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第43話 王女様と建物の中の商店 Ⅲ

「……これは何に使うのでしょうか?」


 もう一度、横に振り向くとシエラちゃんがさっきの謎の球を手のひらに乗せながら首を傾げている。


「……わしも分からん。」


 エルも難しそうな顔をしながらシエラちゃんの手のひらにある謎の球をつんつんと突いている。


 魔導具って動いてない時はほとんど魔力を感じないから使い方が分かりにくいんだよね。それに変に魔力を注ぐと壊れる事がある。

 ……お母さんが持ってた魔導具を壊しちゃって、すごく叱られた事があったなぁ。あの時のお母さんはすごく怖かった。


 私は2人から目を離して、後ろに立っているシエルさんとサクラさんを見る。


「……あれって何なの?」

「…………何かしらね? サクラ。分かるかしら?」

「……携帯用のライトですね。同じ物を持ってるので…………はい。皆さん見ていて下さい。」


 サクラさんはシエラちゃんから目を離すと服のポケットから白っぽい金属の球を取り出す。

 あっ! 浮いてる!

 球はほのかに光りながらサクラさんの周りを浮かんでいる。


「光りながら浮いています!」

「……ふむ。例の魔石燃料とやらを使っておるのか。」


 隣を見るとシエラちゃんとエルは目をキラキラさせている。


 ……うーん。でも、こう言うのって普通に魔法を使った方が良い気がする。図書館にあった魔導書の“光の球”みたいな魔法や暗い所を見たいだけなら“夜目の魔法”もある。


 微妙に思いながら眺めているとサクラさんは私を見て微笑む。


「……アルフェお嬢様。こう言う事も出来るんですよ。」


 サクラさんが宙に浮いている球に触れると一気に光が一点に集まって天井を照らす。

 ……へー。確かに、これは便利かも。


 ふむふむと頷いていると横からエルの声が聞こえてくる。


「……サクラ。ならば、これは何じゃ?」


 棚に並んでいる木で出来た謎……じゃ無いね。水筒だと思う。

 エルは木の筒を突きながらサクラさんに振り向く。


「……エル様。それは“水筒”よ。水の魔力を注げば綺麗な水が手に入るわ。……確か、木の種類によって“味”を付ける事も出来たわね。」

「はい。りんごの木が定番ですが、ぶどうや……カエデなんて言う物も用意があります。度数は低いのですかお酒も生成出来るので、色々と便利が良いですよ。」


 ミィルさんと店員のお姉さんの声が聞こえたので振り返るといつのまにか2人がシエルさんとサクラさんの隣にやってきている。

 ……ただの水筒じゃないんだ。

 頷いているとシエルさんはミィルさんに顔を向ける。


「話は終わったのかしら?」

「ええ。荷物は後で纏めて文官棟に送ってくれるそうだから後でアルフェ様の分も分けておくわ。……アルフェ様。何か欲しいものはあったかしら?」


 ミィルさんが私を見てくる。


 ……うーん。気になるけど、さっきのカードや魔石、魔法薬と違ってかさばりそうなんだよね。全種類とか絶対に持って帰れない。

 それに、魔法で大体の事は出来るしね。


 私は首を横に振るとミィルさんに顔を向ける。


「……平気だよ。」

「そう。分かったわ。エル様は…………。」


 私に頷いたミィルさんの視線先を追うと食い入るように水筒を眺めているエルが目に入る。

 …………欲しいのかな?


 私はエルに顔を近付ける。


「エル。それ欲しいの?」

「うむ。」


 エルはコクリと頷くと水筒を一本取り出して胸にぎゅっと抱き締めながら私を見る。

 ……うん。分かった。


 私はエルに頷くとミィルさんと目を合わせる。


「ミィルさん。それじゃあ、水筒“だけ”貰って良い?」

「……分かったわ。シエラはどうかしら?」


 ミィルさんは苦笑いしながら私とエルの隣を見る。

 シエラちゃんはさっきの光る球を両手に乗せてミィルさん差し出す。


「はい! ミィル様。 この光る球が欲しいです。」

「そう。なら、これは私からの“プレゼント”にしておくわ。……シエルも良いわよね?」


 ミィルさんは光る球を取り上げると一瞬だけ店員のお姉さんに顔を向けてからシエルさんに声を掛ける。

 シエルさんはふーっとため息を吐くとミィルさんに顔を向ける。


「…………好きになさい。」

「お母様! ありがとうございます!」


 シエラちゃんはシエルさんに飛び付くとぎゅっとローブの裾を抱き締める。


「……さてとメイ。エル様が持ってる物も私の“プレゼント”よ。」

「かしこまりました。……以上でよろしいですか?」


 店員のお姉さんは棚に目を走らせながら手帳に何かを書き込んでいる。

 ……さっきは使って無かったけど全種類とかじゃないからかな?


 少し観察しているとミィルさんが店員のお姉さんに軽く頷いているのが目に入る。


「ええ。……シエラ。はい。」

「……ありがとうございます。ミィル様。」

「いいえ。」


 ローブの裾から顔を上げたシエラちゃんは、ミィルさんが屈みながら差し出した光る球を受け取ると笑顔になりながら両手で包み込む。


 その様子を眺めていたシエルさんは顔を上げて店員のお姉さんに顔を向ける。


「後は、“使い魔”だったかしら?」

「はい。では、案内しますね。」


 店員のお姉さんはくるっと裏口の方を向いて歩き始める。

 シエラちゃんはそのままシエルさんと手を繋いでミィルさんの後を付いて行く。


 ……“使い魔”ってどんな子がいるのかな?

 私は横を見ると水筒を抱きしめたまま棚を見ているエルに手を差し出す。


「はい。エル。」

「……うむ。ほれ。」


 私は水筒を持ち替えて握ってきたエルの手を取ると少し引っ張りながら歩き始める。

 ……エルの歩く速さが少し遅い。


 少し振り向くとエルが嬉しそうに水筒を眺めているのが目に入る。


「エル。そんなにその水筒欲しかったの?」


 エルは少しびくっとすると水筒を持っている手を下げながら私の方を向く。


「! 何でもないぞ? 単に珍しかっただけじゃ。」

「……そうなんだ。」


 エルってドラゴンさんだから珍しいのは分かるけど……。

 まぁ良いかな。エルが嬉しそうにしていると私も嬉しい。


 ……

 お店の中を横切って裏口の前まで着くと、店員のお姉さんがさっと扉を開けて待ってくれる。


「皆さんどうぞ。」


 店員のお姉さんの横を通って扉を出ると塀で囲まれた広場に出る。

 ……犬さんかな? 少し魔物化しているかも。どちらかと言えば動物さんに近いけど。


 中央では柵に囲まれた広いスペースでつなぎっぽい服を着た女の子が何かの訓練しているのが見える。

 でも、何の訓練何だろう?

 白い大きな犬さんと追いかけっこをしていた女の子は私達に気付くと犬さんに待てをしてこっちに近付いてくる。


「メイ姉さん。もしかして、お客さん……あれ? もしかしてサクラお姉様?」


 女の子は私達の後ろに居るサクラさんに目を止めると声を掛ける。


「はい。そうだよ。……久しぶりだね。ティアちゃん。」

「こちらこそお久しぶりです。……今日は何のご用ですか?」


 女の子は帽子を取りながら私達に軽く頭を下げる。


 ……サクラさん。この女の子とも知り合いだったんだね。

 店員のお姉さんは一歩前に出ると女の子に声を掛ける。


「ティア。使い魔の案内よ。」

「分かった。……ちょっと待ってもらって良いですか?」

「構わないわ。」

「ありがとうございます。すぐに終わらせますね。」


 ミィルさんに許可を貰った女の子は駆け寄ると白い犬さんを連れて奥に並んでいる小屋に消えて行く。


「……お母様。少し怖かったです。」

「ただの犬よ。怖がる必要無いわ。」

「…………でも、すごく大きかったです。」


 声がする方を見るとシエラちゃんがシエルさんに抱きついている。


 ……シエラちゃんってエルの時もそうだったけど結構怖がりだと思う。

 このあと大丈夫かな? 小屋の大きさからするとそんなに大きい子は居ないと思うけど。


 ふと、隣を見るとエルは顔を緩めながら水筒を見ている。

 ……エルは使い魔に興味ないみたい。

 エルから目を離してもう一度、小屋の方に目を向ける。


 どんな子が居るんだろう?

 私は少しだけ目を細めたんだ。


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