董卓顔の俺氏。吾輩は猫であると知る
吾輩は猫である。
そんな小説を書いた文豪は誰だったろうか。
あるいは。
夜寝て朝起きたら幼虫になっていたという小説を書いた文豪は誰だったろうか。
俺の気持ちはまさにそんな感じだった。
まるで、自分が自分でなくなるといった感覚に陥る。
体が、ひどく重い――
どうやら猫ではないでいようだが――。本当に猫ではないのだろうか?
吾輩は猫であるは英語でいうなら I am a cat. だ。
今の俺は I am a cut. だ。
うむ。似ているな。本当に猫ではないのだろうか?
文法的に正しいかどうかは知らん。
俺は目が覚めると、白い天井にいくつか黒いシミがあるのに目が付いた。
どうやら体は動かせないようだ。
俺はソフィアのお父さんに全身をくまなく切断されていた。
一瞬の出来事だった。
切り刻まれる瞬間を俺でも把握できていない。
難手の使い手として大抵の攻撃については抵抗できるという自負はあったのだが。
いままで、ここまで圧倒されることは無かった。
およそ人の攻撃力が10だとすれば、1万くらいはありそうだ。少なくとも戦闘力9000以上だ。
やはり、それが魔王の実力だということなのだろう。
そして思う――
容姿から判断してあのイケメンが、おそらく好色之魔王エディプスなのだろうか。
称号からしてただの女好きだけだと思っていたら、存外に魔王にふさわしい戦闘力もあったということだ。
というか、男ってそういう意味だったのか? ソフィアの男という意味?
単に奴隷が欲しかったというのではなく?
そんなことを、天井のシミの数をなんとなく数えながら考える。
俺は肉体をばらばらにされた。
この部位欠損著しいこの身体に対しては、もはや何をしても焼け石に水だろう。
だというのに、もしかして今の俺は生きているのだろうか。
意識が――。なぜかある。
だが俺は、とにかくぼーっとしていた。
いや、俺はぼーっとしていたい。というのが正確か。
――再びだんだんと意識がなくなってきた。
体はなぜか動かすことができない。
というか、体はばらばらにされたのだから、無いのではないだろうか。
実は頭だけだった。とかありそうだ。
吾輩は頭である。名前はまだない。
とか、とある文豪ならば言うのかもしれない。
とにかく全身が気だるく、体が動かしづらい。
何かに拘束されているかのようだ。
――ん? 拘束されている?
それなら拘束される体があるはずだ。
俺が視線を天井から下に向けると、その原因が分かった。
真っ白なベットの中に俺はいた。
俺に掛けられた暖かいシーツからはおひさまのような匂いがする。
そしてシーツと俺の間にソフィアがいた。しかも全裸だ。
ソフィアの重みで体が動かせなかったのだ。
これでは痩せこけた身体ではどうしようもない。
ソフィアの身体はあたたかかった。
きっと俺の身体を死から遠ざけるために全身で温めていてくれたのだろう。
ソフィアは全裸で、直接俺の身体を温めてくれていたのだ。
彼女の優しい匂いが鼻をくすぐる。
思わず目が潤んだ。
「あ、おじさまぁ? 目が覚めたんだ」
「う……。あ? ソフィア?」
そんなソフィアと目があった。
「おじさまの身体が壊れてからもう3か月も経っているのですよぉ」
「ソフィアが――。助けてくれたのか――」
「うん」
「ありがとう――」
抱きしめようとしたが手が動かしずらい。
どうやって欠損部位を修復したのかなど聞かなければいけないことは多々ある。
――が、今は生きていることを喜ぼう。
俺はそれでも、力を振り絞りソフィアを抱きしめた。
「ちょっ、これ――」
「ありがとう、ソフィア――」
とにかく、俺は身体がだるかった。
ソフィアの包み込むような身体は、とても柔らかかった。
そうして、俺は意識を再び手放した――
要約:これ絶対――