第47話 火星の王様の告白
地球に来た火星の王様は、地球に住んでいる人間が天使から聞いたような悪人ではないことを知りました。
そして王様は衝撃的ないきさつを話したのです。それはどのようなことなのでしょうか?
25年前、突然火星の王様の前に天使が現れるようになりました。そして火星が太陽風をうけて地上に住めなくなったのは、火星よりずっと後に造られた地球のせいであると言いました。ただでさえ太陽から遠い火星なのに、すごく良い位置に地球が造られました。そのせいで火星への太陽の光の波長が変化したというのです。歴代の王様から火星の歴史を聞いていた王様は地球に対して悪意のある天使の話しをすっかり信用してしまいました。それからというもの天使はたびたび王様の前に現れ地球が素晴らしく造られたのに地球の人間たちは当たり前だと思っていて自然を悪用したり他の星に侵略をしようと計画しているなどと事実を歪曲して王様に語りました。毎日天使の話しを聞いていた王様は地球に対して語られる事をすっかり頭にインプットされてしまっていました。
ある日、天使はいつものように王様に現れると自分の計画を話しました。その計画が何だったと言いますと、その頃王様に初めての子供が生まれました。その子を子供ができないキツネの星の王様のお城に置き、彼が成長したところで地球に送り込むというものでした。
キツネの王子が火星の王様の子供とは驚きです。ふわさんは、王子がキツネの星から地球に落とされたのは反抗的な王子を見るに見かねた全てのものを造られた方の指示だと考えていたと話しました。するとスカラーが「ほらね、本当の真実と本当のうそがあるだろう?」と七海の顔を見て言いました。七海はネズミに「申し訳ないけどネズミさん、本当の真実はあるけれど、本当のうそはないわ。これが私の答えよ!」ときっぱりと答えました。「この言葉の意味がわかったら、また森においでと言っていましたね」とスカラーに言いました。
時計台のネズミの長が「まったくお前という奴は!七海さんの言うとおり本当の嘘なんてない。こんなに素直なお嬢さんを惑わそうとしたんだな」と言うとスカラーは飛び上がり頭を抱えてブルブル震えています。
七海は「時計台の番人のネズミさん、あまり怒らないであげてくださらない?暗い森で全くわからない言葉で話す声が聞こえて恐くて泣いていたらスカラーが自分は石を投げられて仲間外れにされていると言ってたのよ。これは本当の事よねスカラー」と手を組み必死に懇願するように言いました。こんな自分をかばってくれる七海を見たスカラーは「何て事をしようとしたのだろう。お嬢さんを暗い森に引き込もうとしていた。そしてキツネの王子に会わせまいとした」と言いながら声をあげて泣き出しました。
ふわさんが「なぜキツネの王子に会わせたくなかったのだね?」とスカラーに聞きました。
「はい、私は暗い森から草原に出る木の陰からキツネの王子を時々見かけました。黄金に輝く姿はそれは美しくて。このお嬢さんはきっとキツネを好きになるに違いないと思いました。そうなると私は友達になれそうなお嬢さんを暗い森に引き止める事ができずに一人ぼっちになってしまうと思ったからです」とさみしそうな様子で言いました。
それを聞いたふわさんは「チーズにつられて罪を犯した奴だが、スカラーも悪い天使に誘惑され辛い経験をした1人なのだと思ってやるのはいかがかな」と時計台の番人のネズミに言いました。
スカラーはその言葉を聞くと、より激しく泣き出しました。スカラーは心から反省したようです。
火星の王様の話しに1番驚いたのは、キツネの王様と王妃と火星の王子様でした。火星の王子は「父上、僕に兄弟がいたのですね。何となく僕は長男ではなく二番目の子供のような気がしていました」と言いながらキツネの王子を見ました。キツネの王子は「そんな目で見ないでくれ。面倒だな」と言いながらも初めて見る弟に照れているようです。しかし自分がキツネの王様と王妃様の本当の子供ではないのにキツネの姿をしている事に胸がむかつくような感情にかられました。
そして、バード教授が「思いもかけない事になってきたが、地球はどうなるのだ?」と言った時、突然キツネの王子のネックレスが紫色の鋭い輝きを放ちました。するとルビーが開けて止まっていた滑車が動き始めました。しかも時間は進むのではなく激しい勢いで反対方向つまり過去へと戻る方向に回り始めたのです。
ふわさんはオッティに「地下室の近くまで行って天使たちの闘いがどうなったのか見てきてくれ」と叫びました。
オッティは螺旋階段を勢いよく降りて地下室の近くまで来ると、地下室の中から激しく闘っている剣の音が聞こえます。螺旋階段を上り「地下室ではまだ闘いが激しく続いているようです」と息をきらしながら、ふわさんに報告しました。「そうか、わかった。オッティありがとう。良い天使は必死に闘っています。私達もがんばりましょう」と意を決したように言いました。
紫色の鋭い輝きを放ったキツネの王子のネックレス、そして時間は過去へと戻り始めました。これからどのような事が起こるのでしょうか。




