第16話 青い光が射す地球
夕陽の色のことで腹を立てた火星の王さまでしたが、王さまが何をしたのか、お話しを続けましょう。
火星は地球が誕生する前の頃から、すでに宇宙に存在していました。地球に初めて太陽が射した時、青白い光が地球を覆っていました。地球が出来る様子を火星の人々は興味深く見ていました。
火星の王さまも昔の王さまから代々語り継がれてきた地球が誕生した頃の話しを自分の父である王さまから聞いていたのです。そこで、王さまは地球が誕生した頃に時を戻せば、地球の夕陽が青かった時代になると考えました。
「よし!地球の時間を戻し、地球の人間たちに青い夕陽を見せてきれいだと言わせてやろう」とつぶやきました。
地球の時間を正確に刻んでいる時計が、ただ一つあります。そうです、おじさんとルビーが今いる時計台の時計です。時計台の番人であるネズミはいつもと違う回りかたを始めた針を見て、驚いて何とかしようとしました。限りなく長い間使うことのなかった鍵穴があることは知っていました。しかし、どうしたら鍵が開くのかはわかりません。時計台ができた頃からこんな事は初めてだったからです。ネズミは古くからの友人であるルビーのもとの飼い主のおじさんに相談することにしました。おじさんは実は優秀な科学者なのです。
ネズミから連絡をもらったおじさんは時計台へとすぐに向かいました。鍵穴を見てポケットから何やら石を取りだしました。石はピタリと鍵穴に収まりましたが、回そうとしてもびくとも動きません。この石はルビーを拾った時にルビーの首にかけられていたネックレスの石でした。小さなルビーには重すぎるとルビーの首からネックレスを外しましたが、ずっと大切にしまってありました。
もしかすると石のネックレスをしていたルビーが回すと鍵が開くのかもしれないと考えたおじさんはルビーをこの時計台に連れてきたという訳です。
おじさんがルビーに話しているのを聞いていたネズミが「おっと、これからの話しは私にさせて下さい。バード教授」と言いました。そして、バード教授が古くからの知り合いであること、ネズミが自分のおじいさんの、そのまたおじいさんの、そしてそのまたおじいさんの頃(つまり何世紀も前に時計台ができた時)から時計台の番人を任されてきたこと、バード教授がセスナ機に乗っている時に時空の流れに巻き込まれて不思議な経験をするようになったことなどをルビーに話してくれました。
ネズミは話し終えると「みんな、どうだい?少しは時計の針がもどったかい?」と滑車を懸命に回している七匹のネズミに大きな声でが叫びました。
「滑車がすごく重くて、なかなか動いてくれません」とネズミたちが一斉に言いました。
「おかしいなあ。油は毎日塗っているし、そんなはずはないんだがな」ネズミはそう言うと、ひげを引っ張りながら考え込みました。
おじさんは、しばらくして口を開きました。
「王様と話し合いが必要なようだ。私はルビーを連れて火星の王様に会ってくるから、皆さんは大変だと思うが、交代しながら滑車がこれ以上反対に回らないようにしばらく仕事を続けていてくれるかい?」
「わかりました、バード教授。私達も時計の針が反対に回らないようにがんばります。どうぞお気をつけて」とネズミが言いました。
おじさんとルビーは、長い螺旋階段を下りてセスナ機に乗り、火星へと出発しました。
戻っていく時間を食い止めて時計の針を先に進めないと大変なことになります。おじさんとルビーは火星に行き、王さまに会うことが出来るのでしょうか?




