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第49話 闘いを終えた天使

キツネの王様とお妃様は、雪の結晶が積もる床の上でもんどり打って苦しむキツネの王子に駆け寄りました。「あなた王子の王冠を取ってください」とお妃様は王様にお願いしました。王様は王子の王冠を取ろうとしましたが、しっかりと頭に食い込んで取れません。お妃様は「神さま、ヤンベルトに罪はあるのでしょうか。この子は生まれて直ぐに私の所に来たのではありませんか。どうかどうかお願いします」と天をあおぎ目を閉じて心の中で呟きました。お妃様の流す涙がキツネの王子の王冠に落ちました。食い込んでいた王冠が王子の頭からはずれて浮かび上がると、王様の上に降りてきました。王様は王冠をそっと手で受け止めました。そしてキツネの王子のネックレスの鎖がパシっと音を立てて切れると、どこかに吸い込まれるかのように消えていきました。

王冠が取れたキツネの王子の姿が変化し始めました。尻尾と耳がとれ、黄金に輝く毛は風に吹き飛ばされるかのように舞い散りました。そして火星や地球の人間と同じ姿へと変わっていきました。

それと同時に、雪の結晶は鈴の音と共にルビーのティアラへと吸い込まれるように消えていきました。

ルビーは目を覚ましました。そして「七海はだいじょうぶ?七海は?」と辺りを見回しました。七海は「私はだいじょうぶよ、ありがとうルビー」としっかりとルビーを抱きしめました。


時計台の鐘が突然鳴り出しました。

時計台の番人のネズミが「これはどうしたことだ、時計台の鐘が鳴り始めたぞ」とあわてて言いました。ネズミたちは大騒ぎで飛び上がりました。

時計台の鐘が鳴り響く中、現れたのは一人の天使でした。その姿は闘いでボロボロになっていましたが、その崇高さと気高さは圧倒されるものがありました。背中には白く大きな羽があり、その目は透き通ったサファイアのようです。

「私は地下での闘いを終えました。悪い天使は今のところ消えましたが、完全にいなくなったわけではありません」と言う声はフルートのように澄みきっています。

ふわさんが「これは、これは。初めてお目にかかります。ふわふわの星のふわと申します」と深々とお辞儀をしました。「あなたのことは知っています。私はごく一部しかわかりませんが、私が仕えている方は全てのことをご存知です」とはっきりとした口調の中にも謙遜さが滲み出ていました。

七海は「あなたが天使なのですか?私は七海と言います。あなたの名前を教えてほしいわ」と目を輝かせて言いました。(まったく七海には驚きですね。天使ですよ、七海)

天使は七海を見て「あなたの名前は七海ですね。私の名前はありますが今は言うべき時ではないでしょう」と答えました。「そうですか、残念ですわ。いつかお聞きできるのかしら。でもお会いできてうれしいわ」と七海が言うと、天使は「私はあなたに贈り物をひとつ預かっています。あなたに良い時が訪れることでしょう」そして続けて「ふわさん、私は行かなければいけません。後のことはあなたに任せるように言われています。私が仕える方は必ずあなたにそれができるようにされます」と言うと天使の姿は見えなくなりました。


天使が七海にくれた贈り物とは何でしょうか?

そして人間の姿になったキツネの王子はこの先どうなるのでしょうか?

時計台の鐘が鳴り、時を刻み始めました。時計台の番人のネズミがバード教授に頼まれて戻した時間は1日でしたね。

急いでお話しを進めることにしましょう。

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