第25話 オッティの思い
どうしようもないキツネの王子を立ち直らせるようにという、ご主人様の命令にオッティは何をしようと考えたのでしょうか。オッティの話すことをルビーは聞いています。
ルビーがバード教授のもとから七海のところへ来たこと、そしてドングリたちが自分の合図なしに芽を出したことを知ったオッティは、もしかすると七海の素直な心がキツネの王子を変えることができるかもしれないと思ったのでした。しかも、七海が時空を超えてキツネと会ったことを聞いた時、その思いがいっそう強くなりました。オッティはご主人様から預かっていた懐中時計を七海に渡し、キツネと話しができるようにしたのでした。
そこまで話し終えるとオッティは「ルビーさん、七海さんの事が心配だったでしょうね。あのキツネの王子は一筋縄ではいかないほど嘘を本当のことのように言ったり、本当の事を嘘のように言ったりするのですから。普通の人間では怒ってしまうのですが、七海さんは多分怒らずに素直に聞いて、心が傷ついているのではないかと思いまして」とため息をつきました。
ルビーは先日キツネの王子に時計台で会った時にめんどうだなと何度も口ぐせのように言うことにバード教授も自分もずいぶん腹が立ったし、夜中の12時に懐中時計で話す七海の複雑な様子を見て心配になったことをオッティに話しました。
するとオッティは「七海さんがキツネの王子の本当の姿に気がついてくれることを願っています。七海さんでも変えられなかったことはご主人様もわかってくれていると思います」とだけ言い残し、また傘を開いてふわふわと舞い上がり始めました。ルビーは「どうしたら七海が気がつくの?」とオッティに向かって叫びました。「私には何もできることはありません。七海さん自身が気がつくしか方法はないのです」とだけ言うとオッティの姿は雪が降る空へと消えていきました。
ルビーは七海の悲しむ姿を思い浮かべながら、消えていくオッティの姿を見つめていました。
「ただいま、ルビー」と少し元気のない七海の声が玄関から聞こえました。ルビーはわざと元気な声で「お帰り七海!今日のご飯は何?」といつものように玄関で七海に抱かれてお部屋にはいりました。
このあと七海にとってすごい助けがあるのですが、今は七海もルビーもその事を知るよしもありませんでした。




