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第12話 王女様とギルドの二人 Ⅱ

「ふふ。肉よ肉!」


 ミーさんはテーブルに並んだステーキを見てヨダレをこぼしている。


 みんなで朝食を作った結果、テーブルの上がほぼ茶色と黄色の二色になっちゃった。

 ミーさんはお肉しか焼いてないし、シーさんも新鮮な野菜が余り残ってなくてサラダとか野菜たっぷりのスープが作れなかった。

 私はエルに付きっきりで見ていたのといつもと違う材料ばっかりだったので塩と胡椒で味付けした根菜だけのすごくシンプルなスープとオムレツだけ。

 ついでにエルの失敗作のオムレツも並んでいる。


 料理自体は、そこそこ量があるので二つのテーブルに分けて置いている。

 私とエルは一緒のテーブルに座る。

 そして、シーさん、ミーさん、アンお姉さんの3人は私とエルと違うテーブルの椅子を引く。

 エルは椅子に座るとずっと持ち歩いていた、最後に成功したオムレツをスプーンで突いて早く食べたそうにしている。

 ……はぁ。

 みんなが座ったのを確認するとミーさんとアンお姉さんにお祈りについて聞いてみる。


「えっと、今からお祈りをするけど祈りたい神様はいる?」

「私は無いわ。アンはどう?」

「……グランドマスターは竜王様には祈られないのですか?」

「今日は良いのよ。たまには竜王様もお休みされたいでしょうから。」

「そうですか。では、私は精霊王様を。」

「うん。分かった。シーさんもエルもそれで良い?」


 私はミーさんとアンお姉さんに聞いたのでシーさんとエルにも確認する。


「ええ。姫様。」

「……うーん。“あやつ”に祈りなどしとうないが仕方がないのう。」

「エル様。精霊王様がお嫌いですか? ならば、今回は私も女神様のみで結構ですよ?」

「? そうじゃのう。そちらの方が有り難いのじゃ。」


 エルは精霊王様が嫌いなんだね。

 覚えておかないと。

 私はもう一度みんなに確認してから女神様へ祈りを捧げる。

 きっちりと光が食事に降り注がれたのを確認するとみんなで食べ始める。

 ……ふぅ。

 私は失敗して半熟じゃなくなったエルのオムレツを食べながら、ステーキを頬張っているミーさんに聞いてみる。


「……ミーさん。この村の事を教えて。」

「…………そうね。」


 ミーさんはフォークとナイフを置くと口を拭う。


「まず、この村自体は“普通”の人間は住んでないわね。魔の森で活動する各種ギルド員の物資補給拠点ね。ここよりも深い所にも拠点があるけど、馬車が通っている場所では一番森に近い所にあるわ。」

「普通じゃないならどんな人が住んでるの?」

「……それは私が説明した方が良いでしょう。」


 私が質問すると私が作ったオムレツを食べていたアンお姉さんが私とエルの方を向く。


「アンお姉さん。それ美味しい? 私が作ったんだよ。」

「はい。中々手慣れておりましたね。……お嬢様は料理をお作りになる際、魔法を使われるのですか?」

「うん。何時も使ってるよ。」


 私は頷く。

 すると、アンお姉さんもゆっくりと頷く。


「なるほど。……村に住んでいる者たちの事でしたね。まず、私達武力ギルド白銀竜です。この村を開いたのが私達なので一番多いです。この支部庁舎と受付所に居る人員ですね。そして、駐留している辺境伯領軍。これで、常駐人員の過半に当たります。後は、他のギルドの人員や森で活動する人々向けの商売をしている人達です。」


 ?

 確かに本とか“記憶”にあるような普通の村とは違うと思うけど、住んでいる人のどこが普通じゃないんだろう?

 私は首を傾げる。


「……後、何が普通でないかでしたね。この村は非常時には水際で魔物を食い止める役目があるので常駐人員は少なくとも飛竜程度なら単騎で落とせる力がある事が条件です。」


 …………へぇー。

 正直、魔物さん達を殺せるかどうかで力を表して欲しくない。

 ただ、今の私よりは多分強いと思う。

 ちなみに飛竜さんはドラゴンさんと言えばドラゴンさんだけど、エルのドラゴンさん姿と同じ位ちっちゃかったはず。

 それでも、ドラゴンさんだからそう滅多に会う事はない。そして、そこそこ強い。

 私は微妙な気持ちを誤魔化しながらスープに口をつける。


「アン。姫様にそう言う例えは良くないわ。」

「……シエル様。そのようです。……お嬢様。失礼しました。」


 アンお姉さんに謝られるけど首を横に振る。

 ……人だとそう言う例えは普通だよね。

 そう言えばアンお姉さんも常駐って言っていた気がする。

 私は気を取り直して聞いてみる。


「……アンお姉さんも強いの?」

「そうよ。アンはこの支局では5本の指に入ると思うわ。……そうね。確か、……東の方にある“星の平原”の単独横断を成功させたのよね。」


 !

 何故か、ミーさんが答えてくれたけど。すごく驚く。

 星の平原って文字通り“星の欠片”が拾える場所なんだけど、聖域だからかなり強力な聖獣さんたちに守護されている。

 よほど強いか穢れなき存在じゃないとすぐに死んじゃう。


「……なるほど、お主。精霊術師じゃな。」


 突然、横からエルの声が聞こえてくる。

 横を見るとエルはいつのまにかお皿にステーキの塊を乗せて頬張っている。

 ……

 私はそれを無視してアンお姉さんに向き直る。


「精霊術師?」

「そうです。私は精霊として聖獣様を呼び出せるので星の平原の横断自体はそこまで難しくありませんでした。」


 へぇー。でも聖獣さんを呼び出せるなら絶対に強いよね。

 私は頷きながらエルのステーキを少し分けてもらう事にする。


「エル。少しもらって良い?」

「かまわん。……どんな人間がおるかは分かったのじゃ。しかし、村には何があるのかイマイチ分からないのう。」


 エルは私に軽く頷くとミーさんの方を振り向く。

 ……エル。ちゃんと話は聞いていたんだ。

 感心しつつ私もミーさん達の方を見る。


「そうね。……アン。」

「はい。やはり、そう大きくない村ですし直接案内した方がよろしいかと。」

「それじゃあ。ミィル。案内は貴女にお願いするわ。」


 もう既に食後のコーヒーに口を付けているシーさんがミーさんの方を見る。


「……何故。私なのかしら?」

「アンに案内させてみなさい。更に面倒な事になるわ。」

「なら、貴女がすればいいじゃない。」

「私は“用事”があるのよ。」

「……そう。分かったわ。」


 いきなり喧嘩を始めたシーさんとミーさんに私とエルはぽかーんとするけど、最後にテーブルに突っ伏したミーさんが可哀想になって声をかける。


「……ミーさん。嫌なら案内しなくていいよ。」

「別に嫌ってわけじゃないのよ。…………はぁ。食事を終えたら案内するわ。」


 ミーさんは顔を上げる。

 そして、少し顔を赤くして髪を整えながら案内の約束をしてくれた。


 朝ご飯を食べ終わると私は昨日寝た部屋に戻る。出かけるなら必要な物を取ってこないと。

 部屋に戻るとローブや懐中時計、杖なんかを回収して一階の受付まで戻る。

 受付の後ろから出てきてエルが座っているテーブルまで行くとミーさんに声を掛けられる。


「……さてと、お姫様とエル様。行くわよ。……後片付けは、シエルとアンでして頂戴。」

「分かっているわ。……姫様。エル様。そろそろ、野菜が届くと思うからお昼は“今回”の様な事にはならないと思うわ。」

「! やった。シーさん。楽しみにしてるね。」

「……ふむ。今日の朝がそれ程酷いとは思わないがのう。」


 エルが少し不思議そうな顔をする。

 ……でも、サラダ位は欲しかったよ。

 エルの言葉にアンお姉さんが答える。


「材料は一級品でしたので。……しかし朝からあんな量の肉は見たくありませんでした。」

「でも、全部食べたわよ?」

「グランドマスター。貴女の体のどこにあの量の肉が入るのか不思議です。」

「知らないわよ。……今度こそ行くわ。」


 ミーさんはそう言うと私達が昨日入ってきた扉を開ける。

 朝日が差し込み光が溢れる中、私とエルは手を繋ぐ。


「エル。行こっか。」

「じゃな。」


 この時の私は気づかなかったけど、エルの手を跡が残るぐらい握りしめてしまったんだ。


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