第5話 プロローグ 〜ドラゴンと王国〜
『
昔々、ある所に王様とお姫様が住んでいました。
王様の家族はお姫様ただ一人。
王様はお姫様の事を大切に思っていました。
さて、そんなある日。1匹の真っ黒なドラゴンが深い傷を負いお城の庭に落ちてきました。
これは大変だと、お城中が大騒ぎになります。
そして、王様にも知らせが届きます。
「王様。庭にドラゴンが落ちてきました。」
「なんだと。ドラゴンは暴れているのか。」
「いえ、深い傷を負っています。」
王様は少し悩みます。傷を治療してあげるべきではないだろうか。
しかし、傷が治った後暴れられては堪りません。
やはり、殺すべきだろう。
そう考えた王様は命令を下しました。
「2つの月が隠れる明日の深夜、ドラゴンの首を切り落とせ。」
王様の命令を聞いた兵達は準備を始めます。
しかし、王様の命令を聞いていたのは兵だけではありません。
お姫様も隠れて聞いていたのです。
お姫様はドラゴンの事を可愛そうに思い、兵が動き出す前にドラゴンに知らせようと庭に抜け出しました。
「黒いドラゴン様。明日の深夜までに逃げてください。さもないと殺されてしまいます。」
「なるほど、分かった。この礼はいずれしよう。」
ドラゴンはゆっくりと羽ばたくと空へと帰って行きました。
……おしまい。
』
「? お母さん。絵本の続きまだあるよ。」
「……これは、また別のお話なの。また今度にしましょう。」
「? わかった。おやすみなさい。お母さん。」
「おやすみ。アルフェ。」
続きは、……流石にまだアルフェには読ませられないわ。シエルも本当に“あの人”の事が嫌いなのね。