表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖戦学院  作者: 雪兎折太
5/56

聖戦学院5話 強くなりたいという意志は

もはや前書きいらないんじゃないかって思っても、書いていく。

それが、オルタです!

やっとこさ5話です。ちょっと長くなりました。


モータル達が去った後の戦場で、ルクスはある人物と出会う。

その人物は、ルクスにある可能性を投げかける。

ルクスが選ぶ選択とは・・・?

里村先輩のフルネームも初登場の、

聖戦学院、第5話です!

「死体を墓場に埋葬する。動ける奴は手伝え」

「生存者の人達!怪我人優先で治していきます!」

あの戦いの後、事後処理担当と思われる教員たちがやってきた。

無感動に処理をする者、必死で生徒に寄り添う者、

死んだ彼らを悼む者、そして、

「ふん、何も出来ずに死んでいったか、役立たずめ」

彼らの遺志を、ゴミのように一蹴する者。

「ふ、ざ、ける、な・・・」

「あ?」

誰が発したのか、何処からともなく抗議の声が上がる。教師はゆっくりとその生徒の方に向き直り、

「ほれ」

「が、あアッ!?」

まるで子犬でも虐めるように、楽しげにみぞおちを蹴り飛ばした。

「役立たずを役立たずと言って何が悪い?ゴミはゴミだろう、あんな雑魚すら狩れずに死ぬとかありえないからな?」

その後、ぐるりと周りを見渡し、

「おーまーえーらーもーだーぞー?「政府」の道具共ー?さっさと修理されて、ぱっぱっとバケモンを殺してきてくださいよー?あ、殺されたらそん時は骨ぐらいは拾ってやるよ、ハハハハ!」

「お前・・・ぶっ殺してやる!」

我慢できなくなった3年生が、刀を抜き切り掛かる。

だが、

「ハッハァ!」

いとも簡単に受け流され、反撃のボディブローをもらい、倒れこんでしまった。

「ゴミ屑が俺様にたてついてんじゃねえよ・・・俺は「政府」の幹部なんだぜ?つまり偉いの。お前らの飼い主なんだよおーれーさーまーは!わかりまちゅかー?」

次々と先輩たちを侮辱するこいつに、僕は見覚えがあった。

滝宮学院教員、一ノ瀬潤。

担当は研究科。今年の4月に新しく就いた教員で、

凄腕の研究者だと、本人は自称しているが、それは研究科の功績を全て横取りしたためだと、悠が話していた。

正直あまり関わりたくないので、この人の授業は今まで一度も受けたことがない。

元々は「政府」の下層部から派遣されたらしいのだが、研究科を乗っ取り出世、現在はトップの秘書という大役に収まっている。


研究科とは、一般市民を守るため、モータルの情報を集め、解析することを専門とした学科である。

解析された情報は「政府」の上層部に転送され、その報酬として基本物資以外の特別な支援が要求できる。


彼の言葉に、皆の雰囲気が険悪になる。

一触即発の空気を生み出したその張本人は、

悪びれもせず言い放った。

「怒るなよ、負け犬にそんな権利ねえだろうが」

「一ノ瀬ェ・・・手前エエエエエエエエエエエ!!!!!!」

我慢の限界を迎え、怒号とともに殴りかかろうとした3年生の右手を、

「そこまでです」

不意に、後ろから伸びてきた手が止める。

「一ノ瀬先生、何故そこまで生徒をゴミ同然に扱えるのですか、彼らの死を悼もうとは思わないのですか?」

「思いませんねぇ進藤先生。いちいち犬に感情移入してる暇なんかありませんし?それよりももっと地位を上げて「政府」のお役に立てるように努力した方が得でしょうよ」

ヒヒヒッと気味の悪い笑い声をあげる一ノ瀬。

「それを本気で言っているのなら、やはりあなたは最低だ。生きてる価値などない!」

そう言いながら剣を抜いたのは、剣術科の教師である進藤一。

生徒想いの優しい先生、というイメージは全くなく、むしろ今までずっと他の生徒に常に厳しく、時には人格を否定するような言葉も発していたと、上級生達が話していたのを聞いたことがある。

それが、どうだ。

まさに正義。真剣を携え、怒りに燃えるその風貌は、まるで、勧善懲悪の体現者そのものではないか。

「初めて見た・・・進藤先生のあんな姿・・・」

一人の生徒が呆然と呟く。

「価値?価値ねえ!価値なんて誰が決めるんです?

自分の価値を決めるのは自分でしょう?どうしてあなたに決めてもらわなくてはッ」

突然一ノ瀬が短剣を取り出し、

「いけないんですかねぇ!?」

それを何十本にも分裂させ、その全てを進藤先生に

と思った次の瞬間、ナイフはすべて叩き落とされており、そして。

「遅い」

ただ一言、それだけ呟き、一閃。


さんっ


と、微かな音。

ちゃきんっ、と刀を鞘に収め、生徒に一礼。

あっという間に拍手の嵐が起こり、進藤先生は一瞬驚いたようで、ピクッと体を震わせ、続いて照れたように顔を俯けた。

「な、にが、き、さマアアアアアア!!!」

「動かない方がいい」

先ほどまでの余裕ぶった態度を一転させ、絶叫する一ノ瀬に対し、進藤先生は振り向かずに答える。

「今貴方が動けば、あなたはバラバラになり、死にます。ただ60秒、そのままでいて頂ければ、斬られるのはあなたの罪のみで済む」

「何を馬鹿なことを・・・ッ!これは・・・そういうことですか進藤先生ェェェェ!!」

何かに気づいた様子の一ノ瀬は、憤怒に唸りつつ、しかし意外にも渋々といった様子で進藤先生の言葉に従った。

「ええ、どうかそのままで。私も無益な殺生はごめんですので。お前たち!何をしている、さっさと自分のなすべきことをしろ!!」

あ、こっちが素なのか。

先ほどまでの様子を見ていた僕には、照れ隠しに生徒に指示するこの一時だけ、先生が微笑ましく見えたのであった。

しかし、校舎の外を見れば、そこには未だに先ほどの惨状の痕跡が広がっている。

ここで、みんな死んでしまった。

目を閉じれば、つい先ほどまでそこにいた、名前も知らない彼らの死の瞬間がはっきりと脳裏に浮かぶ。

「君が何をしていたのか、何のためにここにいるのかは、今は聞かない」

突然背後から進藤先生に話しかけられ、動揺する。

「だが、まずはよくぞ生き残ったと言わせてくれ。

辛かっただろう。その様子では、ここが「政府」の砦となっていることも、知ってしまったのだろうに」

さっきまでとは打って変わって優しげに話しかけてくる進藤先生に、僕は驚きを隠せずにいた。

しかし何より、その言葉でもうここが安全になったのだと認識できるようになった。

嗚呼、あの地獄は終わったのだと、

それを思うと、眼から雫が零れ落ちてくる。

「泣いている暇などない、などと言うのは野暮だな。君はあの惨状を目にし、そして生き残ったのだから」

「あ、あの、ありがとう、ございます」

途切れ途切れに言葉を紡ぎ、泣きながら礼を言う。

「だが、目にしたのならば、いずれあそこに向かわなくてならないということも、理解したはずだ」

「・・・はい」

涙をなんとか抑え、頷く。

「君は、強くなりたいか?」

この惨状を、止める側になりたくないかと、

先生は、僕に問うている。

「・・・あの、」

「大丈夫だ、急かすつもりはない」

苦笑しながら、僕の肩に手を乗せ、

「学科決定の期限日、8月末までに決めてくれ」

そう言った後、再び生徒たちの指揮に戻る先生を見ながら、僕は心の中で考えていた。

強くなりたい・・・でも、僕にできるのか?

あんな惨劇を、止められるようになるのか?


僕は、

僕は、

僕は、強くなれるのか?




進藤先生や、その他教員の正確な指揮のおかげで、

三日間で戦後の処理は潤滑に進み、終わった。

一ノ瀬は暫くの間、自分の部屋で謹慎処分になったという。

戦闘に参加した上級生482名のうち、死者15名、負傷者80名、内暫定的再起不能者26名という、客観的に見れば被害は抑えられた方なのだろう。

だが、僕は知っている。

あの場所で、死に際に絶望の表情を浮かべていた彼らを。

最期の言葉すら残せずに朽ちていった彼らの事を。

だから、僕はこの事実を深く受け止めた。

そしてーーー


「悠、里村先輩、お願いします、僕にあのことを、もっと詳しく教えてください」

「ルクス・・・」

「天道寺君・・・」

惨劇から三日、戦後処理が終わって、みんなが落ち着いた頃を見計らい、僕は悠と里村先輩に会いに二人の教室に行った。

あの日有耶無耶になってしまった、僕の知るべき全ての真実を知るために。

「今の世界がどうなっているのか、そもそもこの学院が何処にあるのか、まだ僕には知らないことが多すぎます。」

「ルクス、まさかお前前線の部隊に志願する気じゃないだろうな!?」

「そ、そんなんじゃないよ、ただ後ろでみんなが傷ついていくのを見ているだけなのも嫌なんだ」

「だから自分も前列で戦う、というわけか。だが何故それが真実を知る理由になる?」

動揺する悠を片手で落ち着かせ、真摯に僕に問うてくる里村先輩。

正直少し怖かったが、それでも僕はしっかり答える。

「僕はたとえ前線に立っても、みんな見たいに強くはない。だけど、それでもせめて何のために戦っているのか、それを知りたいんです」

「それがどんなに酷いものであってもか?」

ゆっくりと、力強く頷く僕に対し、二人は顔を見合わせ、そして

「いいだろう、私の知る限り全てのことを、君に教える」

「言っとくが、憶測の部分もあるからな。そこは気をつけてくれよ」

「うん、ありがとう、悠。有難うございます、里村先輩」

二人に感謝しお礼を言う。

「でもよ、俺たち二人じゃちょいとキツイか?」

「どういうことだ桜木、お前はともかく私は教え上手な方だと自負しているのだが」

突然悠がそんなことを言い出し、里村先輩が少々不服と言い返す。

「いやさ、きちんと説明するには、きちんとした準備がいるだろ?図書室には当然そんな資料ないしな、ここはやっぱあいつに会いに行った方が良くないか?」

提案する悠に対し、誰のことかわからないがとりあえず流れに逆らわない方がいいと思ったので黙っていると、

「おい、まさか、研究科に行くつもりか!?やめろ!やめてくれ!あそこにだけは行きたくない!!」

なんと、先輩が頭を抱え駄々をこねた。

マジか。

いや、マジか。

「ちょ、どうしたんですか里村先輩!?」

慌てる僕とは反対に、やれやれといった風に肩をすくめている悠が、呆れながら、いや半分楽しみながら言葉をかける。

「いやいや輝よ、何もそこまで拒否ることないだろう、お前の彼女なんだろ?あいつ」

「あんな!変態が!彼女であってたまるかたわけ!!」

「うっわ、自分を慕ってくれてる女子に対してそりゃねえんじゃねえの輝?」

黙れい!と珍しく平静さを失っている先輩、里村輝を驚愕とともに見つめる。あの人、彼女いたのか。

いやそれよりも、その彼女さんがどうやら僕の知りたい情報を握っているようだ。こうなれば僕も良心を一時捨て、先輩に頼むべきなのだろうが、捨てられまいとする良心が里村先輩を形作り必死に訴えてくる。

「かわいい後輩の頼みだろう?それにどのみちドラゴンの件であいつと戦ったやつは全員報告に行かなきゃいけねえんだ、これ以上バックれてたらそれこそ強制連行だぜ?」

「くっ、ぐぬ、ぐぬぬぬぬぬぬぬううううう・・・」

唸る里村先輩、弄る悠。

ていうかそんな大事な報告すっぽかしてたんですか里村先輩。

「・・・資料だけだ、資料と報告だけしてすぐに出るぞ!」

「そうこなくっちゃな!」

いつになく楽しそうな悠と、もうすっかりキャラ崩壊を起こしている里村先輩を見て、僕はその研究科の女性がどのような人なのか、興味が尽きずにいた。

「それじゃあ、行きましょう!7階の研究科室へ!」

僕達は、各々の心境を抱えながら、学院の知恵の宝庫と呼ばれる研究科室へ向かった。








学院某所

「ふむふむ、天道寺ルクス君ッスか。あの子がお気に入りの子ッスか、進藤先生?」

「お気に入り、かどうかはわからんが、他の奴らよりは心構えがなっている。あいつが生半可な気持ちでない限り、俺はあいつを強くしてやれる自信がある」

「ほほう?そんなにあの子すごいんッスか?見たところ、普通の男の子みたいッスけどねぇ」

「普通の少年さ、今はまだ、な」

「ふーん・・・「精霊」に選ばれたわけでもなく、選抜生のように抜きん出た戦闘能力があるわけでもなく、精神構造に特別な異常があるわけでもない、魔粒子の容量も平均そのもの。一体どこを見てそんな自信がもてるんスか?わけがわからないッスよ」

「あの惨劇をあの歳で見て、その上殺されそうにもなり、さらには自分たちが道具であることも知ってなお、彼は逃げなかった。それだけでも十分だと俺は思うがな」

「そういうもんなんスか?それならわっちも強くなれますかねえ?」

「お前は最初モータルに会った時ピーピー泣いてただろうが」

「それを思い出させないで欲しいッス!!」

「だがまあ、そうだな。あと一つ付け加えるとするならば」

「するならば?」

「・・・強くなりたいという意思、だろうな」

本の山が大量に並び立つ、学院のとある部屋で、

侍と学者が並び立ち、窓から一人の少年を見ている。

侍の目に映る彼、学者の目に映る彼、

どのように見えているのかは、分からない。

しかし、侍は信じている。

彼が、生半可な覚悟の他の生徒とは違い、強い意志を持って剣を振るう事を。

それでも、学者は信じられない。

彼が、普通の人間には無い何かを持っているということを。

それはきっと、誰にでも持つことができるもので、

それでも、誰にでも持つことはできないもの。

知りたい、彼が本当にそれを持っているのなら、

その輝きを、その力強さを、その気高さを。

そして、その可能性を。

「だったら見せてもらうッスよ、あの子の可能性を」

「見せてやるとも、あいつの覚悟を」

不敵に笑う二人は、手を取り合い、握手を交わす。

そして、

「失礼します!」

「邪魔するぜ」

「入るぞ」


未来への扉が、開かれる









そして、時を同じくしてーーーーー



「キャッハハハハハハハハハハ!!!」

「なんだ、どうしたのだ友よ」

「見つけたんだよ、面白そうな獲物を!ああ見たい!あいつらが死ぬところを見たい!殺されるところを、その最期の表情を!!」

「どれ、誰だ・・・なるほど、彼奴らか。確かに面白そうだな、フフフ・・・」

暗闇に、二つの声がなる。

一つは女、一つは男、

されど、影は一つ。

宵闇の中、女は叫ぶ。

高らかに、その感情の昂りと共に。


「サァて、楽しませてもらうぜ、滝宮学院の皆様方ァ・・・この「死神」様が、お前たちの命を狩りに行くからなァァァァァ!!!!!!」


新たな、闇が動く。

あとがきになります、オルタです。

ただのクズが冒頭に出てきました・・・そろそろクズキャラを出すべきかなって私の中の何かが囁いたので、出してみました。

書いていくうちに設定もどんどんついてきて・・・なんと「政府」のお偉いさんになってしまいました。こんなのがトップで大丈夫なのか世界。


さて、今回初登場の進藤先生ですが、

性格イケメンな先生をイメージしました。それっぽく書けてると良いのですが・・・

一ノ瀬先生に向けて放った技も、そのうち紹介すると思います。ちゃんとしたメカニズムがあるんですよ、アレ。


というわけで、今回はここまで、

そして、週別ユニークユーザが、なんと100人を突破しました!ありがとうございます!!

これからも精進いたしますので、どうか末長くよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ