董卓顔の俺氏。冒険者ギルドの依頼を眺むる
――そういう感じで、ここでの取得はデメリットがかなり大きい冒険者ギルド資格者証ではあったが取ってしまったものは仕方がない。
そして背に腹は代えられないということで、まずは依頼を眺めることにした。
だが、ここで疑問に思う。
こんな魔界にある冒険者ギルドに対して、いったい誰が依頼を出しに来るのだろうか。
ここ、冒険者ギルドのある位置は丘の上で周囲にはなにもないように見えた。
であるなら、依頼人などいないのではないか?
だが、予想に反して依頼ボードには複数の依頼が張り出されていた。
こういった冒険者ギルドには依頼が行われるとこういったボードに依頼が貼られる形式だ。
ボードはランク分けされており、AからHまでのランクが分けて貼られている。
冒険者は自分のランクより1つ上のものまでを選択することが可能だ。
なお、冒険者ギルドのランクはHランクからSSRまであるが、S以上はすべて指名依頼となる。
昔の知識としてはこんなところだ。
ご多分に漏れずこの冒険者ギルドも方式は同じだった。
違いは、ほとんどHランクということだろうか。
「あぁ、ここらへんのギルドメンバーはみんなHが大好きらしくてな。みんなHランクから上になろうとしないんだわ」
エルフのお兄さんが声をかける。
モンスターの矜持だろうか。働きたくないでござるとか?
しかし、モンスターでもみんなHが好きなんだな。
俺も鑑定で「初級リジェネレーション・ポーション1H」とかでてきたときには興奮したものだ。
「ねぇねぇ。おじさまぁ。僕これなんか良いと思うのぉ」
ソフィアが指をさしてある依頼を取ろうとする。
『調査依頼:
最近この魔界に発生している瘴気がおかしい。
一体何が原因なのか調査して欲しい。
一番良い報告には1金貨を進呈。
依頼主:魔王エディプス・コンプレックス』
内容としてはこんな感じだった。
どうみてもHランクに相応し内容には見えない。内容が曖昧過ぎる。
かなり高ランク依頼だろう。
「お、お嬢ちゃん。それはお勧めだよ!」
「うん! そうでしょうぉ。
だって原因は私だものぉ!
今ぁ、うちの周りで僕の巫女さんの能力を使ってぇ、大地還元方式で直接魔力を自励させて瘴気を笑気に絶賛変換なんだぁ」
「おぉ。それはすごい! 一気に解決だねっ」
たったったらたらったらー。
などとまるでアメリカを横断するような口笛を吹くエルフのお兄さん。
それはソフィアを祝福する口笛だった。
というか、ソフィアさんやけに難しい言葉知っているな。転移魔術が使えるくらいだから魔術の知識くらいあるのか。
「そんなお嬢ちゃんには依頼達成の報酬に10金貨と、マスター権限でランクをHからCに一気にあげてあげよう」
「わーぃww」
草をはやして喜ぶソフィアに俺はツッコミを入れた。
「まてまてまてぃ! なんだそのマッチポンプは!」
「えー。ダメ、ですかぁ?」
それは、あからさまにソフィアをピンポイントにした狙い撃ちな依頼であった。
きっと背後にソフィアの父がいて、冒険者ギルドに来てこの依頼を出したのだろう。
それでCランクに昇進とはさすがに馬鹿にしすぎではないだろうか。
「なぁ、ソフィア。俺はキミに送る婚約指輪とかを調達しようと思って冒険者ギルドで地道にお金を稼ごうと思っているのだよ。こんな楽してお金を手に入れてもしょうがないじゃないか――」
「え? そうなの?」
ソフィアは顔を赤らめる。
その代わり渋い顔をしたのはエルフのお兄さんだ。
「あー。急に連絡がありこの依頼は取り消しになりました。ごめんな――」
エルフのお兄さんが手にするのは小さな紙きれだ。
どこからそんなものを取り出したのだろうか。
こうして調査依頼は簡単に取り消された。
あのお父さん、どこからか監視でもしているのか?
そうとしか思えないようなタイミングだった。
「じゃぁ、次のを見てみるか――」
気持ちを切り替えて俺は次の依頼をみてみることにした。
『採取依頼:
ニンゲン大好きぃぃぃ!
子供の七五三のお祝いに!
モンスターが7年も生きていたらすっかり大人だけどww
人肉20kg20万円~。以降グラム単位でお支払い。
なお、状態は確認します。
依頼主:トロール事業協同組合』
『採取依頼:
一つ人の世生き血を啜りたい!
大好きなあの子の気を引くために、新鮮な血液を募集します。
生娘なら最上!
10ccで500円~。
依頼主:吸血鬼特別有限会社』
(ダメだろこれ――!)
俺は絶叫せずにはいられなかった。
空はまだまだ晴天であった。