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婚約破棄しましたが、前世の記憶を思い出したのは男の方だった!  作者: 夢之埼ベル
新たなる美少女を捕縛し暁に死す
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董卓顔の俺氏。異世界の真実を語る


「君、もしかして異世界転生者なのか?」


 俺が問いかけると、姫さまは露骨に反応した。


「え、何のことかしら?」


「――なるほど」


 慌てる姫さまを見て、俺は確信する。

 これはほぼ異世界転生者で確定だろう。


「おじさまぁ? 異世界転生者ってなあにぃ?」


 ソフィアのこのような反応のこそが、こちらの世界では普通だ。


「ここの主神、赤巾(かーきん)さまが納める世界以外の別の世界からやってきた人のことだな」


「おいおい小僧。馬鹿言っちゃいけねぇぜ。アリス姫はどう見ても昨日俺が拉致ってきた新鮮な姫さんだぜ? 異世界転生ってそんな得体のしれないものと一緒にされたら困るぞ」


 なんだその新鮮な姫って。野菜か? 北極しゃきしゃきか?


「異世界転生人とは、その特定の人にあるタイミングで前世が蘇る事象のことを言うんだ。例えば、――現カタルニオチタン王国のエリス王妃みたいに」


 こちらの世界では異世界転生などというものはほとんど知られていない。

 一人の例外を除いて。

 それが現カタルニオチタン王国のエリス王妃である。


 エリス王妃は地球世界の現代科学を遺憾なく発揮して自国に貢献したため、俺の所にまで情報が回ってきたのだ。


 俺はエリス王女の顔も見たこともないが、調味料系など一部は利用させてもらっている。

 味噌、醤油、酢橘、山椒――。さまざまだ。

 いわゆる技術チートだな。


 そしてその異世界転生が起きた理由も俺には推測できる。俺と同じ理由だ。


「ほぅ……。エリス様か――」


 俺の言葉に、エルフのお兄さんの目がするどくなる。

 その有用性を把握したらしい。


「じゃぁ、エリス様も今度拉致ってくるか。エリス様の発明した、カレーという食べ物は神の与え給うたまさに至宝であるからな」


「ほらそこ! なんでも拉致ろうちしたらダメだからねー」


「――で、この姫さまは本当に異世界転生者なのか? 今まで姫さまだった人物が急に冒険者ギルドなんて泥臭いところで働こうなんて思うはずがない、というのは理由として薄いと思うぞ?」


 エルフのお兄さんの言うことはもっともだった。


「ふむ……。まずは自己紹介とかしてみてボロがでないか確かめてみよう。俺の名は難手(なんで)家の末席に連なりしローという。そうだな。人呼んで異世界の董卓だな。残虐なことばかりしている。それから、彼女が――」


「こんにちは。ソフィア・コンプレックスです」


 ソフィアはぺこりとアイサツした。

 うん。しっかりとして良くできた女の子だと思う。偉いぞー。


「彼女は魔人だ。強いぞ。さしずめ異世界の呂布といったところか? で、君は――」


「――なぜ三国志。えーっと。私はアリス・アメジストです。今どうなっているか分からないけど、大虎(たいが)と龍の紋章を有するアメジスト王国の第一姫していました。えっと、その(たとえ)で言うなら貂蝉ポジションかしら?」


 はい。異世界人という言質(げんち)をいただきました。

 三国志なんてこっちの世界の人が知るわけがない。


 ……。知らないよね?


「ソフィア。三国志って知っているか?」


「知らないのぉ。なにそれぇ?」


「有名な異世界の物語だねぇ」


「ふーん。どんなお話なのぉ」


「大雑把にいうと、董卓っていうおっさんと、むちゃ強い呂布っていう武人と仲良くなったのを快く思わない嫉妬に狂った老人が、貂蝉っていうむちゃくちゃ可愛い女の子を董卓に当てがって、三角関係の縺れから呂布が董卓を刺す! って話だったかな?」


 俺の三国志知識はこの程度である。

 あとは劉備が総受けで、諸葛亮がすごいくらいだ。

 つまり俺にとって三国志とは昼メロのことである。


 ――って、あれ?


 それ最終的に俺死んでるじゃね?

 もっとも、あの世界の人たち最後にはみんな死ぬけど。群像劇だし。


「へぇ――」


 急にソフィアの目が冷たくなる。

 なぜかソフィアの笑顔が怖い。


「おじさまぁ? 僕以外の()を女にしたらぁ、その三国志のお話は現実になるから気を付けてねぇ――」


 なにかヤンデレが入りつつあるソフィアに俺は戦慄した。

 いつの間にソフィアさんはヤンデレ属性を装備したのだろうか。


 そんなソフィアも可愛いかもしれない。


 しかし、ふむ――

 だが、それだと俺刺されて死ぬよな。

 俺は、俺が死ぬシーンを鮮明に想像できる。


 そう。


……

………

さよなら。


 とかソフィアに言われて――


「ひどいよ! 自分だけ、貂蝉と幸せになろうなんて!!」


 とか言いながら。


 ぶすりと。


 ――いかん、いかん。それは回避せねば。どこの三国志の最終回だ。ナイスボート!


 とにかくこのアリス姫様がいくら可愛かろうが、ソフィアに刺されたくはないぞ。

 なんとか取り繕わなくては。


「ははは――。いくらこの貂蝉スタイルなフォトショ可愛い娘が迫ってきても、ソフィアの方が大好きに決まっているじゃないかぁー」


 ソフィアをなでなでしていちゃついていると、アリスが反論してきた。


「フォトショ可愛いってなによ。いま対面じゃん。生で今向き合っているじゃん」


 はい。フォトショッ〇を理解できている時点でもう異世界人確定来たな。


「ふむ。アリスちゃん。この異世界でフォトショなんて知っているのは異世界人だけなんだよ?」


「う。しまった――」


 小さく舌を出すアリスさん。


 ――君もうわざとでしょ?


 わざと可愛いを狙っているのでしょう?

 俺が異世界転生人であることを調べたいとか、そうなんでしょう?


 でもそれなら。

 それなら、見事にこの貂蝉っぽい超絶ヒロインのアリスさんの策略に俺ははまっていることになる。


 ――ならば! 『毒をくらわば皿までも』という格言を俺は思い出した。


「ふむ。ここは最後にとどめを打ってみようか――」


 俺は突然ジャンプして三回転したあと土下座し、両手を姫さまの方に振り向けてひらひらさせながら、あの挨拶をした。


 切なくも懐かしいこの挨拶は、それに返事(カウンター)をしなければカンサイと呼ばれる地方の人間であれば挨拶のできないヒトと見なされて一般の社会人生活が出来なくなることを余儀なくされるという――


 これで、アリスが異世界転生前にどこに住んでいたのか分かるというものだろう。


「アリスちゃん。(もう)かりまっか――」


「………」


 あれ? 反応薄いな?


「とれとれぴちぴちカニ料理でゅーわー、って言ってみて――」


「………」


「関西電〇保安協会、って言ってみて――」


「………。私、関西人じゃないんだけど。ほら、ふなっ〇ーがいるところよ」


「あぁ、山梨かぁ」


「千葉よ! 千葉!」


 ちなみに関西人は一般的に滋賀県より東の県名は詳しくない。

 だいたい茨城とか「いばら『き』」とか読めん。あたまおかしい。

 偉大なる栃木と合わせて「いばら『ぎ』」にすればいいのに。茨城県民は栃木県民に謝れ。


 ――はともかく、アリスが関東の千葉県民――それも船橋市民だということが確定したわけだ。

 ところで船橋ってどこだ? 東京ディ〇〇ーランドの近くだったっけ? ――まぁいいや。


「ほらな。アリスちゃんが千葉県船橋市の異世界転生者であることがこれで決まりだ」


 俺はゆっくりと立ち上がった。


「どこがよッ」


 千葉県船橋市民のアリスちゃんは関西人ではないがツッコミの要素はあるようだった。


「おじさまかっこいい……」


 そんな俺をソフィアが目をきらきらさせて見つめている。

 探偵のようにドヤ顔を決めたのが良かったのだろうか。


 ――それとも、ソフィアはどんな内容でも攻略対象を口説ける方向の選択肢を選んでしまう乙女ゲーの女主人公のように包容力のある少女なのだろうか。

 うん。いいぞソフィアもっとやれ。俺に都合の良い選択肢を切り続けるのだ。


 ともかく、アリスが異世界転生者だということは分かった。

 だから俺は、この世界の真実をアリスに語る。


「――で、この世界で異世界転生が発生したということは、アリスちゃんは『婚約破棄された』と推測しているのだが、身に覚えはないかね?」


「えっ――」



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