表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/29

学院・初等部編 前編5:集いし『同室者』と混沌とせし『室内』(クロウ視点)


今回はクロウ視点。




「……」


 もう、俺はこの部屋から出ていっても許されるはずだと、俺は思うのだが――……


「……」


 にこにこと笑みを浮かべて会話をするイアンとセイロンに、顔が引きつるのが止められない俺。そして、どこかイライラした様子を隠しきれていないエルヴィン。まさにカオス。


 というのも、ティーリアの冗談混じりな発言が事実となってしまった男子寮では、不在の部屋長代理とばかりに、一つ上のイアンの発言もあり、先に自己紹介を済ませておくことになったのだが、この面々で初対面なのはイアンとエルヴィンのみなので、二人が挨拶するだけで終わってしまった。

 ただ、そこまでは良かったのだ。


「そういえば、みんなクラスはどうなったの?」

「ああ、みんな一緒だよ。ティーとルリエも一緒」


 何気ないイアンの問いに、セイロンがそう返す。もちろん、そこに何らかの意図があったわけではないとは思う。


「そっか。みんな一緒か」


 何が楽しいのか、ふふ、と微笑むイアンに、何となく「あいつ、ヤバいのに好かれたな」とティーリアに対して思いつつ、俺も「こっちに来る前に、イアン様も部屋で一緒だったら、ってリアたちと話をしていたんですが、事実になりましたねー」と会話に加われば、「そうなの?」と返される。


「そうなんですよ。本人は冗談のつもりだったみたいですが、実際に……」

「なっちゃってるよねぇ」


 もう、何かの陰謀だと思いたい。

 神様。何で、攻略対象(下級生組)を固めたの。

 ティーリアだったら、この状況をどうしたのだろうか? この事を知ったら、遠い目をするんだろうな。きっと。


「まあ、挨拶は明日になれば出来るから、それまではのんびりといこうか」

「明日……?」


 セイロンが不思議そうに首を傾げるが、明日何があるのか忘れたのか、こいつは。


「新入生歓迎会だよ。先生が説明してただろうが」


 セイロンにそう説明するが、正直、初等部の新入生歓迎会って、何をするのかは分からない。

 ただこれ、全学年の参加予定者はエスコート役がいらないことにはなっているのだが、双方で納得している場合のみは認められるんだとか。

 ちなみに、兄姉(きょうだい)が先に入学していた場合は、顔合わせも兼ねて上の者と一緒に行動するんだとか。攻略対象三人に囲まれるとか、あいつ大丈夫か。


「まあ、ぶっちゃけ子供用の社交界みたいなものだからね。下手に対応すると、目を付けられるよ。中には下の者には何しても良いって思ってる奴らもいるから」

「……ふーん」

「……」


 イアン、それは笑顔で言うことじゃないし、セイロンはセイロンでエルヴィンに目を向けるし、エルヴィンはエルヴィンで無言で視線を返している。


「まあ、いざとなればティーが言い返してくれるよ」

「妹任せなのは、兄としてどうなんだ?」


 ティーリアが苦労する様子しか見えないぞ。


「え、だって、アール兄様やサム姉様だって居るし、僕まで気を張る必要は無いでしょ?」


 ティーリアたちが苦労するのが決定した瞬間だった。


「気にしすぎも、しなさすぎも良くないとは思うけど、まあ、新しい友達を作るつもりでいれば良いんじゃないかな?」

「……リアの忠告を覚えていらっしゃいますか? イアン様」


 お前も一緒に言われたはずだぞ。ティーリアが居ないときに、セイロンが惚気たら、居合わせたどちらかがどうにかするのだと。

 たとえ、話や考えが飛躍していると言われるかもしれなくても、その可能性があるだけに否定できないのが辛い。


「もちろん。覚えてるよ」

「……何の話だ」


 話を知らないらしいエルヴィンが聞いてくるが、本人の目の前で説明する勇気はない。


「後で説明する」


 納得出来なさそうな顔をされても困るんだが、こればかりは仕方がない。


「それにしても、部屋長の人、遅いね」

「あー……、多分どこかで捕まってるんじゃないかな?」


 セイロンの言葉にイアンが返すが、確かに少しばかり遅い気がする。

 部屋の時計で時間を確認するが、下手すると夕食を食べ損ねそうだ。学院に来て、最初の食事なのに。


「僕たちだけで、先に食堂に行ったら駄目かな?」


 待てども待てども来ないから、どうしたものかと窓の外に目を向ける。外はというと、暗くなり始めてました。


「あと五分だけ待って、それでも来ないようなら、僕たちだけで食堂に行こうか」


 運が良いと言えば良いのか、この部屋の最上級生である部屋長はいないが、一応先輩であるイアンは居るので、食堂まで迷うこともなければ、利用方法が分からず、おろおろすることも無いはずだ。


 その後、結局いつまで経っても部屋長が来ることはなく、俺たちはイアンの案内の元、食堂へ向かうこととなり、その利用方法も教えられることとなるのだが――……


「ちょっ、ほら部屋に(もど)――って、マリベル。そっちは職員寮だから行かない! ああ、そっちは中庭!」


 途中で見かけたティーリア(たち)を見て、あいつは部屋でも苦労するのかと思わずにはいられず、そっと手を合わせておいた。

 向こうはこっちに気づいてはいないみたいだったが、セイロンに「声を掛けに行かないのか?」と尋ねれば、「今行くと睨まれそうだから止めとく」と返された。

 多分、それで正解だろうから、俺も声を掛けるのは止めておくことにした。俺も睨まれたくはない。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ