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第5話 キツネとの出会い

やわらかな太陽の日差しは暖かく、風はやさしくそよぎます。そして、なんと言っても今日は待ちに待った休日です。七海とルビーはアパートの裏にある空き地で散歩を楽しんでいました。じゅうたんのようにやわらかな新緑の草の上を歩いていると、何かを見つけたようにルビーが急に走り出しました。「ルビー、待って!」ルビーはいつもなら振り向いて待っていてくれるのですが、七海の声が聞こえないかのように走っていきます。七海はルビーのあとを必死で追いかけます。気がつくと来たことのない真っ暗な道に迷い込んでしまいました。不安な気持ちで歩いていると、どこからか七海のわからない言葉で話している声があちらこちらから、ざわざわと聞こえてきました。

すると突然「ここはあなたの知らない言葉の世界です。私が教えてあげましょう」と話しかけられました。暗闇の中に、ぼんやりと顔が見えますが、見たこともない全く知らない人です。七海は驚いてしまいました。言葉がわからない世界、そんな世界はひどく怖いものです。


真っ暗な道から早く抜け出したいと必死で歩いていると、遠くの方に草原でゆったり寝ている金色に輝くキツネが見えました。七海はキツネのいる所に向かって一気に駆け出しました。先ほど見えたキツネがいた場所まで確かに来たはずですが、キツネはいません。足下を見ると地面に穴があいています。七海は思い切ってその穴に飛び込みました。滑り台のようにスルスルと滑り降りていきました。まるで子供の頃に読んだ〔不思議の国のアリス〕のお話しが現実になったようです。


あっという間に穴の底へ。そこにいたのは、金色の毛並みをして王冠をつけているキツネでした。

「こんにちは、落ちてきてくれてありがとう」とキツネがいかにも礼儀正しく言いました。「いつからここにいるんですか?」と七海が尋ねました。「そうですねー、どのくらいの時間ここにいるのか僕にもわからないんですよ」とつらそうな顔をしてキツネが言いました。なんだか変わったことを言うキツネだなあと思いましたが七海は話しを続けました。

「あなたは、私の言葉がわかるの?」と言葉のわからない真っ暗な道のことを思い出して尋ねました。ハッハッハッっとキツネはいかにも愉快そうに笑いながら「だってこうして話しているんでしょう?」と言いました。七海は陽気に笑うキツネが一度で好きになり「そうですよね。よろしければまた遊びにきてもいいですか?」と、おずおず尋ねてみました。

「私はこう見えてけっこう忙しいんです。いつもここにいるとは限りませんが、あなたが来たいときにくればいいんです」いつも人が決めたとおりに暮らしてきた七海は「来たいときに」というキツネの言葉に戸惑ってしまいました。


このキツネとの出会いが七海の生活と心に大きな影響を与えることを、七海はまだ知りませんでした。

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