第38話 ネコの国へ
七色の輝きを放つルビーのネックレスの力を強めるために気球はどこへ向かっているのでしょうか?
やがて眼下にアーチ形の門が見えてきました。気球が下降し始めました。アーチ型の門は七色のお花で作られています。「そろそろネコの国に到着だな」とふわさんが弾んだ声で言いました。七色の門を通りすぎると、まるでミニチュアのようにカラフルな街並みが眼下に広がってきました。家々の屋根の色は赤、橙、黄、緑、青、藍、紫と様々です。
「ここがネコの国?カラフルでポップで可愛い街!ルビーが産まれて育った国なのね。ルビー、パパとママに会えるのよ」と七海が言うと、ルビーは首をかしげてキョトンとしています。ふわさんが「ルビー王女はまだ思い出せないようにされているんだよ。しかし何かが起きるだろう」と言った時です。太陽の光のかけらがキラキラとルビーの上に振ってきました。優しい光に包まれた時、ルビーにネコの王国の記憶が戻り始めました。
街の真ん中の広い庭園にお城のような建物があります。気球はその庭園へと降り立ちました。「到着ですよ。皆さん降りて下さい」と傘をさしたオッティがふわふわと上から降りてきて言いました。
庭園の中をお城へと向かって歩いて行くと「お帰りなさいませ、王女さま。父上と母上がお待ちです」と少し歳をとった執事の格好をしたネコが立っていました。ルビーは「爺や、お久しぶりです。お変わりありませんか?」とそのネコに話しかけました。どうやらルビーは先ほどの光のかけらを浴びて記憶が戻ったようです。爺やと呼ばれた執事は「はい、ありがとうございます。いつも王女さまはこんな爺にまでお優しい言葉を」と言いながら目を潤ませると、お城へと向かって歩き出しました。
ルビーのお父さんとお母さんでしょうか?お城の入り口に立っている姿が見えた時、ルビーは「お父様、お母様」と言いながら駆け出しました。
「ルビーの記憶が戻ったのね。ママとパパなのね。きっと私のことは忘れてしまったに違いないわ」と七海が呟きました。
「さあ、それはどうかな。私にもわからないけれども」とふわさんが言いました。
皆がルビーのもとに着くと「お父様お母様、こちらは七海とバード教授そしてショージ博士とテツ、それにキツネの国の王様とお妃様、時計台の番人のネズミさんです」と一人一人を紹介しました。ルビーはネコの国の記憶が戻っても今までの事を忘れていなかったのです。
バード教授はルビーに忘れられるのではと思っていましたので「ネコの国の王女さまと暮らしていたなんて光栄だな」と、何とも楽しそうに笑いました。
「王様お妃様お久しぶりですな。事情はお話ししたとおりです。ルビー王女のネックレスの力を強めていただきたいのですが」とふわさんが言いました。
「よくいらして下さいました。王女が私達のもとに帰ってくる日を待っていました。ルビーはお利口さんにしていましたかな?」とネコの王様が答えました。
「はじめまして、私は七海と申します。ルビーは一緒にいてくれて、さみしかった私のそばに寄り添ってくれました」と七海はルビーのパパとママにお礼を言いました。「そうですか、ルビーはあなたの事がきっと大好きなのですね。こちらこそありがとう」とお妃様が言いました。七海はルビーのパパとママはなんて優しいのかしらと胸が熱くなるのでした。
「ルビーや、お前のネックレスの力が必要らしい。もう少し役目を果たさないといけないね。こちらにおいで」と王様はルビーを連れて歩き出しました。皆は王様とルビーの後について行きました。
お城の中へ入り一つの扉の鍵を開けて中に入りました。そこには七色のバラの花が一本ガラスケースの中に入っています。そして王様がガラスのケースを持ち上げると、七色のバラの花がキラキラと輝きを放ちました。その光はルビーの首にかけられたネックレスに一直線に向かっていきます。やがてバラの花は光の輝きを止めました。王様はガラスケースをもとのようにバラの花に被せると「これでルビーのネックレスに最大の力が戻りました。ネックレスは代々この国の王女に引き継がれているのです。力が弱くなってもバラのおかげで何千年も変わらない状態でいることができるのです」と言いました。
さて、ルビーのネックレスの力が強くなった今、光の性質の変化を止めることは出来たのでしょうか?




