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幼少期10:『ピクニック』に行きましょうⅠ


 何で、この座り方になっているんでしょうか?


 そもそも、「入学準備に必要なものも買い終えたことだし、ピクニックでも行きましょうか」と、唐突にお母様が言い出したのが始まりなのだが。

 その場所に向かうまでの馬車の中にて、まさかこん窮屈な思いをすることになるとは。


 正面にはニコニコと笑みを浮かべっぱなしの我が双子の兄・セイロンが居り、その隣に同じように笑みを浮かべているレティーリア。セイロンの隣にはお父様が居て、その正面にはお母様が居る。

 その隣が私であり、さらにその隣はーー


「そんなに連れ出されたのが嫌だったの? レヴィン」


 そう、義弟となったレヴィンである。

 私としては、この座る位置について、セイロンとレティーリアに嵌められたような気もするが、二人の企みがそう簡単に上手く行くはずがない。

 何とか会話をと思ったのか、ずっと外を見ているレヴィンにセイロンが話し掛けるが、彼からの返事はないため、がっくりと肩を落としていた。

 私も私で、(今更感があるが)謝れるような空気じゃないから、口を開けない。


「……席、変える?」


 そう言ってみれば、セイロンとレティーリアが首を横に振る。


「いえいえ。私たちは大丈夫ですから」

「それに、走ってる最中に席を立つのは危ないしね」


 レティーリアはともかく、セイロンのは正論なので仕方がないが……何だろう。(てい)よく拒否られた気がする(あと、さっきのはダジャレではない)。

 ちらりとレヴィンの方を見てみれば、相変わらず外を見ていた。





「うう~ん」


 馬車から降りて、伸びをする。

 ずっと同じ姿勢で座っていたから、疲れたの何のってね。

 でも、まあーー


「うわぁあ……」


 目の前に広がる一面の花畑が見られたから良いけど。

 セイロンもレティーリアも嬉しそうだし。


「ほら、みんな。遊んで来なさい」

「ただし、昼には戻ってくるんだぞ?」


 両親の許可も出たので、花畑へと歩き出す。


 それにしても、何か見覚えがあるんだよなぁ。

 記憶が戻る前のティーリアが来たことがあるとかじゃなくて、うーん……ゲームにあったかな?


「ティア姉様、一緒に花冠でも作りましょう!」

「そうだねぇ」


 花冠なんて、いつ振りだろうか。

 前世の幼少期以来となると、かなりブランクがあるから上手く作れるかどうかは分からないから、やや不安ではあるが、レティーリアが嬉しそうなので、一緒に作ってみるのも良いだろう。


「どうせなら、首飾りも欲しいよね」

「首飾りですか?」


 二人して花冠を作りながら、そう話す。


「花の色的に、レティには合いそうだから」

「そうですか? ティア姉様の方が似合いそうな気もしますが」


 レティーリアよ。仮にも普通(モブ)顔である私相手に、そういうことを言わないでほしい。


「でも、残念です。クロウ様が居てくれたら、ティア姉様を褒めてくれたでしょうに」


 本当に、レティーリアも我が家に慣れてきたものである。

 イアンにはまだ若干オドオドしてはいるが、我が家に来る頻度の高いクロウとは、私を介さなくても話せるようにはなった程だ。

 そのことについては確かに喜ばしいが、ただ、それとこれとは問題が別であり、クロウが花冠とかを着けた私を褒めるかどうかは分からない。


「どうだろうね」


 からかわれる材料にはなるだろうが。


「私は、クロウ様との仲を応援します。だってティア姉様、クロウ様とお話しされているときは本当に楽しそうですから」

「そう?」


 楽しく話してるなんて意識したことなど無かったのだが、もしそう見えているのだとすれば、同じ前世持ちの仲間と話せているということが嬉しくて、レティーリアにはそれが楽しそうに見えているだけなのかもしれない。


「そうですよ」


 おかげで私は、と何やらぶつぶつと呟くレティーリアに、完成し(でき)た花冠を被せてやる。


「うん、やっぱり、レティの方が似合ってる」


 やはり、我が義妹は天使だったらしい。

 どんな色や飾りだろうと似合うということは、イケメンや美少女でない限り難しいだろうから。


「ティア姉様だって、ほら。似合ってます」


 レティーリアに花冠を乗せられ、自信満々に頷かれる。


「次は首飾りだね」

「はいっ!」


 そんな感じで首飾りを作り始めた私たちだったけど、それはセイロンたちが呼びに来るまで続いていた。

 それにしてもーー


「午前中は私がティア姉様を独り占めしちゃったから、今度はセイ兄様たちにお貸ししますね」


 レティーリアさん、レティーリアさん。私、貴女のでもなければ、物ですらないんだけどね。


「レティ。ティーは僕の妹、だからね? 貸す云々を僕が言うならまだしも、レティがそう言うのは違うから」


 セイロン、笑顔で訂正することが間違ってる!


「『妹』であると言うなら、私も義妹(いもうと)です」

「うん、そうなんだけどね」

「……」


 え、何が二人に火花を散らせるような言い合いをさせているの? ここの気候か何かが原因なの?


「あらあら、随分仲良しになったものね」

「セイロン、レティーリア。お前ら、ティーリアが欲しければ、俺を納得させてみろ」


 お母様。楽しそうに微笑んでないで、助けてください。

 あと、お父様。貴方は魔王か何かですか。それに、貴方にはお母様がいらっしゃるでしょ。


「……お前も大変だな」


 何の反応もせずにいてくれるだろうと思っていたレヴィンには同情された!?


 ……どうやら、この場には私の味方はいないらしい。



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