第14話 赤い屋根の街の大きな時計台
ルビーが突然いなくなった日のお話しを続けることにしましょう。
アパートのベランダの窓のそばには、七海がルビーのためにパッチワークで作った座布団が置いてあります。ルビーは日中そこに座り、外を見たり、うつらうつらと眠ったりしています。
その日も、お気に入りの自分の場所でゆったりとくつろいでいました。すると、突然もとの飼い主であるおじさんがトントンと窓をノックしました。
「ルビー、すまないが私と一緒に行ってほしいところがあるんだ」
「なんですか急に。今すぐにですか?」とルビーが自分専用の扉を開けて言うのが早いか、おじさんはルビーを抱きかかえて、セスナ機がとめてあるアパートの裏の空き地へと走り出しました。
「なにをするの?離してよ」とルビーはもがいて抵抗しました。
「今は話している時間がないんだ。じっとしていてくれ」と、セスナ機の窓からルビーを入れるとセスナ機は飛び立ちました。
どのくらい飛んだでしょうか。赤いレンガ造りの街が見えてきました。セスナ機は街の真ん中にある大きな時計台の裏の塀で囲まれた場所に降り立ちました。
セスナ機が止まると、レンガ造りの建物の入り口から帽子をかぶり、首近くまであるエプロンを着たネズミが出てきて言いました。
「お待ちしていました。私のあとに付いてきてください」
おじさんとルビーは、ネズミのあとについて建物の中に入りました。薄暗い長い廊下をぬけると、少し広い所に出ました。
「ここをのぼらなければいけませんよ。少したいへんですが、急いで下さい」とネズミが振り返りながら言いました。
見ると、上へと続く長いらせん階段があります。ネズミの後について、おじさんとルビーは長いらせん階段を上り始めました。
階段を上りきると、どうやらそこは時計台の一番上のようです。時を知らせる大きなベルと、これまた大きな機械仕掛けの滑車があります。巨大な時計の裏の隙間からは、赤いレンガ造りの街並みが見えます。
おじさんは、なぜルビーを見知らぬ街の時計台へ連れてきたのでしょうか?
どうやら、時計台のネズミが急いでいるようなので、この続きは早くお話ししなければいけませんね。




