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第17話 火星の王子

火星の王さまに会うためにセスナ機に乗り、火星へと出発したルビーとおじさん。

「おじさんの名前はバードなの?ネズミがそう呼んでいたけど」

「そう、バードだ。ルビーよく聞いてたね」と言うと大きな声で笑いました。

「それじゃおじさんをバードと呼ぶほうが良いかな。何だっけ…バード教授だったっけ?」

「そうだが、おじさんでいいよ。ルビーは私のことをいつもおじさんと呼んでいたからね」


セスナ機は少しずつ高度を上げていきます。おじさん、いえバード教授は「今14000フィートだな。そろそろ限界の高さだ。何とか時空のはざまに上手く入ってくれると良いのだが」とつぶやきました。

バード教授はセスナ機に乗ってから何回か時空のはざまに入って不思議な経験していました。科学者である自分には信じられない出来事でした。そして、人間には理解できない事が起きる奇跡というものを信じるようになりました。

それで今回も火星に行く事を目に見えない力が助けてくれるように感じていました。


セスナ機の翼を少し傾けると白い雲の中に入り、前が見えなくなりました。風をうけたセスナ機は、バランスを失いグラグラと揺れました。「こわい!だいじょうぶ?」と思わずルビーが聞いたその時、セスナ機はスッ-と何かの力で持ち上げられて、景色は濃く青い空間に変わりました。「よーし、うまく時空の隙間に入り込んだようだな」とバード教授は言いました。


やがてセスナ機は自動操縦されているかのように、灰色の地面に着陸しました。ここが火星でしょうか?

バード教授とルビーはセスナ機から降りて辺りを見回しました。すると、少し離れた所に空を見ている若者がいます。近づいて声をかけました。「こんにちは。私はバードといいます。実は事情があってこの星の王様をさがしているのですが」

若者は特に驚いた様子もなく「ああ、こんにちは。その人ならよく知っていますよ。私はこの星の王子なのですから」と言いました。「私は王様、つまりあなたのお父様である王様に会うために地球から来ました。ところで、なぜひとりで空を見ているのですか?」とバード教授が言うと王子は「もうじき太陽が沈む時間だからです。一緒にご覧になりませんか?」と答えました。


青く透きとおった光を放つ夕陽は確かにきれいでした。しかし、夕陽を見ている王子の横顔のように、どこか物悲しい感じがしました。空や雲が赤く染まり、一日の終わりを告げるような地球の夕陽とは、あまりにも対照的です。

青い月の光のような太陽が沈むと、王子は立ち上がり「僕は夕陽を見るとさみしくなるのです。でもなぜか心が落ち着く、それで毎日この時間だけ夕陽を見に外へ出てくるのです。あなた方は、私の父に会うために、ここに来たとおっしゃいましたね。僕について来てください」と言いました。


本当に不思議です。何かの力に導かれるように火星に来て、しかもちょうど夕陽の沈む時間です。そして火星の王子に会えたのですから。

火星の王さまは、どんな人なのでしょうか?

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