聖戦学院 6話 修行、そして出会い
もうあらすじだけ書いていきますよー
絶望的な光景を目にしたルクスは、
強くなりたいという願いを抱え、進藤先生の元へ。
ひたすらに修行をするルクスだが、
まだまだ目指すところには遠いようで・・・
「遅い、軽い、読まれやすい、もっと自分の動きを意識しろ」
「くっ、はああっ!」
滝宮学院の8階体育室にて、二人の男が剣を交えている。
とは言っても真剣ではなく、木で作られた模造刀であるが、彼らの表情はまさに真剣そのものだ。
一人は学生。短髪の黒髪に上下は夏用の学生服、そして靴は彼のお気に入りの青いスニーカーだ。
先ほどから半ばがむしゃらに木刀を振り、目の前にいるもう一人の男に当てようとしているが、これがまるで当たらない。
「そのような読まれやすい動きだとすぐに殺られるぞ。」
そんな彼の指導をしているもう一人の男は、背の高い教師。
教師というよりは流浪の侍を彷彿とさせる、長い黒髪に無精髭、そしていかつい顔といった、如何にも江戸の侍というイメージがぴったりな人である。
和服を着て学生の動きに合わせて刀を動かし、その軌道を最低限の動きで逸らす。体勢を崩され隙だらけになる彼に、容赦無い一撃。
「あだっ!?」
倒れる少年に向かって、立て、とだけ告げる教師。
痛みに若干顔を歪めながら、それを堪えて立ち上がる少年。
「よし、続き行くぞ、天道寺」
「はい、宜しくお願いします、進藤先生!」
天道寺と呼ばれた少年は、自らが進藤先生と読んだ教師に対して一礼し、再び剣を構え、走る。
あの日、僕は研究科室で多くのことを教わった。
この世界の現状、この学院設立の本当の目的、
そして、「政府」のこと。
まず第一に、この学院のこと。
場所は以前僕達が知らされていた場所ではなく、日本の中心地であり現在最も危険な場所である、東京の世田谷区。
元の場所はここへと通じる一方通行のワープホールの役割を果たしており、窓には幻を見せる細工が施されている。その上ごく一部の例外を除き外出不可なので、今まで誰にもバレていなかったというわけだ。
また、こうした施設があるのは日本だけではなく、世界各地に同じような学院があり、それぞれ各国の領地の中で最も危険とされている場所に建てられている。
第二に、「政府」の目的。
「政府」の目的は学院にモータルを排除させ、安定した人間らしい生活を送れるようになるまで地上を平定させること。
これは本来2年生になった時に公表されるらしく、悠や里村先輩以外にもあの戦場にいた生徒は全員これを知っていたということだ。
しかしモータルは魔粒子と他生物の結合により発生する上、研究科の資料によると魔粒子だけで自然発生している種も増えているらしい。
つまりこの学院にいる限り戦い続けなくてはならないということだ。
悠と里村先輩はあえて触れなかったが、おそらく兵士になることを反対していた親を洗脳し、殺害してまで学生を引き入れようとしたのは、ひとえに人員不足のせいであろう。
それだけのために、僕の親は殺された。父も、母も。
第三に、「征伐」システムのこと。
3年生や職員会議で認められた生徒たちは、学院の外にいるモータルたちを討伐する「征伐」に向かうことができる。
どうやら職員の一部、学院上層部の人間は外の状況をある程度把握できるらしく、それにより必要に応じて学生を派遣し、人類にとって有益なものの保護をさせるらしい。
地下避難所、発電所、防衛拠点、食糧生産所と、
その場所はかなり多く、まだまだ保護が行き届いていないところなどざらにある。
数々の情報が得られたが、まだ気になっていることが一つある。
悠の話していた、あのポエム。「界震の震源地に残されていた」と言っていたが、
もしそれが本当ならあの界震には、何か人為的なものが絡んでいたのかもしれない。
僕のこれからの目標は、その征伐にできるだけ早く同行し、その謎を突き止めること、それだけだ。
「ぜ、全戦全敗・・・」
2時間という時間制限の中、進藤先生に対して、
僕は一度も攻撃を当てることができなかった。
「まあ、最初のうちはそんなもんだろう、ほら飲め」
先ほどまでの雰囲気とは打って変わって、笑ってジュースを差し出してくれる進藤先生。
お礼を言いつつ受け取り、水分欲しさにがぶ飲みしていると、横から苦笑の気配。
気にせず飲む。2時間ぶっ通しの稽古は流石にきつい。
あれから、僕は進藤先生の誘いを受け、剣術科に入ることに決めた。
決め手になったのは、進藤先生の、強くなれる、という言葉。
僕は強くなりたい。モータルに負けないために、目の前でもう死人を出さないために。
そう言って進藤先生に剣術科入りを志願すると、先生は二つ返事での喜んで受け入れてくれた。
そして、修行は早めにしておいたほうが良い、という里村先輩の勧めにより、特別に授業を受けているというわけだ。
界震の謎のことは、まだ誰にも話していない。進藤先生にもだ。
余計なことを言って混乱させるよりは、決定的な証拠を見つけるまで黙っていた方が、みんなの心を乱すことがないだろうという、僕の独断だ。
「まだまだ拙いが、最初の頃よりは大分上達している。とは言ってもモータルを相手にできるかと言われれば、無理と言わざるをえないがな」
息を切らせながら、先生の方を向く。
「ぜぇ、はぁ、3日も経って、一発も当てられない、なんて、はぁ、はぁ、まだまだですよ、僕も」
「す、すまん、一旦落ち着け」
背中をさすってくる先生に申し訳なさと自分の弱さを痛感しながら、呼吸を整える。
「ふぃー、ようやく落ち着きました」
「よし、とりあえずお前に足りないものを挙げていくぞ、ここからは頭を使う授業だ」
その言葉に頭を切り替え、休憩を終える。
「はい、よろしくおねがいします!」
「おっすルクス、やっぱりお疲れだな」
朝8時から始まり4時間に及ぶ授業を終え、食堂に向かうと、ぱったり悠と会った。
「あ、悠。うん、比喩表現抜きにすっごい疲れた」
「進藤はスパルタだったか?授業を受けた奴ら、みんなぶっ倒れてんだもんよ」
「えっと、けっこう楽しかったよ、授業」
何の気も無しにそう答えると、かなり驚いた様子で悠が問い詰める
「マジで!?楽し、楽しかった!?どんな授業だよ、俺も見に行っていいか?」
「えっ、いやまあその」
「お前には次の実技試験の対策があるだろう、桜木」
言葉に詰まっていると、後ろからやってきた里村先輩が悠にクギを刺す。
「とか言ってもよ、お前も見に行きたいだろー?あの進藤の授業だぜ?」
「それは非常に興味あるが、まずやることがあるだろう」
説教を始める先輩の後ろに、ゆっくりと一人の人影が忍び寄る。
「そうッスよね、まずやることがあるッスよね、輝っち!!」
「ッ!?な、永江菖蒲!?」
思いっきり声を出して驚かしてきたのは、研究科の3年、永江菖蒲先輩だった。
「輝っち、なーにしてるッスか?わっちとの愛のデートはどうしたッスか?」
「え、あ、いやその、よ、用事が・・・」
「言い訳無用ッスよ輝っち!さあ、わっちと愛の昼休み屋上デートッス!」
やめてくれええええええ、と虚しい叫びをこだまさせ、挨拶する間も無くものすごい勢いで去っていく二人を見ながら、僕は心の中で、お幸せにそしてどうかご無事でと思うのであった。
「・・・よし、俺も実技の練習に戻るわ、じゃあな」
「ぼ、僕も昼食を済ませて自主練しなきゃ・・・じゃあね」
呆気にとられながら別れの挨拶を済ませ、食堂の中へ向かう。
「1001、1002、1003・・・」
昼食を軽く済ませた後、再び8階体育室に戻り素振りを繰り返す。
筋肉の発達よりも、剣を振るうことを体に覚えさせることが目的だ。一本、一振り、丁寧に振るう。縦、横、斜め、思いつく限りのありとあらゆる軌道で空を斬る。
「1500、1501、1502、1503」
休み時間が終わるまで、ひたすらに振る。
無心で振っているうちに、授業20分前の予鈴のチャイムが学院に鳴り響いた。
「・・・2579」
最後の1カウントを終えて、剣を下ろす。瞬間、どっと疲れが押し寄せてきて、勢いで倒れそうになる。
先生からは、実戦で扱えるようになるには30分で1万回振れるようになれと言われている。根拠は先生の経験則から導き出された勘、だそうだ。
30分で、1万。数字にすると簡単そうだが、いざやってみると剣の重さですぐに腕が重くなり、なかなか振れない。適当そうに見えて、妙に的を射ているのではなかろうか。
5分の休憩を終えて、息を整える。当然授業をサボるわけにはいかないので、自分の教室に戻ろうとすると、
ふと、一人の少女と目があった。
「・・・・・・・・・」
フーデッドローブを深くかぶり、遠くからこっそりと
こちらを見つめてくる少女に対し、僕はどうすればいいか全くわからなかったので、とりあえず。
「あの、もうすぐ授業ですよ、教室に戻った方が・・・」
ぷいっ、とそっぽを向かれる。まさかのサボリ魔なお方だろうか。
「あ、あの・・・なんでここに?」
そっぽ向いたまま。
「え、えっとその、あなたは誰ですか・・・」
まだそっぽ向いたまま。
「・・・・・・・・・」
「ほ、本当に誰だかわからないんッスか?」
やっと会話が成立し、と思ったところで聞き覚えのある口調に思わずあっと声が出る。
「そうッスよ、わっちッス、永江ッスよ」
フードの下にあったのは、ぱっつん頭とメガネが印象的な、少し風変わりな先輩、永江菖蒲さんだ。
「先輩!?こんなところで何やってるんですか!さっきも言いましたけど授業が」
驚嘆を隠さず大声でまくし立てる僕に、永江先輩は両手を自分の前に出して落ち着けのサインを送り、
「いやね、進藤のやつから授業を受けてるって聞いたもんだから気になっただけッスよ」
輝っちには逃げられたッス、と若干悲しそうに話す先輩。
「さてさて天道寺くん、さっき授業を受けないのかと聞いたてたッスけど答えはノーッス」
「先輩サボるんですか?一ノ瀬先生はともかく他の人の授業なら一応出ておいた方が」
「一ノ瀬だからサボるんすよ、てかあいつにさん付けしなくていいッス。それよりも天道寺くん、関係ない風に話進めてるっすけど、君もサボるんッス」
何故だ。解せぬ。どうしてか。
僕が驚嘆と抗議の姿勢を見せると、永江先輩は悪戯っぽく笑みを浮かべ、
「君には実戦経験が必要ッスよ。授業なんかより百倍役に立つことを教えてあげるッスから、おとなしく付き合うッス」
前言撤回、なんと有難いことか。
ここ最近の授業は同じことを繰り返し教えられ、退屈極まりないものだった。今から受けるはずだったのも、モータルの生態学ーーー僕は既に習うはずのモータル、炎狼と氷鳥に会っているーーーーなので、ここは先輩のお言葉に甘え、授業をすっぽかすことにした。
「そう言う事なら、よろしくお願いします」
「聞き分けの良い子は好きッスよ。んじゃ、構えるッス」
そう言うと先輩はローブを脱ぎ捨て、自身の武装を露わにした。
いや、武装と言ってもいいものなのか、ただリュックサックと腰に二つのポーチを掛けただけの軽装であった。
「構えろって・・・先輩それで戦えるんですか?」
もーまんたいッス!とサムズアップする先輩。まあ先輩がそう言うならいいだろうということで、木刀を構える。
「一発でも当てられたら、なんか奢るッスよー!そいじゃ・・・始め!」
合図とともに踏み込む。そして、全力突進。
両手で構えた剣を右肩に乗せ、下段に下ろす。そのまま振り上げ。
当然躱される、しかしそれが狙い。
上に飛んだ先輩に向けて飛び上がる。振り上げた姿勢を利用し剣を振り下ろす構えに変える。
そのままーーーー
「はあっ!」
気合いとともに振り下ろす。ここまで約2秒。
これもまた躱されるも、気にせず次の攻撃に移る。
空中では自由に体を動かせない。特にあんな荷物を背負っていたらなおのことだ。
ここからは大振りではなく、素早く連続で斬りかかる。
だが、先輩は空中にいるはずなのに余裕の表情で全て躱す。
そのまま先輩が先に地面につき、軽々とバックステップ。遅れて着地した僕とは、およそ3mの距離。
「なるほど、動きが甘々っすね、これは誘ってよかったかもッス」
ぐさっ、と心に刺さる一言をもらい、若干悲しくなる僕。
それでも諦めずにまっすぐ突っ込もうとして、止める。
あの先輩相手に必要なのは何か。おそらく計算では勝てない。ならばただ計算できないレベルのーーー
「速さで勝負すればいい、ッスか?そこが」
ぐんっ、と距離を詰めてくる先輩に反応が遅れた。
「甘いってことなの、ッスよ!!!」
飛びながらの回し蹴り。まともに腹に喰らってしまい、吹っ飛ばされる僕。
空気が無理やり吐き出され、息が苦しくなる。
強い。
想像以上に、この人は強い。
「どうしたッスか?この程度でへばってたら、征伐なんて夢のまた夢ッスよ!」
その言葉で、落ちかけていた意識を取り戻す。
だが、どうやって一撃当てろというのか。
ヤケクソになっちゃダメだ。考えろ、僕の長所、それは何だ?
あっ、今のところ何もなかった。これは考えなかったことにしよう。
ならば、今の僕の手札。
空中に追い込んでの連撃、突進からの斬撃、
そうだ、まだ試してないのがあった。
剣を上段に構え、全身に魔粒子を収束させる。
形作るのは大剣。進藤先生の刀のような、絶対切断の刃。
僕の魔粒子は、光の魔粒子と呼ばれているもの。
人によって性質が変わる魔粒子の中でも特に珍しいタイプであり、文字通り光、神聖のエネルギーを含む魔粒子だ。
閃光による目くらまし、純粋なエネルギーとしての衝撃、そして、
僕の切り札である、全身強化!
「せりゃああああああああ!!!」
「ひゃっ!?速ッ・・・!?」
光の速度は目で捉えられないほど、速い。
それには遠く及ばないものの、その速さをこの魔粒子は受け継いでいる。
即ち、この光で強化したものは、「速く」なる。
それは、僕自身であっても例外ではない!
「こ、これは・・・想像以上・・・!!」
怒涛のラッシュで、ひたすら逃げを取る先輩を追い詰めていく。
大振り、小振り、連続、縦横横斜め斜め縦ーーー!
繰り返される猛攻に対し、徐々に壁際に追い詰めーーーついに射程距離に入りーーー貰った!!
だが、確信したその瞬間。
「でも、奥の手を持っているのは君だけじゃないッ!!」
キインッ!と甲高い音。
突如先輩のポーチから鉄のようなものが飛び出し、僕の剣を弾いたのだ。
しかし怯んでしまっては押し返される。直感的にそう悟った僕は構わず攻撃を打ち込む。
その一つ一つ全てを弾いていく謎の鉄器。だんだんと僕の体も限界に近づいてくる。
この全身強化は受けられる恩恵も大きいぶん、デメリットも存在する。
体内の魔粒子を大量かつ継続的に使っているので、エネルギーの消費が半端じゃなく、制限時間や強烈な反動があり、気軽には使えない。
「そろそろ限界みたいッスね、だったら、これで!」
そのまま鉄器が大きくしなり、
「終わり!!!」
振り下ろされる。
これが直撃すれば、おそらく僕の体は活動限界を迎え、しばらく動けなくなるだろう。
即ちそれは、試合の負け、ということだ。
でも僕も男だ、意地がある。
例え稽古でも勝負は勝負。全てを出し尽くして勝ちに行くのが礼儀というもの。
だから、最後に放つのはこれと決めていた。
「だったらッ・・・これでどうだああああああ!!」
全ての光を剣に収束させる。光の剣は大剣となり、背後から目の前の先輩や、その周りの空間を眩しく照らす。
そして、そのまま一気に振り抜く。
「ぜぇやあああああああああああっ!!!!!」
閃光が、辺りを照らしーーーーーーー
光が止むと、僕は床に仰向けに倒れていた。
大量の魔粒子を一気に使いすぎたことによる反動。
加えて精神的な疲労によって、もうピクリとも体を動かさない。
目だけを動かして先輩の方を見ると、
無傷。
「そん、な・・・」
あれでも届かなかったというのか。
愕然とする僕に、先輩はゆっくりと歩み寄り、
その表情を喜びに溢れさせながら嬉々として僕に告げる。
「想像以上ッス!ここまでやれるなら特待生ものッスよ!」
ぱちぱちぱち!、と両手で拍手しながら賞賛してくれる。
素直に賞賛を受け取りながらも、先ほどの技で無傷だったという事実が僕の頭から離れない。
すると、それを読み取ったのか先輩か腰のポーチをトントンと叩き、
「これがわっちの武器ッスよ。機械と魔粒子学をふんだんに駆使した自信作ッス」
隠しててごめんッス、と両手を合わせ謝罪する先輩。
「いや、僕も全身強化のこと、黙ってましたし・・・それに、結局避けられちゃいました」
「まだまだ読みが足りないッスね」
けたけたと笑う先輩に対し、少しムッとしたので言い返す。
「でも先輩だってすっごい乙女な声出してましたよー、いつもの〜ッス!みたいなの完全に消えてましたよ!」
やや負け惜しみを込めて言うと、
「へっ?嘘!?そんな声出て・・・あっ」
予想外の反応が返ってきた。
ていうか声が先ほどまでのものとは完全に別人だ。
「えっ、と、先輩?」
「あー、えっと、その・・・」
やや申し訳なさそうに、顔を赤らめる先輩だった人。
その仕草に少しドキッとしたものの、必死でそれを隠し、次の言葉を待つ。
すると、衝撃の一言。
「あたし、永江さんじゃないんだ・・・ゴメン」
ーーーーはい!?
あとがきとなります、オルタです。
だいぶ間が空いてしまいました、申し訳ありません・・・
時間を図っていたらこの始末です。
今回はあんまりバトルシーンは書かないつもりでしたが、やっぱりこの子を出さないとと思い、思い切って書いてしまいました。
ルクスの今時点での強さというのは
ぶっちゃけかなり弱いです。
1年の中では強い方ですが、2年、3年と比べるともう本当弱いです。
ただ、1年と2〜3年自体の格差が大きいので、それを考慮するとまあまあ強い方・・・です。
これからのルクスの成長にご期待いただければと思います!
7話もよろしくお願いします!