聖戦学院 39話 動く者、動く者。
ホワイトレディが告げた新たなる脅威。
それはかつて世界を震撼させたと言う、「暁」と呼ばれる存在。
遠く離れた地で殺しあう二人の死神の元にも、その予兆が迫っていた。
「「暁」・・・それが、あの咆哮の主よ」
艦長室の円卓に座るホワイトレディは、まるでノストラダムスの破滅の予言でも謳うかのように告げた。
彼女は語る。
「暁」とは、即ち滅びであり。
「暁」とは、即ち絶望であり。
「暁」とは、即ち人類の終焉そのものであると。
「この間の殺人鬼のような生易しいものじゃないわ。無論、核みたいな普通の兵器でどうにかできる次元でもないの」
淡々と語るホワイトレディは、指先をクルクルと回して説明を続ける。
厳冬の中に吹くそよ風のような、何とも言い難い声が僕達の耳に入り込む。
「この世のありとあらゆる悪意と、命や魂を好んで喰らう、言わば神話の怪物が一つになったような・・・人類史の全てを汚し、否定するような、そんな化け物なの」
こうして聞いている僕は、勿論その「暁」というモータルを聞いたこともないし、見たこともない。
紫月さんもまた、情報の上でしか聞いたことが無かったようで、些か現実味がないといった面持ちだ。
美月に関しては僕と同じだが、その精霊、ツクヨミはどうやら思うところがあったのか、聞きたくないと言って席を外している。
だが、鯨井さんだけが。
その名を聞いて戦慄し、そして。
一瞬だけだったが、この世界を覆い尽くさんとするかのような、凄まじい怒気と殺気、威圧感を放った。
語り口からしておそらくまた「危険種」なのであろうそれを、銀の少女はただ冷静な表情を浮かべて、しかし感情を込めた声で語る。
まるで、自分が見てきたかのように。
「ねえ、えっと・・・ホワイトレディさん?」
「レディで良いわよ美月ちゃん。悠にもそう言ってるけど、呼んでもらえなくて」
僕とレインを襲った時とは別人のような、にこやかな笑顔で美月に言うレディ。
「じゃあ、レディさん。貴女、まるで見てきたかのように言うけれど、もしかして・・・」
それは、僕だけでなく誰もが思っていたことだったらしい。
鯨井さんも、紫月さんも、じっと彼女の言葉を、一言も聞き逃すものかと待ち構えている。
だがそんな雰囲気を知ってか知らずか、レディはあっけらかんとその言葉を口にした。
「ええ、見てきたわよ?勿論」
ざわっ、と空気がどよめく。
だが、鯨井さんが聞いたのは、僕達とは違う思惑からの問いだった。
「待て、待ってくれ。「暁」が過去に現れたのは、大変革からおよそ一年後だ。奴は一年の時を経て日本で討伐されたのだ」
「ええ、その通りよ。なにせ直接見たもの」
何もおかしなことはないと少女は言うが、そこに鯨井さんがさらに詰問した。
「・・・計算が合わない。君は一応滝宮の二年生だろう?であれば君は、「暁」の討伐には駆り出されなかったはずだ」
何故なら、滝宮が出来て間もない頃。
まだ三年生が二桁しか居なかった頃。
当時一年生ですらなかったはずの「彼女」が、そんな化け物相手に剣を取らされるはずがないのだから。
そもそもいつの間に彼女のことを調べたのか、手際の良い海上自衛隊のトップに、レディは冷ややかな視線を向けた。
「いつ、あたしが貴方に歳を教えたのかしら?」
「む・・・」
言葉を詰まらせる鯨井さんに、やや鋭さを増した冷たい声でレディがさらに言う。
「女性のプライバシーに簡単に踏み込むなんて最低ね、貴方それでも海将様?」
「うぐ、む・・・」
思いもよらない返しに、鯨井さんがたじろぐが、代わりに紫月さんが立ち上がって言う。
「この船室に無言で入って来た貴女の方が、些か礼儀知らずだと、私は思いますが?」
「あら、言うじゃない。親父趣味のむっつり年増女が」
女の戦いが始まろうとしたまさにその時、大きな咳払いが場を落ち着かせた。
「お前達なあ・・・今何の話をしているのか分かっているのか?くだらない言い争いよりも、この先のことを考えろ」
フンッと鼻息を上げて、気配を再び消す海龍。
姿はどこにもないが、はっきりとした存在の歴史は、この部屋にしっかりと残った。
「あれ、リヴァイアサン・・・だよね?」
「どうせ隠れてるだけでしょ、あんな馬鹿でかいのがいたらこの船が沈むわ」
もう喧嘩はやめたのか、素知らぬ顔で席に着く紫月さんを細目に見ながら、どかっと音を立てて尻をつけるレディ。
「・・・何よ」
「い、いや、なんでも・・・」
僕の視線に気づいたのか、じとーっとこちらを見るレディは、しかし大して言いたいこともないのか口を閉じた。
「ま、まあ、なんだ。まずは学院に帰ろうじゃないか」
大手を広げて話をまとめようとする鯨井さんに、反対するものは誰もいなかった。
ここで議論していても仕方がない。
学院の皆、果ては「政府」とも連携を取らないと、「暁」は倒せない。
人類の敵を相手にするには、人類そのものでかからねばならない。
それは、誰よりも先にホワイトレディが告げた、変えようのない事実だった。
遠く、遠く離れた地。
草木生い茂る、森に囲まれた緑の地。
「・・・ん?」
リヒトと名乗った少年が、無数の鎖を用いて、嵐のようなレインの斬撃を捌きながら、迷い込んだ気配に気を取られる。
「なんだよ!?殺し合いの最中に余所見たあいい根性してるじゃねえか!」
喝を入れるように大きく踏み込んで放たれた一撃を、リヒトは縄跳び感覚で飛び越えて、彼女から余分なまでに距離を取る。
「チッ、ウゼェな」
「・・・嬢ちゃんも気付いたか」
レインの舌打ちは、リヒトが大きく距離をとったことに対してではない。
この場にいてはいけない気配。
この世に現れてはいけない存在。
確かに聞こえた咆哮の主。
それに近しい何かの到来。
それを彼女が、魔粒子によって研ぎ澄まされた感覚器官で、敏感に感じ取ったからである。
「・・・姉様」
「分かってる。どうやらこんなくだらねえ事してる場合じゃ無くなったみてえだな」
お互いに殺気を収め、各々の得物を下げながら、二人のブラッドレインは歩み寄る。
彼女達にとっても、「暁」は打ち倒すべき悪であり、敵であり・・・悲願であった。
「姉様、あれを」
不意に足を止め、レインが警戒するよりも早くリヒトが指を遠くに向ける。
「・・・おいリヒト。騙し討ちのつもりなら、そいつはあたしを舐めてるって事でいいんだよな?」
「騙し討ちのつもりじゃなかったら、舐めてないって事でしょ?姉様」
凄みを利かせるレインに、真っ直ぐに言い返すリヒト。
不意打ちに反応するべく神経を研ぎ澄ませ、そのまま少年の指差す方へと目線を向けて・・・
「なっ!?」
それは、かつて少女が、滝宮学院を襲撃する際に殺めたはずの竜。
西洋神話などにおいて、悪魔や力の象徴として君臨する、怪物の王。
「おい・・・おいおいおい!まさか、まさかだよな!?あれが次のやつだっていうのか!?」
あからさまに動揺し声を荒げる少女を、リヒトは困惑しつつもなだめる。
「今はそんなこと言ってる場合じゃないよ姉様。あいつが目覚める前に止めないと」
言いながら再び爪を構えなおし、少女を飛び越えて竜の元へ。
「お、おい!待てよ!」
少女も後を追うべく、鉄鎖を虚空に放ち、その身を夜空へと躍らせた。
月光が照らすのは、四〜五メートルはあろうかという巨体。
草木を掻き分け真っ直ぐに進むその様は、さながら大地の支配者。
この世のあらゆるモータルと比べても、明らかに全部位が異常な発達を遂げ、元の生物の種すら判別不可能なまでに変貌した、破壊の化身。
どのような飾り名を付けようとも、それにふさわしき真名はただ一つ。
「ドラゴン」
少年か、少女が、あるいは彼らの精霊か。
その声は、その怪物を呼ぶに最もふさわしい名を、明確に告げていた。
「姉様、あいつ、弱ってるみたいだね」
「・・・当然だ。あたしが殺したはずなんだ。この手で」
あのトカゲも、蛇も、つまらねえ。
かつて自分が、ここにはいない少年とその仲間に言い放った言葉を思い出し、それを裏付ける記憶もまた脳裏に浮かぶ。
学院に現れたクレアの襲撃を防ぐため、自らが襲撃者となりに行った時のこと。
滝宮から退却をしていたモータルの軍勢、その王たる竜を自分は確かにこの手で殺めたのだ。
その時の手応えも、血の量も、怯え逃げ惑う他のモータルも、全て覚えている。
「・・・殺し損ねた筈はねえ」
その証拠に、ほら。
全身に付けられたおびただしい斬撃の痕跡から、肉と骨がグロテスクな身を覗かせているではないか。
「まさか蘇ったとでも?死者蘇生なんて、こんな世界でも絶対にあり得ないよ?」
名付けるなら、ドラゴンゾンビとでも呼ぶのであろうその様を見て、リヒトが首を振りながらも再び獰猛な獣を思わせる構えを取る。
「研究自体は今も誰かがやってるみたいだぜ?それに・・・多分あいつはそんなんじゃねえ」
吐き捨てるように言って、レインは大剣、ダインスレイヴを高く構える。
「なんにせよ。死んだ奴は土の中に還るべきだ。未練タラタラで現世で彷徨うなんざ、「死神」であるあたしが許さねえ!」
音もなく跳躍し、振りかぶった大剣の刃を、渾身の力を込めて叩き付ける。
骨が軋むような耳障りな音が響き、辺りに潜んでいた小型モータルが、何事かと耳立てて様子を伺い始めた。
「こいつ・・・っ!?」
「姉様伏せて!」
声に従って身を屈めると、レインの頭上を数本の銀の弾丸が飛び去った。
正確には、その軌跡すらもはっきりと残して。
「グレイプニールッ!!」
呼びかけるようにリヒトが叫ぶと、四つん這いになった彼の背から、再び数本の、先端に短く鋭利な刀身の付いた銀鎖が現れる。
先刻放たれた銀の軌跡を追うように、新たな鎖が槍のように竜の元へと吸い込まれる。
そして、甲高い音を立てて、一本残らず弾かれた。
「そんなっ!?・・・くそっ!そういうことかっ!!」
僅かに狼狽えたが、すぐに墜落した鎖を、手を使わずに全て引き戻す。
「だああああッ!!」
鎖と入れ替わるように、雄叫びとともに再びレインが走り出す。
その身に宿す破壊の魔粒子の力を、ダインスレイヴに注ぎ込む。
黒き魔粒子は、幽鬼を思わせる漆黒の鎌となり、彼女の異名をその身で告げる。
そのまま、大きく振りかぶり、横に一閃。
暗闇に光る暗黒の残光。
異質な光景を生み出してはいたが、鎌の担い手は構わず攻撃の手を緩めない。
一度、二度、三度、四度。
一撃一撃が必殺の威力を持つ鎌を、何度も何度も打ち付ける。
しかし、ドラゴンゾンビの肉体、あるいはその周囲を覆う何かは、それを通さない。
だが少女もまた諦めない。
死者を土に送るために、災厄の芽を摘み取るために、その力を振るい続ける。
「負けていられないね。フェンリルッ!!」
リヒトもまた、己の契約者たる精霊の名を叫ぶ。
気高き狼を思わせるいぶし銀の淡い光が、彼の身体にまとわりつくように取り囲み、新たな力を授けんとする。
頭に、手に、足に、人ならざる超越者の断片が形を得て、リヒトの身体をある獣の姿へと近づける。
それは、狼。
鋭利な爪、地を砕く脚、畏怖をもたらすその顔すらも。
リヒトが変質したのは、人狼でも、狼男でもない。
半人半狼。
人としての姿を保ちながら、魔狼フェンリルの力を宿したもの。
災禍を振りまく魔獣の顕現。
精霊フェンリル。
北欧神話に現れる、主神を喰らいし荒ぶる魔獣の名を冠した、リヒテルスの精霊である。
「ルオアアアアアアアアアッ!!」
遠吠えにも雄叫びにも似た声を轟かせ、リヒトが勢いよく空へ飛ぶ。
月光を浴びた神狼は、一本の木に目をつけて、銀鎖の一本を放つ。
レインと同じように、突き刺さった鎖を起点として、その身を木の元へと引き戻す。
ちょうど蜘蛛のように木に張り付いて、壁に足をつけてゆっくりと力を込める。
「ウゥ・・・」
もはやその言動は完全に魔狼そのものだ。
爪を立て、足を踏みしめ、仕掛けるべき一瞬を待つ。
大鎌の乱舞を繰り広げていたレインが、僅かにその動きに乱れが生じたその時。
リヒトが飛び出した。
「ゥウァガッ!!」
白い残像を残して、弾丸並みのスピードで飛び出したリヒトが、その爪をドラゴンゾンビの肉体へと向ける。
すれ違いざまの一撃は、しかし竜の肉を傷つけず、骨を絶てない。
だが、すぐに次の木へと張り付き、今度は跳ね返ったかのようにすぐさま飛び出した。
すれ違い、一撃、着木、飛翔。
その速さはまさに神速。
濃銀のレーザーのごとき爪撃が、何度も何度も屍竜の周りを覆う不可視の盾を、抉り、引き裂き、貫く。
負けじとレインもまた鎌を振り回し、その防壁をこじ開けようと死の乱閃を乱れ打つ。
それはまるで、黒い魔剣と白い弾丸が彩る、戦地というキャンバスに描かれたモノクロのダンス・マカーブル。
「・・・姉様」
「ああ、分かってる」
縦横無尽にピンボールの玉のごとく跳ね回るリヒトが、レインとすれ違う刹那に声をかける。
彼の意図を察したレインが、大きな鎌を振り上げ、地面に巨大な穴を穿つような勢いで振り下ろす。
刃を深く地に埋めて、ダインスレイヴは宙で止まる。
「こっからは、どうやら俺も働かねえとダメみたいだな」
レインの左腕からこぼれた声は、言葉の割に意気揚々とその身をくねらせていた。
「ああ、頼むぜヨルムンガンド」
「お願い、グレイプニール」
リヒトもまた、自らの精霊に何かを要請したようで、呼びかけるように鎖に声をかけていた。
互いにコクリと頷いて、そして。
ヨルムンガンドは、ダインスレイヴの柄へと噛みつき。
グレイプニールは、ひとまとまりになって白銀の束へとその身を変える。
「おおおおおおおおおらあああああああああああああああッ!!」
「せいやあああああああああああああああああああああッ!!」
二人の凄まじい気合の掛け声が、地面をも揺らす勢いであたりに轟く。
レインの左腕から伸びる蛇鎖は、ダインスレイヴを捉えたままその身を躍らせ。
リヒトの背から伸びる銀鎖の束は、大量の魔粒子を纏い雄々しく煌く。
「ぶっ殺す!!!!」
まるでフレイルのように、鉄鎖に捉えられたダインスレイヴが漆黒と碧黒の軌跡を描いて死の舞踏を繰り広げる。
ヨルムンガンドごと叩きつけられるその魔剣は、大鎌の時とは倍以上の魔粒子を孕み、その斬れ味と威力を大きく増していた。
その余波であたりの木が軋み、数本が音を立てて崩れ落ちる。
「裂き殺す!!!!」
銀鎖は一個の狼となったかのように、一度大きく吠えるように蠢いた後、再び無数の鎖に分裂した。
その輝きや強度は、先ほどのものとは比べ物にならないほど上がっている。
一本一本が意思を持ったかのように地を貫き、屍の竜を地に縛り付けるため、その足元から飛び出して、結界をも貫き穿ち、繫ぎ止める。
「やっぱり。結界が破れた・・・だったら!」
少年自身も赴いて、彼の魔法であろう光を爪に宿し、離れているにもかかわらずその腕を大きく振るう。
当たるはずのない一撃が、しかしまるで間近で放たれたかのような鋭さと威力で、ドラゴンゾンビの防壁に傷をつける。
烈風のような爪撃の嵐が、空間を超えて竜の身体を狙って叩きつけられる。
二つの破壊の暴風雨。
血の雨を降らす力の渦は、しかし屍に傷一つ負わせることはなかった。
「・・・無駄みたいだな」
何かを悟ったレインが鉄鎖の蛇を引き戻し、大剣に込めた黒いオーラを全て霧散させた。
「ねえ、姉様。こいつおかしいよ?モータルが、しかも屍同然なのに、こんな精密な結界を張れるなんて」
苛立ちを隠せないリヒトが、先ほどよりも怒りのこもった声でレインに言う。
「殺意のこもった攻撃だけをシャットアウトする結界だよ・・・仕掛けたやつ、殺しちゃって良いよね?」
「顔も、名前も、どこにいるかも分からねえのにどうやって殺すんだよ」
殺意を露わにするリヒトへ無表情で言うレインだが、その手に戻したダインスレイヴの柄を強く握りしめ、無造作に軽く地面を薙ぐ。
「いくら「政府」でも「暁」の復活を望んでいるとは思えねえな。となると・・・誰の仕業だ?」
「魔粒子配列が人為的なやつだもん。人間だよ」
何気なく言うリヒトだが、それは即ち魔法の構成を全て読み取ったということだ。
それ自体は別段難しいことではないのだが、そこから先、誰がどのように組み立てたのか、その過程を見るのは魔粒子学者でも骨が折れる。
「・・・そういえばお前は「理解」できるんだったな。魔法の仕組みを」
リヒテルスが先ほど結界を破れたのも、おそらく無意識のうちに仕組みを理解してのことだろう。
過去を懐かしむように口を開き、次いでその表情を険しいものへと変える。
「てことはなんだ、バケモノの信奉者でもいるってのか?」
「・・・そんなの聞いたことないけど」
目を閉じて、何かを思案するようなそぶりを見せたが、すぐに表情に笑みが浮かぶ。
「別にあり得ない話じゃないね。人理の歴史が退行しただけだよ。昔は自らの力が及ばない肉食動物を神と崇め、生贄を捧げた部族もいたぐらいだよ?」
おどけたように言うリヒトをレインは鋭く睨み、もう話すことはないと踵を返した。
「あれ?姉様、帰るの?」
「お前と話していたら殺したくなる」
吐き捨てるように言い残して、レインは夜空に身を躍らせた。
少年の狂気の、しかし寂しげな目線を受けながら。
「・・・はあ」
憂いを孕んだため息を吐いて、少年は夜空を見上げる。
暫くの間、流れる夜風に身を委ね、冷やかな感触を肌に受け止めて。
不意に、その手をあらぬ方へと向ける。
音もなく飛び出した鎖が、暗闇の中に潜む人影を貫いた。
「あぐっ!?・・・き、貴様っ、何故・・・」
「ごめんなさい、姉様」
とさり、と倒れるその人間を冷淡に見やり、リヒトは小さく悲しげに微笑んだ。
「嘘、吐いちゃいました」
「あ、あああっ、アアアアアアアーーーーーーー」
血が、血が、血が。
痛みと血と肉が自らの身体から流れて流れて溢れて。
「アカーーーーー」
そこで、男の意識は途切れる。
魔狼の爪は、人の肉を引き裂き、物言わぬ凄惨な骸へと変えた。
「海上幕僚長が艦長ってあり得んよ」
「マ?」
「ていうか護衛艦とか無いの?そもそも戦艦って?あと自衛隊を軍っていうのはちょっと・・・」
「うわああああああああああ(ピチューン」
悲劇のオルタです。
えー、海上編は終わりましたが。
ずっごいがぎなおじだぃ・・・
そうなんです。自衛隊の知識が殆どなく、かつ迂闊にネット使えない状況にあった為、加えて私のイメージがあまりにも何とかの錬金術師寄りになっていた為、設定が大変なことになりました。
正直に言ってこれはひどい。クレームつけられても文句言えないレベルでした。
さて、そこで私がとった作戦。
「もうさ、番外編で説明しちゃおう!」
まさにゲスの極み。
ということで、次回と恐らくその次は、ルクス君達は少しお休み。
代わりに35話にて後付け表現がされた、護衛艦の人間達の物語を投稿いたします。
予定日は3/1。
データ通信量がやばいんです。
さて、それではこの辺で。
なんとか挽回できたらいいなと、オルタでした。
・・・本当なんとかしなければorz




