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第22話 懐中時計での会話の再開

元気にアパートの扉を開けて飛び出した七海は、ランチタイムが近づくと、毎日キツネと話していた事を思い出しました。ルビーがいない間、キツネのことを考える心の余裕もなかったのです。ルビーがいなくなった時に、あわてて懐中時計を取り出してキツネに連絡した時「なんだよ、眠いんだ。明日にしてくれないか」と言われたのですから無理もありません。

ランチタイムになったらキツネと話してみようと思いました。


ランチタイムのチャイムが鳴りました。急いで昼食を済ませると懐中時計を取り出し「もしもしキツネさん、こんにちは」と話しかけました。「ああ、こんにちは」とキツネが答えました。今から寝なくてはいけないが、短い時間なら話せるとキツネは言いました。キツネと話していると楽しくて、あっという間にランチタイムの時間は終わってしまいました。なぜキツネと話すのが好きなのだろうと懐中時計のスイッチを切りながら思いながらも、七海にとってはキツネと話す短いランチタイムの時間が楽しくてうれしい時間なのです。


仕事が終わり、ルビーがいてくれると思うと七海は足早にアパートへと帰りました。「ただいま、ルビー」と元気に七海が扉を開けると、いつものように玄関でルビーが待っていてくれました。一緒に夕飯を食べたあと「おじさんはルビーがいなくなった訳を聞いてくれと言っていたけど、話してくれる?」とルビーに聞きました。

ルビーは、セスナ機で赤い屋根の街の時計台に行ったこと、火星と地球の夕陽のこと、火星の王様が地球の時間を過去に戻そうとしたこと、時計台の時計がもとどおりに進み出したことなどを七海に話してくれました。ひととおりルビーが話し終えると七海は「そんな大変なことがあったのね。急にルビーがいなくなってさみしかったけど、おじさんとルビーががんばってくれたことがうれしわ」とルビーを抱いて頬を寄せました。

「そう言えば、七海の言っていたキツネと会ったよ」と言いました。七海は「キツネさんと会ったのねルビー、今日はキツネさんと話したのよ」と目を輝かせて言いました。「キツネのことなんだけど、あまり良い人だと思わなかったよ。なぜ七海があのキツネと話していて楽しいのかわからないけど」とキツネのぶっきらぼうで失礼な話し方を思い浮かべながら言いました。「確かにそうね、時々冷たくてひどい人だなと思うことはあるわ。でも私が知っている聖書のことを話してくれることもあるし、私のことをよくわかってくれているような気持ちになるの」そして、自分にはない魅力に引かれることをルビーに話しました。「ふうーん、七海が楽しいなら良いけど」とそう言いながらも七海があの失礼なキツネとあまり話して欲しくないと思っていました。


「ルビー、今朝ね犬を散歩しているおじさんに会ったんだけど、何か懐かしくてどこかで会ったような気がしたわ」と七海は言いました。ルビーも七海もアパートで生活するようになる前の記憶がありません。ただルビーは元の飼い主のおじさんと会うことができましたが、七海には何の手がかりもありません。

ルビーは火星の王様が自分を『ネコの王女』と呼んでいたことや、白いフワフワの生き物のオッティがキツネのことを『キツネの王子』と呼んでいたことを思い出しました。

ルビーは七海のために、まずはキツネが何者かを調べなければいけないと思いました。それにはキツネの事を知っているオッティに会わなければいけませんが、どうしたらまたオッティに会えるのでしょうか。


さて、ルビーはオッティに会うことが出来るのでしょうか。お話しはまた月夜の夜になりそうですが、あまりぐずぐずしているわけにはいきませんね。もうすぐ冬が来ます。キツネは冬眠を始めるかもしれないのですから。

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