第11話:収集《ボックス》
冒険者ギルドを出て現在、サオトメが経営する武器屋に来ていた。
「いっらしゃい!!」
「はぅ!」
隣のティアが迫力に圧倒されて隠れてしまう。
「ようサオっちゃん。」
「なんだカゴじゃねぇか。あの剣はどうよ?」
「最高だな魔物がスパスパ斬れるぞ。」
「がははは、そうかスパスパ斬れるかっ!そりゃあ良い。お前なら使いこなすと思ったよ。」
「今日はそのおかげで入った金で俺の籠手と隠れてるこいつの杖とローブを買いに来た。ちなみに杖は軽い奴。」
「お前な~一日魔物買ったぐらいでいくらあるって言うんだよ。」
特にティアについては触れてこないサオトメ。キリアもそうだがこういう仕事だと仲間が増えるのはよくあることなのだろう。
「金貨18枚だな。」
正確には魔導師ギルドの時払った分を含めて23枚なのだが無いものを言っても仕方ないだろう。
「お前は一体何と戦ってきたんだよ…。ならアイテムボックスを買ってみねぇか?どうせ持ってねぇんだろう?」
(アイテムボックス?)
─200年前、賢者が作り出した入れても重量や大きさの変わらない袋のことです。上級の冒険者などにとっては必須アイテムとなっております。─
「いくらするんだ?」
「一番安い奴でも金貨12枚はするな。だが籠手と杖とローブならそんなにかからねぇし丁度いいだろ。」
「ならそれを頼む。」
そう言うと奥から杖、籠手、ローブと順に持ってくる。前回も思ったが周りに飾ってあるのは値のはる物なのだろう。
「取り合えずこれがアイテムボックスだ。」
そう言うとポーチの様なデザインの物を渡してくる。
名称:マールのアイテムボックス
分類:アイテムボックスD
等級:4級
特性:1tまでの物を自由に出し入れできる。その際、大きさや重量の変化はなし。但し生き物は入れる事はできない。
「へぇ、普通の袋みたいなのかと思ったら意外とちゃんとした奴なんだな。」
「おう!俺はデザイン性にも拘って商品を選ぶからな。普通の布袋の奴なんて扱う気にならん。」
確かに凄く拘りそうだ。
「それでここら辺が金貨二枚前後の商品だ。中には俺が造ったのもあるから良いものばかりだぜ!」
「そいつは期待が持てるな。…おいティア、いつまでそうしてるんだ。流石にサオっちゃんに失礼だぞ。」
後ろを見ると今だに自分の服を握りながら隠れているティア。店に入ってから一度もサオトメの前に出てきていなかった。
「うっ…ごめんなさいです。」
「まぁ良いって。俺もこんななりだからよ、こういう事はよくあらぁ。」
流石にまずいと思ったのか謝るティア。それに対して気の良い顔で許すサオトメ。
「んじゃ早速選ぶか。」
順に籠手を見ていく。すると一つの商品に目が止まる。
名称:黒鉄の籠手
分類:籠手
等級:7級
特性:頑丈さが高い。
「これが良いな。」
「カゴお前、前も思ったが商品を見る目が高いな。それは俺が昔造った黒鉄製の籠手でな。かなり良いものだと思うぜ!」
「んじゃこれをくれ。あとティア、決まらないようならこれとこれはどうだ?」
先程からどれを選んで良いか解らずオロオロしていたので良いと思った物を渡す。
名称:なし
分類:ローブ
等級:7級
特性:物理ダメージ軽減(小)。
名称:紅石の杖
分類:魔法の杖
等級:6級
特性:魔法の威力上昇(中)
「どれもこれも良い奴選びやがって…よっしゃ!なら全部合わせて金貨15枚にまけてやる!!」
「良いのか?それだと儲けほとんどないだろ。」
明らかに選んだ物は金貨18枚を使ってもギリギリ足りるかどうかだった。
「良いんだよ、ほとんど趣味でやってる店だしな。それに先行投資だと思えば安いもんだ。」
「ならお言葉に甘えるかな。代わりに今日はオーク倒しに行くから肉をたんまり持ってきてやるよ。」
オークの肉は焼けばこんがりジューシーで柔らかく脂がのっていて美味しいらしい。さらに市場に出回らないから高級食材でもある。オーク討伐と聞いてティアが道中話していた。
「そりゃ良い!オークの肉なんて早々お目にかかれないからな。今から涎が出てきそうだ!」
そう言いながら涎を拭う振りをする。
「それじゃあちょっくら狩りに行ってくるわ。」
「おお!楽しみに待ってるからな!」
買い物を済ませて出ていく。結局店内でほとんど喋らなかったティアは出る直前に一礼してカゴを追いかけて行く。
予定通り二話投稿です。