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第21話 帰ってきたルビー

さて、いなくなったルビーがもうすぐ帰ってくることを知らない七海。一日の仕事を終えバスを降りるとアパートへと元気なく歩いています。

ルビーがいなくなってから数日が経っていましたが、朝も昼も夜もルビーがいない悲しみで胸が締め付けられ、ご飯も喉を通らず涙が込み上げるのを押さえるだけで精一杯でした。朝出かける時も休日も夕食の時間も寝るときも一緒にいたルビーの姿を思い出しては泣いてばかりの日々でした。

七海、もうすぐルビーが帰ってきますよ。元気を出して!


七海がアパートへ向かっていると、セスナ機が空き地に降りてくるのが見えました。七海は空き地へと走り出しました。あたりは夕陽が沈み、薄暗くなっています。七海が空き地に着いた時、セスナ機の扉が開きルビーがピョンと降りてきました。七海はルビーに駆け寄り、ルビーを抱きしめました。すると、バード教授が「ルビーを勝手に連れ出して悪かったね、事情は後でルビーから聞いてくれないか。私も疲れているので直ぐに失礼するよ」と言うと、セスナ機に乗り込み空へと飛んで行きました。


自分を抱きしめて泣いている七海にルビーは「七海、泣かないで。一緒に帰ろう」と言いました。「そうね、アパートに帰りましょう」と涙を手でぬぐうと、七海はルビーを見て微笑みました。

アパートの部屋へ着くと、七海はルビーの眠そうな顔を見て「ルビーは余程疲れたようね。今日はゆっくり休ませてあげなくては」とルビーを布団の中に入れました。七海もルビーが帰ってきて安心したのでしょう。いつの間にか心地よい眠りに落ちていきました。


「七海起きて!会社に遅刻するよ」というルビーの声に起こされると「ルビーありがとう。私が帰るまで待っていてね!」と玄関を飛び出しました。

七海が「遅刻するー」と駆け出して行くのを笑って見ていたおじさんと愛犬のテツを覚えていますか?以前に一度歩いてくるおじさんにぶつかりそうになりましたが、今朝も犬を散歩しているおじさんに危うくぶつかるところでした。


「ごめんなさい。急いでいたものですから」と七海が言うと、おじさんは「大丈夫、少し驚いたがね。今日は元気そうだね」と微笑みながら言いました。七海は遠い記憶の中でおじさんと会ったことがあるような気がして「あのどこかでお会いしたことがありますか?」と尋ねました。おじさんは「いや、お嬢さんには会ったことはないと思いますよ」と答えました。落ち着いた口調や声の響きも懐かく感じましたが「私の勘違いなようですね」とおじさんの横にいたテツに「ごめんね、驚いたでしょ」と話しかけながらテツの頭を撫でました。テツは尻尾を振ってとてもうれしそうです。「珍しいな、テツが初めて会った人にこんなにも、なつくなんて」とおじさんが言いました。

七海は「テツという名前なんですね?私は犬が大好きなんです。あっ、行かないと!ぶつかりそうになって本当にごめんなさい」と言うとバス停に向かって走り出しました。


「テツや、あのお嬢さんが元気になって良かったな。さあ、もう少し歩くぞ」とおじさんは歩き出そうとしますが、テツは七海が走って行った方向を見てびくとも動こうとしません。

「なんだ?テツ、ほら行くぞ」とおじさんが言うと、テツはようやく歩き出しました。

テツは七海が自分の頭をなでた時、ご主人様が小さな女の子を膝に乗せて座り、楽しそうにしている光景がはっきりと見えました。女の子もご主人様もとても幸せそうに笑っています。

テツはご主人様にそれを伝えたかったのです。


記憶をなくした七海の手がかりがテツのおかげで少し見えてきたようですが、果たしてテツのご主人様と七海は何か思い出すことが出来るでしょうか。

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