうやらこちらはソフィアのお父さんが関与しているようだ。
せめて肉体年齢は釣り合わせようとのことらしいが、怖くてソフィアのお父さんには合っていないので詳しいことは分からない。
そして、身体の接合の仕方が雑だったようで筋肉の付きが変なところがある。
例えば握りこぶしを作ろうとしたら人差し指だけが逆に開いてしまうといった現象がままある。
これは月日を経てばもとに戻るのだろうか。
一度あまりにも変な部分は《気》を通して破壊して、ソフィアに治癒魔術をかけて貰うとかした方が良いのかもかもしれない。
そして次の問題だ。
2つ。金がない――
一人で暮らしていくには問題がないし、食事までならどうとでもなるが、ソフィアを養って生活するには何かと入用になるだろう。
気になるのはまず服か。いろんな服を着せてやりたい。
身体のほうは月日が経てば治るかもしれないが、お金の方は月日が経てば減るしかない。
減るのを防ぐには働くしかない。
そして、最大の問題がある。
極めて重要だ。
3つ。結婚情報誌:ゼク〇ィがない――
外堀を埋められたらやっぱりそういうことになるだろう。
だが婚約? 結納? さっぱり分からない。
この世界には結婚するために必要な知識を集めるための書籍などまったくないのだ。
当然だがインターネットなどあるはずがない。
まず指輪とかどうするんだ?
そもそもこの世界に、魔人たちに結婚指輪なんて風習があるのか?
元部下のエルフのリネージュあたりに聞いておけばよかった。
婚約指輪は異世界転生人としてはぜひ欲しいと思うのだが。
最高の景色で叶える最高のウエディング! 実にいいの。
だが、この世界には、
・凍る温度からちょっとだけ高い宝飾メーカーも、
・有名なネズミを有する著作権に厳しいあの宝飾メーカーも、
・オーソドックスにTから始まるファニーな面白い宝飾メーカーも、
そんなものは何にもないのだ。
だから中小の隠れ家的存在のお店を探すしかないのだが、その店もゼ〇シィ内の広告がなければ俺が探すことは困難だ。
いや、鍛冶ギルドとか知り合いのドワーフとかなら知っているかもしれない。
そうだ。彼らに結婚情報誌:ゼ〇シィの代わりになってもらう。
これからは彼らのことを異世界のゼ〇シィと呼ぶことにしよう。
ドワーフ皆兄弟。
――
―――
――――――
―――――――
いかんいかん。
そもそも気が早すぎるかもしれない。
彼女とか作ったことがなくててんぱってしまった。
ともかく、優先順位は、お金、体力回復、そしてゼ〇シィの順だろう。
ふと見ると、ソフィアはご飯を食べ終えてこっちを見ていた。
「ソフィア」
「ん? おじさま? なぁにぃ?」
俺はソフィアのほっぺたについた秘伝のタレを取りつつ、とりあえず金の問題を解決しようと思った。
「ちょっとお金の問題を解決しようと思うのだが、何か手はないか?」
「え? 人間界に襲撃するのぉ?」
――なぜにそういう思考になる。
魔人とは、お金が欲しければヒトを襲撃するものなのだろうか。しそうだ。
もう少し穏便な方法はないだろうか。
「いや、それは人様に迷惑が係るだろう」
「じゃぁ、小銭でよければ冒険者ギルドに行くのが良いんじゃないかなぁ? 僕のお母さまも冒険者だったからぁ、そのよしみで最近ん、魔界に冒険者ギルドができたんだよねぇ」
あるのかよ。
魔界に冒険者ギルドなんて。
どうやら冒険者ギルドは商人なみの機動力があるらしい。
魔界北側からの出入りは俺が足止めしていたから、冒険者ギルドが入り込む余地があるとすれば中央のルートか、南側からのルートである。
確か南側は暴食之王たる魔王ベルの支配地域であったはずだ。
南側は魔王ベルと手を組んだのか?
ありえないことはない。
そういえば最近、南側のルートから魔王軍が進撃したという情報をとんと聞いたことがないことに気づく。
ただの情報封鎖の一環かと思っていたが、果たして――
「じゃさぁ、明日は魔界の冒険者ギルドに行きましょうかぁ」
ソフィアからの提案は渡りに船である。
「お弁当を作ってぇ」
ちなみに弁当を作るのはもちろん俺である。
「冒険者ギルドは、転移魔術でいくのか?」
「えぇ、転移魔術でぇ。だって遠いものぉ」
この転移魔術は、楽といえば楽なのだが、地理がさっぱり把握できないところが玉に瑕だろう。
ともかく、明日のために弁当の準備が必要だ。
弁当用のお櫃や風呂敷などを俺の家から探して準備するだけで、今日は夕焼けを迎えることになる。
よし、ソフィアの大好きな黄色い卵料理は多めにしよう。