第27話 おじさんと愛犬テツに会う
まだ夜も明けないうちにバード教授は空き地にセスナ機をとめました。テツを散歩させているおじさんに会うためです。
白々と明るくなってきたのを待って七海のアパートのベランダの窓をノックしました。「おはようございます。私もルビーも早く目が覚めてしまいました。あのおじさんに会えると良いのですが」と七海はルビーを抱きながら言いました。「おはよう。ありがとう。必ず会わなくてはね」とバード教授は緊張した面もちで答えました。
七海が出かける時刻になりました。玄関の扉を開けて七海が外に出ると、犬を連れたおじさんが歩いてきます。「おはようございます。テツ可愛いですね」と犬の頭をなでました。テツは喜んで尻尾を大きく振ります。「おはよう、お嬢さん。今朝も元気かな?」とおじさんがにこやかに言いました。
その様子をみていたバード教授は驚いて「間違いなら申し訳ないが、もしや学校で同じクラスにいたショージくんか?」とテツの飼い主のおじさんに言いました。「君はバード、バードくんか?」と言うと、二人は肩を抱きあって再会を喜びました。
実はバード教授とテツの飼い主のおじさんは、とても仲良しでした。テツの飼い主のおじさんの名前は小路です(でもここではバード教授の発音通りにショージと呼ぶことにしますね)外国から転校してきたバード教授はショージと呼んでいました。二人はすぐに打ち解けて友達になりました。授業が終わると色々な事を話し合いました。どちらも地球の様々な現象や生き物にとても興味があり薄暗くなるまで話していても時間が足りなくなるくらいでした。しかし、卒業してからはバード教授はドイツの大学、ショージはイギリスの大学へ行くことになりました。そして、それきり会うことはありませんでした。
二人が再会を喜んでいるあいだ、七海はテツをなでていました。それを見ていたルビーは七海が虫から動物に至るまで、すぐに打ち解けてしまうことは知っていましたが、テツが七海を大好きな事に気がつきました。テツが七海を飼い主のように慕っている様子を見て「七海について何か知っているかもしれない」と小さく呟きました。
しばらくすると、ショージは「お嬢さん、大丈夫かな?遅刻すると大変だが」と七海を見ながら言いました。「そうだわ。早く行かなければ遅刻しちゃうわね」と名残惜しそうに言いました。するとバード教授が笑いながら「大丈夫だよ。そんな事もあるかと思って時計台のネズミくんに1日時間を戻してくれとお願いしておいたよ。今日はみんなに私の研究室まで来てもらうつもりでね」と言うと、「ショージくん、事情は後で話すから私の研究室まで一緒に来てほしいんだが。とても重大な事が起こり始めようとしているんだ」と今度は真剣な表情で言いました。やはり昔の親友だというだけあってバード教授の真剣さがショージにも伝わりました。ショージは「わかった。一緒に行くよ」とうなづきました。
ショージと愛犬テツ、七海とルビーを乗せてセスナ機はバード教授の研究室へと飛び立ちました。




