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第19話 王女様とドラゴンの館 Ⅱ

 それから少しして、扉を叩く音が聞こえる。


「アルフェお嬢様。エルお嬢様。奥様とミィル様が来られました。」

「……はい。アンジェさん。」

「わかったのじゃ。」


 私とエルはこくりと頷く。


「では、談話室に案内いたします。」


 アンジェさんは私達を連れて寝室を出る。

 ちなみに、サリカさんは仮眠を取っている。

 夜も2人交代で扉の前で待機してくれるらしい。

 ……?

 なんか、リフィアさんが壁際で待機している。

 私が何だろうとじっと見ていると、アンジェさんはリフィアさんの向かいにある扉をノックする。


「アンジェでございます。お嬢様方をお連れしました。」

「……入りなさい。」


 そうシエルさんの声が聞こえると、アンジェさんは取っ手に手を掛ける。


「失礼します。……アルフェお嬢様。エルお嬢様。どうぞ。」

「はい。ありがとう。」

「うむ。」


 私とエルが部屋に入るとシエルさんとミィルさんはテーブルに座っている。

 私とエルはアンジェさんに助けられて椅子に着く。

 テーブルの上にはお酒と軽食……カナッペみたいな一口サイズの料理が並んでいる。

 ……シエルさんとミィルさん、今日もお酒飲む気なんだ。

 ジュースやお茶も有るけど、多分私とエル用。

 エルは小さく飾られた料理に目が奪われているけど。

 私もついつい目で追ってしまう。


「アンジェ。ありがとう。下がりなさい。」

「はい。奥様。……アルフェお嬢様。エルお嬢様。部屋の外で待機しているので何かありましたらお声かけ下さい。」


 そう言う声が聞こえてきたので扉の方を見るとアンジェさんが部屋から出て行く所が目に映る。

 扉が完全に閉まるとミィルさんは息を吐く。


「ふーう。シエル。この部屋って防音大丈夫よね?」

「平気よ。……姫様。」


 ミィルさんの質問に短く答えたシエルさんが申し訳なさそうに私を見る。


「ごめんなさい。あまり気が休まらないのよね?」


 私はシエルさんに聞かれて悩んでしまう。

 ……答えは“はい”なんだけど、言ってはいけない気がする。

 でも、私の気持ちはバレてると思う。

 そんな風に考え込んでしまって黙っているとエルの声が聞こえてくる。


「シエルもアルフェの性格を考えるべきじゃったな。わしは平気じゃがのう。……所でこれは食べて良いのか?」

「……ええ。」


 シエルさんはエルに頷くとしゅんとしてテーブルの上に視線を落とす。

 ミィルさんはそんなシエルさんを見ながらお酒を開ける。


「私も平気ね。たまにならだけど。……アルフェ様もシエルの事責めないであげて。シエルは“姫様に最高の環境を”って思ってただけだから。それに、シエラに引き合わせるのも他の所だと厳しいわよ。」


 あー、そっか。シエルさんはシエラちゃんに会わせたかったんだよね。

 それにミィルさんの言う通り私が“贅沢”なんだよね。分かっている。

 私は息を吐くと気持ちを切り替える。

 せっかく“私達”だけで話せるんだから、“色々”聞かないとね。


「……ねぇ。ミィルさん。」

「何かしら?」

「馬車の中での話って信じてないんだよね?」

「……アルフェ様には悪けど8割方は信じてないわ。でも、暴動自体はオーベリィの何処かでは起きる可能性は高いと思うわよ?」


 ミィルさんはそう言って、グラスを傾ける。

 私はミィルさんから目を離して、今度はシエルさんを見る。


「……シエルさん。私って“王女様”?」


 シエルさんはゆっくりと顔をあげると私と目線を合わす。


「……フィル様に聞いてたの?」


 私は首を振って答える。


「違うよ。それも“見た”の。」

「そう。……そうよ。この国の王が姫様の父親ね。」


 ……そっか。

 私は少し目線を下げて“王家”について聞いてみる。


「……それじゃあ。私のお父さんの弟さんって3人王子が居るのかな?」


 私の言葉にミィルさんは言葉を挟む。


「3人? 私の知る限り2人の筈よ。」

「……いいえ。3人よ。……姫様。それぞれについて詳しく話せるかしら?」


 顔を上げると困惑したミィルさんと真剣な顔をしたシエルさんが目に入る。


「うん。シエルさん。……1人目はお妃さまの息子さんだけど、お妃さまが伯爵家出身。2人目はお妾さんの息子だけどそのお妾さんが侯爵家の直系長子だからこっちの方が王様に近い……だったかな?」


 私がそこまで言うとミィルさんが顔をさっと上げる。


「ええ、私が知ってるのはその2人よ。」

「ミィル。姫様がまだ話してるのよ。」

「ごめんなさい。……アルフェ様。続けて頂戴。」


 私は椅子に座りなおして話を続ける。


「……はい。3人目もお妾さんの息子さんだけど、お妾さんの位が低くて……確か男爵家の三女。 王位継承権も持ってなかったはず。そして、そのお妾さんには王女様もいるの。」


 私は息を吐く。

 第一王女メルフェ。

 彼女も悲惨な運命が待っている“悪役令嬢”なんだよね。しかも、例のゲームの中の私は彼女に対してかなり冷たい。

 ゲームの中では色々取り返しのつかない所まで行っているからしょうがない部分はあるけど……。

 でも彼女への“虐待”が始まるのはまだ先なので色々考えるのは後回し。

 シエルさんとミィルさんの方を見ると2人して目を閉じて考え事をしている。

 エルの方を見ると一人で黙々とカナッペを口に放り込んでいる。


「……エル。私の分も残してよ。」

「分かっておる。…………そうじゃ。アルフェ。もう少し知らないはずの話を教えてやるのじゃ。」


 エルに言われてはっとする。確かに未来の話をしても今すぐには判断できないけど、そこから知った事で“今”も確認できる事を話してみれば、私も例の記憶がどれくらい“近い”かどうか分かるしミィルさんにも信じてもらえるかも!

 私は記憶を漁って何か無いか探し出す。


「…………マーシェリーの専属のメイドさんが居て。名前は“エマ”だったかな?」


 その瞬間ミィルさんが目を開けて飛び上がる。


「!!!!! アルフェ様! その子の事どれぐらい分かるかしら?」


 ……どうだろう? 確かマーシェリーの“回想”ってお話で名前が出てくるけど、全編通して数回程度なんだよね。エマさん自身の事はあまり分からない。


「……週末には必ず休むことぐらいかな。」


 私は少しシュンとなるけど、ミィルさんは目を見開く。


「……そう。でも充分よ。貴女の星読み、信じることにするわ。」


 ミィルさんはそう言って一気にグラスを傾ける。

 でも、どうしてだろう?

 私が首を傾げているとミィルさんは中身の無くなったグラスをテーブルに置く。


「ふぅ……そのエマって私の孫なのよ。それにアルフェ様が“嘘”を吐くとは思ってないわ。私が気にしてたのはその星読み自体の信頼性ね。あれってかなり精度がバラバラなのよ。…………アルフェ様には“聖女”の素養があるかも知れないわね。」


 ……聖女さま。

 もう一人の“ヒロイン”が目指す事になるのが聖女さまなんだよね。ミィルさんの言う通り星読みの力の強さが基準だったはず。

 例のゲームだと私と違って“周回”毎にストーリーが独立している。

 “彼女”って居るのかな?

 私がもう一人のヒロインについて考えているとエルの声が聞こえてくる。


「アルフェは“聖域”には渡さんぞ。」

「そうね。私もエル様に賛成よ。」


 エルに続けてシエルさんも頷く。

 ……心配しないでも聖女なんかにならないよ。

 …………?

 何かすごい事を忘れている気がする。

 私が頭をひねっているとエルにお皿を差し出される。


「ほれ。アルフェ。一応、“全種類”よけとるから好きなのを取れ。」


 私はサッとお祈りを捧げて、生ハムっぽいのが乗った物を口に入れる。

 うん。美味しい。

 何個か摘んでいると横でエルがミィルさんに声を掛ける。


「しかしミィル。お主。孫がおったんじゃな。」


 ……

 …………!

 そうだ! ミィルさん。エマさんがお孫さんだって言ってたよ!

 私が目を丸くしているとシエルさんが口を開く。


「……確か“前回”の時の孫かしら?」

「シエル。」

「……心配しないで。」

「そう。」


 ? シエルさんとミィルさんが謎の会話をしている。

 私は二人から目を話してエルに話しかける。


「ねぇ。明日どうする?」

「そうじゃな。……やはり街を探検したいのう。」


 どうしようかな。私は先に調べ物とかしたいんだよね。

 ……まぁ、良いかな? 街を探検しながら調べ物は出来るし。


「うん。でも先にミィルさんのギルド行って良い?」

「構わぬ。」


 そんな話をしていると扉を叩く音が聞こえる。


「サクラです。入って大丈夫ですか?」

「……もう来たのね。……『入りなさい。』」


 シエルさんがそう言うと扉が開いてサクラさんが入ってくる。手には盆を乗せてチョコレートの匂いをさせている。


「サクラさん!」


 私はテーブルを降りるとサクラさんに駆け寄る。

 あの襲撃の時以来だもんね。窓からは後ろが見えなかったけど、後ろをついて来ていた沢山の気配が街に入る前に離れて行ったから多分その中にサクラさんは居たんだと思う。


「はい。アルフェお嬢様。美味しいカカオの薬湯ですよ。」


 そう言って、サクラさんにグラスを手渡される。


「ありがとう! サクラさん!」


 私はチョコレートドリンクを抱えてテーブルに戻る。

 私に追い付いたサクラさんはエルの前にも私と同じグラスを置く。


「サクラ。空いてる席に座りなさい。」

「はい。シエル様。」


 サクラさんは席に着くとチビチビとグラスに口を付けている私を見る。


「アルフェお嬢様。」

「?」

「“チョコレートドリンク”ってお嬢様が考えた言葉ですか?」


 !!!!

 どうしよう!

 “未来”の事はエルとシエルさんとミィルさんに言っているけど他の記憶の事はまだ誰にも言ってない。

 私が内心焦っているとシエルさんの声が聞こえてくる。


「……多分、“本”で見たんじゃないかしら? ……ベルもそれで不思議なオムレツを作ってもらったって言ってたわね。」


 そう言って、シエルさんがちらっとこちらを見る。

 私はそれに大きく頷く。

 ……助かったよ。

 それを聞いてサクラさんも軽く頷く。


「……わかりました。」


 みんな静かになった所でミィルさんが私とエルの方を向く。


「……アルフェ様。エル様。明日、ギルドに来るのかしら?」

「うん。」

「アルフェが行くのなら、わしもついて行くぞ。」


 私とエルが答えると、ミィルさんも頷く。


「分かったわ。昼過ぎまでには準備しておくわ。……シエル?」

「何かしら?」

「貴女の娘はどうするの?」

「そうね。……姫様?エル様?」


 シエルさんは私とエルを交互に見る。


「はい。」

「なんじゃ。」

「シエラも一緒に居ても良いかしら?」

「! うん!」


 やった! シエラちゃんとおしゃべり出来るよ!

 私は嬉しくなって足をパタパタさせる。


「わしはアルフェが良いなら構わんぞ。」

「なら、何処を周るか考えないといけないわね。…………サクラ。貴女も薬師として私達に同行して貰うわ。」

「はい。シエル様。」

「なるほどね。シエル。同行者は他に居るかしら?」

「サクラ以外の供は付けないわよ。」

「……貴女達5人の準備をしておけば良いわね。私は日の出と共に総局に向かうから話を通しておいて頂戴。」

「分かったわ。」


 私はぼんやりと会話を聞きながらチョコレートドリンクをちびちびと飲む。

 ……結構眠くなって来た。


 そして、私はいつのまにかテーブルに突っ伏して寝ちゃっていた。


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