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第2話 夕方は嫌い

「なぜここにいるんだろう」と七海は天井を見上げました。アパートの住人も知らない人ばかり、この町の人も知らない人ばかりです。アパートに帰ってもひとりだと思うと、毎日仕事が終わった夕方はさみしさで涙がこみ上げてきます。

そんな日々の中でも、道端に咲く花、晴れた日の青い空、いろいろな虫たち、夜空に浮かんで微笑むお月さまは七海のさみしさを少しずつ慰めてくれたようです。


ああ、そうそう七海のアパートについてもお話しするお約束でしたね。

静かな住宅街、バス停まで歩いて3分、マーケットまで5分です。こんな立地条件でお家賃は相場の三分の一程度ときています。一人で生計をたてなければいけない七海がよくこのアパートのことを「感謝すべきオンボロアパート」と呼んでいるのもうなづけます。


夕方のさみしさはありますが、七海は何といっても子供の心をそのまま持って大きくなったので、可愛いお花を見つけたり、蜜蜂さんと仲良しになったりするとうれしいらしく、「私はなんて幸せなんだろう」と空に向かって心の中で叫んだりするのでした。


ある休日のこと、七海がアパートの近くのお家のバラの花を見つけて、その良い香りにうっとりしていると、突然声をかけられました。驚いた七海が「あっ、ごめんなさい。バラがとても良い香りでしたので」と言いました。「いや、いいんですよ。それよりフキがとても大きくなったので、持っていって食べませんか?」どうやらそのおじさまはお庭の後ろの空き地で草取りをしていたようです。七海は大きな傘のようなフキを手渡されました。七海は丁寧にお礼を言ってアパートに戻り「お部屋からは見えなかったけど、アパートのすぐ後ろにあんなに広い空き地があったなんて知らなかったわ」と呟きました。「またバラの花を見にいらっしゃい。そしてこの空き地は私は普段はここにいないから、いつでも散歩に来るといいよ」とおじさんが最後に言って下さったことがうれしくて、空き地に散歩に行こうと七海は思うのでした。


何日かあとにその空き地で不思議なことが起きることを七海はまだ知りませんでした。

どんな不思議なことがあったのかは、またこのあとにお話しします。




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