第28話 海に浮かぶハート形の島
バード教授の研究室ってどんなところなのだろう?初めて乗るセスナ機にドキドキです。窓から見える景色をルビーをひざに乗せて見下ろす七海でした。
バード教授はヘッドフォンをつけると「オッティ、オッティこちらバード、無事に君が教えてくれた光の先駆者に会えた。今から研究室に向かうところだ」すると「こちらオッティ、バード教授良かったです。博士に会えたようですね」という声が返ってきました。「何だって!博士と言ったかな?彼は博士なのか?」と言うバード教授に「はい、もちろんです。その方は光の研究では有名な方なのですが、ある日突然科学会から姿を消してしまったために世の中の人たちは知らない方も多いのです」とオッティが答えました。「そうだったのか、どうりで私も知らなかったわけだ。とにかくありがとう」と言うバード教授に「いいえ、何かありましたらまたご連絡下さい。私にできることがありましたら協力致します」といつもの誠実なオッティの声が返ってきました。
「ショージくん、君に話しておくよ」とバード教授はヘッドフォンをはずしながら言いました。
そして、光の性質が変化してきた事、このままだと色のない世界になってしまう事をショージ博士に話しました。「そうだったのか、私にどこまで解決することが出来るかわからないが、とにかく急がなければ大変なことになりそうだ」とショージ博士の目が輝きました。科学者としてのショージ博士の心に火がついたようです。テツはそんな飼い主を見てワン!と小さく吠えると尻尾を大きく振りました。
やがてセスナ機は海の上を飛んでいるようです。見渡す限りエメラルドブルーの海が広がっています。「きれいな海!あっ、あそこにハート形の島があるわ」と七海は叫びました。バード教授は「私の研究室はあの島にあるんだよ」といつものように明るく笑いました。
ハート形の島にセスナ機が着陸しました。穏やかな波がよせる砂浜やヤシの木などすべてが美しい島です。「暖かいですね、今は夏なの?」と七海が新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込むと言いました。「ここには秋や冬がないんだ。1年中こんな穏やかな気候なんだよ」とバード教授は言うと「さあ、私の研究室にひとまず行こう」と歩き出しました。
バード教授の研究室は明るい温室のようでした。様々な植物がありますし、色鮮やかな蝶が飛んでいます。七海が研究室の中を目を輝かせて見ていると「さあ、飲み物ができたよ、こちらへ来なさい」と呼ぶバード教授の声が聞こえました。テーブルの椅子に腰かけると、ガラスのグラスに入った赤い飲み物が出されました。「きれいな色!そしてほんのり甘くて美味しいわ。何のジュースかしら」という七海に「さくらんぼとイチゴのジュースだ、お気に召されましたかな。それを飲み終わったら外を散歩してきなさい。私とショージはこれから光の問題を解決しなければいけないからね」とバード教授が言いました。
果たしてバード教授とショージ博士は、この世界に色がなくなるという事態を止めることはできるのでしょうか?




