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第48話 王女様と大神殿

「……着いたみたいね。」


 私の目線の先を振り返りながら呟いたミィルさんにサクラさんは声を掛ける。


「ミィル様はここの神殿には行った事はあるんですか?」

「……無いわね。サクラはどうなのかしら?」

「魔の森に行く時の一度だけですね。」

「なるほどね。」


 ミィルさんとサクラさんの話を聞きながら窓の外を眺めていると視界が開ける。

 見ると金属ぽい塔の間に大きな神殿が見えて、その手前には祭壇とだだっ広い庭がある。

 ……庭と言っても細い水路があるだけで後は石畳で埋められているけど。


 ……!!

 一瞬、薄い布を突き抜けたみたいに感じる。


「結界?」


 するとエルの声が聞こえてくる。


「じゃな。しかし、悪い物では無いと思うぞ。」

「エル様の言う通りよ。……“呼び鈴”みたいなものよ。」


 呼び鈴?

 少し不思議に思ったけどシエルさんに頷いておく。


「うん。」


 窓の外に目を戻す。

 馬車はそのまま鉄塔の間を通って敷地に入ると静かに止まった。


 少しすると馬車の扉が開いてルーラさんの顔が入ってくる。

 ……あれ?


「……グランドマスター。着きました。」

「そう。……アルフェ様?」


 首を傾げていると立ち上がったミィルさんが私を見てくる。


「えっと、ルーラさんってなんで居るの?」

「あぁ、彼女は馬車の運転をしてくれたのよ。」


 あっ、そうなんだ。

 ルーラさんを見ると私を見て頷いている。


 ……お礼、言わないと。


「ありがとう。ルーラさん。」

「はい。」


 にっこりとしたルーラさんから目を離して立ち上がるとエルに手を伸ばす。


「……エル。手繋いで降りよ?」

「うむ。」


 エルと手をつなぐとシエラちゃんに目を向けたけど、シエラちゃんはシエルさんと手を繋いでいた。

 私は目を離すとミィルさんの後に続いて馬車の入り口に向かう。


「手伝いましょうか?」


 ルーラさんに言われて目線を下げる。……大丈夫かな?

 私は首を横に振る。


「平気。……エル、降りよ?」

「うむ。……アルフェ。足元は気をつけるのじゃ。」

「分かってる。」


 私とエルは石畳の地面に降り立つと周りを見渡す。


 ……本当、何も無いね。

 隣を見るとエルが水路を目で追っている。


「エル、何してるの?」

「……アルフェ。これは恐らく“術”の一種じゃな。」

「ご名答です。“いと高き翼”よ。」


 ……えっ。

 突然、謎の声が割り込んで来る。声がする方に顔を向けると灰色の服を着て、顔をベールで隠した人が神殿を背に立っていた。


「……誰?」

「ふふ。“白銀の姫君”よ。“名も無き巫女”で御座います。」


 ……どうしよう。

 右手を顔の前に持って微笑んでいる“らしい”巫女さんを見ながら困っていると後ろから声が聞こえてくる。


「姫様を揶揄わないで頂戴。」

「これはこれはフィルシア大公シエル殿下に……シエラ様。」


 フィルシア大公?

 振り向くとシエルさんはシエラちゃんの手を引っ張って私達の隣までやって来る。


 するとシエルさんは巫女さんを睨み付けながら口を開く。


「姫様。ここの巫女は全員、名前を持たないから“名無し”とでも呼ぶと良いわ。」

「白銀の姫君よ。お好きな様に。」


 巫女さんはシエルさんに合わせて頷いている。


 ……大公とか殿下とか気になるけど後にしよ。

 私は頷き返すと巫女さんに目を向ける。


「えっと。巫女さん、術の一種って何?」

「白銀の姫君よ。端的に言えば“神域”を成す為の“魔法陣”で御座います。害意を跳ね除け“尊き方”の来訪を告げる結界を成します。」


 へー。ここに来た時に感じた物だよね? シエルさんの言う通り呼び鈴だったんだ。

 ふむふむと頷いていると巫女さんが私達を見渡しながら口を開く。


「さて、ルーラ様にサクラ様もこちらへ。……“黄金の翼”よ。“黄昏の儀式”の見学と聞き及んでおります。」

「……ええ。」


 少し離れた所に立っていたミィルさんが巫女さんに顔を向けられるとちょっと狼狽えながら答える。


 すると巫女さんは両手を前に揃えると私達に深く頭を下げる。


「では皆様、祭壇へと足をお運びください。私は準備が御座いますので失礼致します。」


 次の瞬間、巫女さんの姿がかき消えると石畳がかちかちと組み変わって祭壇への道が現れる。

 ……すごい。


「……あの方は苦手です。」


 隣を見るとシエラちゃんがふぅっと息を吐いている。

 ……何となくシエルさんに棘があったからね。

 私はさりげなくシエラちゃんの手を握る。


「……アーちゃん。」

「シエラちゃん。行こ?」

「はい。」

「エルも良い?」

「うむ。」


 私はエルとシエラちゃんと手を繋いで石畳の道を歩いて行く。私達が先頭でシエルさん達が後から付いて来る。ちなみにみんな無言。


 祭壇の手前まで進むとすーと巫女さんが現れる。


「皆さま。ここでお待ちください。」


 さっきとは別の人かな?

 声色が違うけど見た目では違いがわからない巫女さんが手のひらを私達に向ける。


「分かったわ。」

「有難うございます。では失礼します。」


 シエルさんの声が聞こえると巫女さんは頭を下げる。すると、さっきと同じ様に姿が煙を散らす様に消え去る。

 じっとその様子を見ていると隣から声が聞こえてくる。


「……ここの巫女は今のアルフェよりも“上手い”のう。」

「……。」

「くっくっく。アルフェも早う転移陣を使える……! 何するんじゃ!!」

「うるさい。エル。」


 エルの方を向くとにたにた笑っていたのでフードを掛けてエルの顔を隠す。


 ……なんか言ってるけど知らないもん。

 そっぽを向いていると周りがいきなり暗くなる。


「始まったわね。」


 ミィルさんの声を聞いて目を戻すと祭壇の周りに……9人かな? 巫女さん達は“何か”を乗せたお盆を目線の高さに掲げて神殿を背に半円を描きながら立っている。

 巫女さん達は左端から順に祭壇に向かって何かの作業をした後、元の位置に戻って地面に伏せる。

 そして、祭壇からは何かが垂れて徐々に濃い“血の匂い”が漂ってくる。


 ……魔女教って邪教か何かなのかな?

 そんな事を思っていると空から、沢山の鳥の声が聞こえてくる。

 目を向けると黒い大きな鷲さんが沢山の鳥さんを引き連れてやって来る。鷲さん達が祭壇の上に降り立つとぐちゃぐちゃと何かを食べる音がして祭壇が更に何かで濡れていく。

 ……何かって言うか多分血だよね。暗くてよく分からないけど。


 ?

 誰かがぎゅっと手を握りしめてくる。

 隣を見るとシエラちゃんが顔を歪めながら目を背けている。

 ……シエラちゃん。

 私はそっとシエラちゃんを抱きしめる。


「アーちゃん。」

「しばらくこのままでいいよ。」

「……はい。」


 シエラを抱きしめながら目を戻すと黒い大きな鷲さんがじっと私の方を見ている。


 ……

 私はすぐに目を逸らす。


 ……

 まだ見ている。


 …………

 ……えっ!

 何度か目を逸らしていると鷲さんが丁度“首を傾げた”のが目に入る。

 ……もしかして、ベルさん?

 今度は私が鷲さんをじっと見ていると鷲さんはさっと目を逸らして嘴で羽の手入れを始める。


「ベルね。」

「ベルじゃな。」


 シエルさんとエルの声を聞いた鷲さんはびくっとするとぴぎゃーと一泣きして祭壇を飛び立つ。

 ……ベルさんだったんだね。何してるんだろう? 帰ったら聞かないと。


 飛び立って行った鳥さん達から祭壇に目を戻すと巫女さん達がいつのまにか立ち上がっていて松明を持って掲げている。

 巫女さん達はゆっくりと歩いて順に祭壇の周りの燈籠に火を灯していく。

 全部に灯し終えた巫女さん達は元の位置に戻ると一瞬で姿が搔き消える。

 そして、次の瞬間、神殿の敷地の境界線に一気に光が灯り庭にも広がる。

 最後に神殿もほんのりと灯りで照らされて、薄暗くなっていた周りが夕日色に染まり直る。


「すごいですね。」

「うん。」


 いつのまにか顔を上げていたシエルちゃんに頷くと私は後ろに振り返る。


 ちょうど、街の城壁に沈みつつある太陽が目に入った。


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