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第13話 ルビーはどこへ

季節は秋から冬へと向かっていました。七海は懐中時計でいつものようにキツネのベクトルと話して楽しい気持ちで空を見上げました。

この季節にしてはめずらしく青い空が広がっています。ビルの谷間から空を見上げると、一台のセスナ機が飛んでいるのが見えました。

「あっ、もしかしたらルビーの元の飼い主のおじさんかもしれない。でも、まったく私には気がついていないようだわ」と七海は呟きました。小さな白いふわふわの生き物オッティと夜空を飛んだけれど、青い空をセスナ機に乗って飛ぶルビーの飼い主だったおじさんに、一種の憧れのようなものを感じるのでした。


「ただいま、ルビー」 と七海が帰宅すると、いつも玄関に迎えに来ているはずのルビーの姿がありません。もしかしたらと、七海は昼に見たセスナ機を思い出しました。おじさんがルビーを連れて行ってしまったのではないかと、頭から血の引くのを感じました。

「ルビーどこにいるの?」と部屋中を探しました。狭い部屋にルビーが隠れる場所などあるはずがありません。

七海はとっさに懐中時計を取り出し「きつねさん、起きて!お願い、起きて!」と叫びました。

「なんだよ、こんな時間に。私は起こされるのが嫌いなんだ」という声が返ってきました。

「ああ、ごめんなさい。でも、どうしたらよいかわからなくて」

「何があったか私の知ったことではないが、とにかく今は眠いんだ。話しは明日にしてくれないか」と不機嫌そうにキツネが言いました。


明かりの消えた懐中時計を手にして、七海は呆然と立ちつくしていました。そしてキツネの冷たい言葉に打ちのめされたようで「なんてひどい言い方をするのかしら」とキツネへの思いが変わるのを感じました。


いったいルビーはどこへ行ってしまったのでしょうか?

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