聖戦学院1話 プロローグ
初めまして、雪兎折太と申します。
この度は、聖戦学院 のページにアクセスしていただき、誠にありがとうございまする。
小説を投稿するのは初めてなのですが、
皆様に少しでも喜んでいただけるよう精進したいと思います。
この 聖戦学院 は、
現実世界がある日突然異世界のような場所になってしまう
というコンセプトで書いています(そのまんま!)
なので普通に科学も電気もありますし、
あえて名前は出しませんが、携帯ゲーム機やオンラインゲームなどもあります。勿論。
日常から非日常へと移った世界で、
ルクスくんたちがどういう道を歩むのか。
また、世界はなぜ変わってしまったのか。
興味を持っていただけたら、うれしいです。
素人の駄作ではありますが、
聖戦学院、どうか一目よろしくお願いします!
風は吹く、雲は流れる。
太陽は昇り、月は落ち。
水は流れ、空は回り。
世界は、変わることなく永遠に続くだろう
いつも通りの風景、いつも通りの喧騒。
少年は青春に励み、壮年は仕事に励む。
家族の団欒、恋人との時間、愛する人との暮らし。
幸せとは、当たり前の日々の繰り返しなのだと、
人は唄う。
鉄道の車輪の音、車のエンジンの音、
犬の声、猫の声、虫の声、鳥の声、
街灯は道を照らし、水道は水を繋ぐ。
幸せとは、文明の発達の上に成り立つ我々の暮らしだと、人は笑う。
理不尽な暴虐、不平等な裁定、不公平な判断。
倒れる体に心を委ね、その終わりを受け入れる者。
それを眺め、涙を流す者。
幸せとは我々の不幸に成り立つ強者の特権だと、
人は嘆く。
唄い、笑い、嘆き、それでも世界は回るだろう。
嗚呼、なんと退屈な世界なのか。
それならば、それならば、それならば。
いっそ狂わせてしまおうではないか。
賽は投げられた。
歯車はあらぬ方向へと回りだし、
晩餐は狂宴へと変わりゆく。
世界は、この瞬間生まれ変わるのである。
西暦2016年12月31日、
突如、地球全土を大きな揺れが襲った。
その揺れに共鳴するかのように、世界各地で大規模な自然災害が多発。
火山の大噴火、大河の大洪水、スーパーセル。
しかし、死者はおろか地球にはその痕跡は一つとして残らなかった。
後に、この揺れは 界震 と呼ばれることになる。
西暦2017年1月5日、
日本で多頭の蛇が発見されたとの報告があった。
それを皮切りに、世界で次々と怪奇現象が多発。
野良犬が凶暴化し、炎を吐きながら人を喰らった、鳥が急に氷を纏い襲ってきたなど、常識では考えられないことが起きていた。
西暦2017年1月12日、
この異常事態に対し、世界各国のトップは人類統括組織、「政府」を立ち上げる。
「政府」はこれに対し大規模な調査を決行。世界各地から調査員を派遣し、地球の生態系を再確認した。
その結果判明したのは、大幅な生態系の変化。
かつての生命はほぼ絶滅し、まさに怪物としか言えないものが、地球に生きる生命としてそこにいた。
西暦2017年1月15日、
アメリカで未知の粒子が発見された。
その粒子は人々に電気とは比べ物にならないほどの大きな恩恵をもたらすものだった。
「政府」はこれを、「魔粒子」と命名。
魔粒子は人間にとってまさしく魔法のような存在となった。
西暦2017年1月30日、
「政府」は世界の理の変革を宣言した。
「・・・っていうのが、大変革のあらましさ。」
「最初の変なポエムはなんだったんだよ。」
「もちろん俺の自作ポエム・・・と言いたいところだが、あれは界震の震源地に刻まれていたんだとさ。界震の犯人が書いた、なんて説もある。」
「なんだそりゃ・・・」
西暦2020年
大変革宣言が出てから、3年。
「政府」の立ち上げた世界平和化政策によって、世界全土に徴兵制が敷かれた。
もちろん、僕の暮らすこの日本も例外ではなかった。
と言ってもその実態は、学校で戦闘訓練を行い、「政府」に選ばれた人間だけが直属の軍に入れるといったもので、要するにドラフトだ。
軍に入りたくなければわざと手を抜けばいいわけで、それに関して「政府」は何のペナルティも科さないと公言している。
なぜ軍が必要になっているのか、それは、世界各地の生態系が、異常なまでに変化してしまったからである。
「そもそもさ、なんで界震が起きてからすぐに「政府」が出来たんだよ。いくらなんでも早すぎやしない?」
「上のお偉いさんがあらかじめ予想してたらしいぜ?まあどの国のお偉いさんかは知らねえけど。」
「どういう思考回路なら、あんなことを予想できるんだよ・・・」
「未来視でも出来たんじゃねえの?」
「・・・まさか。」
先ほどから僕に超近代の授業をしてくれているこの青年は、桜木悠。滝宮学院の2年生である。
入学して間もない頃、一人だった僕に真っ先に声をかけてきたお人好しだ。今でもこうして世間知らずの僕に世話を焼きに来ている。
「てかルクス、お前も早いとこ、学部決めたほうがいいぜ?人気のところはすぐ定員だからな。」
「わかってるよ。・・・けど僕、何にもできないし。」
「何にも出来ない人間なんか今更いねえっての!1年のうちによく考えておかないと、後々後悔するんだぞ?俺みたいに。」
ルクス、天道寺ルクス。それが僕の名前。
今年滝宮学院に入学した1年生だ。
天道寺家の一人息子、といっても別に名家でもなんでもなく、ごく普通・・・少なくとも僕はそう思っている・・・の人間である。
別段得意なこともなく、親に流されるまま、この滝宮学院に入ったのだ。
滝宮学院は、「政府」直属の教育機関として、東京都内某所に建てられた高等学校だ。
勿論、先述の通り普通の学校ではなく、いわゆる士官学校というやつだ。
しかし字面のイメージに反して校内の雰囲気は普通の学校とほとんど変わらない。だが唯一決定的に違うところがある。
「俺みたいに、魔法適性全っ然ないのに魔術科になんてなってみろ?最悪だぞ、一生落ちこぼれだぞ!?」
「じゃあなんで入ったの魔術科。」
「鉛筆コロン様の結果だから間違いないと思ってな!」
「よく考えないからだよ・・・」
滝宮学院には十数種類の学科があり、それぞれ必要とされる素質が違うのだ。特に悠が受けた魔術科は、魔法適性という魔粒子を扱う素質がいる。
適性といってもそんな大したものではなく、要は器用不器用、努力の問題だ。先天性なものなど、誤差の範囲でしかないとされている。
悠も、適性無しだの落ちこぼれだのとは言っているが、実は学年でもトップに近い成績を毎日の努力で保っている。本人は認めたがらないが、これこそが本当の意味での適性なのだと、僕は思う。
当然魔術科以外にも、剣術科、弓術科、体術科・・・様々な学科がある。一応文芸科目の学科もあるが、今の世界では正直マイナーと言わざるをえない。
「でもやっぱりわからないな、なんでわざわざ「政府」は学生から徴兵しようとするの?世界各国から人材を集めて作ったんだから当然それだけ数もあるだろうし、わざわざ子供を取ることはないんじゃない?」
何気ない僕の問いに、悠は呆れ半分真剣半分といった、どうにも微妙な表情でこちらを見る。
「よく小説とかであるじゃないか、子供の方が潜在能力が高いとかなんとか、あれだよ。」
「でも元々は野良犬とか野鳥なんだろ?軍どころか猟師にでも任せておけば十分なんじゃ?」
「・・・じきにわかるさ。」
そう呟いた悠の表情は、さっきまでと違ってとても暗く、重いものだった。
あとがきになります、オルタです。
聖戦学院1話、ここまでお読みいただきまことにありがとうございます!
拙い点などありましたら是非お教えくださいませ・・・
さて、1話は実質のプロローグになっております。
ルクスくんも説明に疲れたと思います・・・2話ではちゃんと(たぶん)動きますのでご安心を!
ルクスくん本人のことも、だんだんと明かされる予定です。
ちなみに悠先輩ですが、なぜ1年であるルクスに話しかけに行ったか。これはただ単に先輩がお人好しなだけです。
ふらっと歩いてたらぼっちのルクスくんを見つけた、ぐらいな感じでしょうか。
てなわけで、そこに深い意味はありません!
2話からは滝宮学院の細かいところや、ルクスくんと悠先輩が最後に話していた謎の答えがわかるかも・・・いやわからないかも。
もしよろしければ、2話もよろしくお願いします!