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プロローグ
「嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つきっ!」
嗚咽交じりの怒号が周囲に響き渡る。
彼女は驚いた様な表情を浮かべたがそれも一瞬の事で、すぐにその眼には憐れむような、侮蔑するような色が浮かんだ。
いや、少なくとも私には“そう”思えたのだった。
「どこにも行かないって約束したくせにっ!」
「嘘つきっ! 裏切り者っ!」
矢継ぎ早に貧弱な語彙から絞り出した目一杯の罵声を浴びせるが、当然そんなものに彼女を思い留まらせる力などありはしなかった。
背後からは、いい加減にしろと叱責する声が聞こえた。
だが、私からすれば何故こうも彼女達が平静を装っていられるのか、それが理解出来なかった。
彼女達の眼には、さぞ半狂乱で喚き散らす醜い姿が映っているのだろうが、今更そんな事はどうでもいい。
ただ一つ、彼女をこの場所に繋ぎ止められるという結果さえ得られれば。
そう、私が望んだのはただそれだけ。
本当にたったそれだけだったのだ――
初投稿です。
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