ゲーマーズタレント
いつも通り昼食後の休憩時間を会社の談話室で過ごす遼太郎、岩城、椎茸の三人は岩城の所持していたタブレットで動画配信サイトMUTUBEを閲覧していた。
そこには様々な動画が並んでおり、ジャンルは多岐に渡っていて、配信者の数だけ種類があると言っても過言ではなかった。今や動画配信は老若男女問わず、手軽に楽しめる娯楽文化の一つとして広く浸透していた。
「平山殿、ゲーマーズタレントって知ってるでゴザルか?」
「今話題になってますよね。確か昔はゲーム実況者って言われてましたよね」
「そうでゴザル。ゲーマーズタレントの歴史は古く、一昔前のストリーミング配信時代に遡るでゴザル。昔は顔出しが少なかったが、近年のVRオンラインゲームに関しては顔出しは当たり前でゴザル」
「海外ではゲームをしながら自撮りするのは普通でしたが、日本にその文化が浸透するまではかなりかかりましたね」
「左様、VRオンラインゲームでは顔を隠せないと言うのがそもそもの原因にあるでゴザルが、動画実況がVRに対応するにつれて、企業達はその配信者に目をつけたでゴザル」
「素人さんでもトークがうまい人は本当にうまいですし、プレイがうまい人は見ていておぉっと引き込まれますしね」
「ゲームの面白さを直に伝えてくれるものとしてゲーム企業がその配信者をタレントとして起用し、後にゲームばかりに出演する人間をゲーマーズタレントと呼んだのが始まりでゴザル」
「平山君、そこで気づいたことはないでふか?」
「気づいたことですか? ゲームがうまいとかじゃなくてですよね?」
「もっと視覚的なものでゴザル」
「視覚的?……すみません、ちょっと出てこないですね」
「ぶっちゃけ美少女やイケメン多くねって話でふ」
「はぁ……まぁ、そうですね。確かに企業が使われているゲーマーズタレントに関しては容姿のよいかたが多いですね。でも、別に容姿とゲームは関係……」
「シャラップ! 綺麗ごとはいいでふ!」
「綺麗ごとって……」
「平山殿は会社の受付窓口の仕事、こう言っちゃなんでゴザルが愛想が良ければ誰でもできそうと思わんでゴザルか?」
「受付も大変ですよ、終始見られてますし、いつ誰が来るかもわかりませんし」
「そういう形式ばったフォローはいらないでゴザル。ぶっちゃけ専門的なスキルを必要としないでゴザろう。別にVR言語覚えてなくても、特殊な資格がなくてもできる」
「それはそうですが」
「ならば、そこにむさいおっさんを配置してもいいわけでゴザる」
「それは、そうですね」
「しかし大体どこも綺麗なお姉さんがやってるでゴザル」
「会社の顔になるからって言いたいんですよね?」
「その通りでゴザル。会社の中に入って、まず目につくのは受付でゴザル。そこにむさいおっさんを配置してても業務には支障ないでゴザるが、支障ないなら綺麗なお姉ちゃん据えてる方が来客の気分はいいでゴザル」
「それは、そうですが」
「つまり適性の話でふ。ぶっちゃけスポーツキャスターやお天気お姉さんだっておっさんでいいわけでふ。それをあえて可愛い女の子にしているのはどっちでもいいなら綺麗なお姉さんの方が見た目いいじゃんってことでふ」
「そう、少し回り道したでゴザルが、それはCMにも同じことが言える。平山殿、暑い夏にビールを運んでくるのが綺麗なビアガールの方がいいでゴザろう」
「あっ、ボクお酒飲めないんで」
「そんなこと聞いとらんでゴザル! 本題はこのゲームタレント、うちでも起用したらどうかと案が上がっていてだな。近く姫からその議題が上がるはずなのでゴザル」
「はぁ、つまり営業戦略を兼ねた企画ってことですか」
「その通り、企画と言えば平山殿! 姫は平山殿の言うことなら大体なんでも聞くでゴザル! そこで拙者らの願いを聞き届けてほしいでゴザル!」
岩城はタブレットを取り出すと女性の画像をずらりと表示させる。
「これは……」
「現在世界各国でゲーマーズタレントとして登録している綺麗どころで、拙者らがえりすぐった精鋭タレントでゴザル」
「…………あの、これホワイトナイツのヴェルティナさんや、テキサスファイアのグレースさんの写真が入ってるんですが」
「彼女達もゲーマーズタレントとして登録してるでゴザルよ。ちなみにそのお二方は既にメタルビーストを非公式で配信してるでゴザル」
「動画の再生数も凄いことになってるでふ」
椎茸が動画サイトを表示させると、確かにヴェルティナとグレースの動画再生数は他者のタレントと桁一つ二つ離している。
「そうそう、それを公式に引き上げてはどうかと思ったでふ」
「はぁ……でも、メタルビーストは女性人気の方が低いですから、起用するならイケメン男性を使って女性人気を確立した方が……」
「イケメンにつられてホイホイやってきた女がこのゲームを長く続けるわけがないでゴザろう!」
「そうでふ! 今日の装備はAZX-120ミリランチャーにしようか、それともRSN-22ハンドカノンどっちにしようかしら? なんてスイーツ女子がいうわけないでふ!」
「それ完全にブーメランなんですけど……」
「とにかくここに映っている女性達は全て拙者ら一押しで、どの子も良い子たちばかりでゴザル。平山殿の判断材料にしてみてはどうかと」
「それは確かにありがたいですね」
ザッとタブレットに表示された画像を見ていくと、遼太郎はむっと唸る。
「あの、この子パンツ見えてるんですけど。っていうか見せてるんですけど」
「エロで男を釣るのは常識でゴザろう! ちょっとエッチなサムネイルにするだけで視聴者数がドカンと増えるなら誰だってやるでゴザル!」
「タレントは視聴者が増えて嬉しい、視聴者はエッチなのが見れて嬉しいWINWINのこの関係のどこに問題があるでふか!」
「倫理機構ですかね……」
「あんなしょうもないCEROAだのBだの適性年齢を決める邪悪な機関など滅びてしまうでゴザル!」
「ゲーム関係者がそれを言いますか……」
呆れながらもタブレットをスワイプしていくと、一人の少女の写真で遼太郎の手が止まる。
透き通るように白い肌の少女で、美しい光沢を放つ銀色の髪に、エメラルドのような碧色の瞳、切れ長く少しだけ目じりが上がっているが、気の強さは感じず、その白さからまるで氷の妖精のような雰囲気がある。
振り向きざまに撮られた写真なのかキョトンとしていて小動物的表情が印象的だ。
桜色の唇が小さく開き、上品な顔立ちはどこか世間を知らぬ純真無垢さが感じられる。
男装すれば線の細いイケメン。女装すれば氷細工のような美少女と、美しい顔立ちは中性的にも見える。
「ディアナちゃんでふね。平山君いいところで止めるね」
「あまり深くは考えてなかったんですが、つい止まりました。綺麗な子ですね」
「ロシア人で、ゲーマーズタレントからゲームミュージックなど幅広く活躍するユニットZAKのボーカルでゴザル。確か現在は親元を離れて日本のミュージック会社に所属してるとか」
岩城が写真をタップすると、彼女が歌を歌っている動画が表示される。
「うわ……歌唱力が凄いですね」
「天才的歌唱力にこの美しいビジュアル、人気が出ないわけないでふ」
「そして少し天然のはいった性格も魅力的でゴザル」
「冷たい雰囲気があるでふが本人は大の寒がりで、自身のFAICEBOOKには暖めてくれる方募集と書いてるでふ」
「う~む暖めてあげたいでゴザルなぁ! ちなみに彼女日本語あまり喋れないし、字は全く書けないらしいでゴザル」
「それ絶対FAICEBOOKに字を書いた人と本人別人ですよね!?」
「本人はゲーマーズタレントをやりたかったみたいでふが、動画サイトでよくある歌ってみたの方で有名になっちゃってゲーム会社より先にミュージック会社に声をかけられたみたいでふ。確かサンライトミュージックとかいう小さい会社でふ」
「なるほど」
「彼女をメタルビースト専属のゲーマーズタレントにすれば彼女のファンを取り込めるでゴザルよ」
「なんか企業の方が、素人さんのファンをあてにするのってどうかと思うんですが」
「綺麗ごとなんて聞きたくないでゴザル! 彼女のお気に入り登録者数は180万を超えてるでゴザルよ! ちなみにメタルビースト公式動画配信の登録者数は35万人、グッドゲームズカンパニー全体の動画配信登録者数は160万人、会社の登録者数全部合わせても彼女一人の登録者数には届かんのでゴザル!」
「ウチの5倍客持ってるでふよ!」
「いや、そこまでいくと、もう彼女仕事選びたい放題でウチを相手にしてもらえないんじゃないですか?」
「言われてみればそうでゴザルな」
「でも、彼女がサンライトミュージック以外、どこかに所属しているという話は聞いたことないでふ。というか最近は音楽の動画ばかりで、もしかしたらゲーム自体に興味がなくなってしまってる可能性も微レ存でふ」
「むぅ、もしやそのミュージック会社と他社とは契約しないとライセンスを結んでいる可能性があるでゴザルな」
「サンライトミュージックって確か音楽会社ではめちゃくちゃ評判悪いとこでふ……」
「ダメじゃないですか」
「でも、そんなのきいてみないとわからんでゴザル」
「そうでふ! やる前から諦めるのはよくないでふ!」
むぅと遼太郎が唸っていると、彼女の歌が終わり関連した動画が自動再生される。
すると、突如モンスターに襲われたり、強風にあおられてスカートを必死におさえるなどのシーンが映し出されてる。
「なんですか、これ?」
タイトルを見ると、ディアナちゃんパンチラ集まとめと書かれており、再生数が凄まじいことになっていた。
「彼女、ゲームの配信をやっている時もそうでゴザルが、妙に隙が多いというか、まだこちらの生活に慣れていないというか」
「別ゲーで妙に乳が揺れるから、なんでだろうって動画コメントで聞かれたとき、ブラしてませんって言いだして、ぼくこの子に一生ついていこうって思ったでふ」
「もう良い歳した大人が、自分より一回り小さい女の子のパンチラで興奮しないでください。悲しくなってきますよ」
「エロに下限も上限もないでふ。年が行けば勝手に下限がふえていくでふ」
「自分で限度は設けて下さい」
「平山殿も見ればわかる。彼女の尻を」
遼太郎が顔をしかめていると、別のVRゲームをプレイしているディアナのプリーツスカートが、風でまくれあがるシーンが映し出されている。
その時むちっとして、たわわな尻肉にパンツが激しく食い込んでおり、尻の半分ほどがはみ出している。
「たまに海外人女性の方で、ほとんどお尻見えてるよね? って言いたくなるホットパンツはいてたりしますが……これは」
「ちなみにディアナと検索サイトに打ち込むと次の予測変換に尻って絶対でてくるでふ」
「拙者おっぱい派でゴザルが、彼女を見て初めて寝返りそうになったでゴザル」
「ちなみにお尻ばっかりに目がいきがちでふが、彼女のセーターを着た時の破壊力は凄まじかったでふ」
「女神……でゴザったな」
椎茸がその時の写真を表示させると、完全に成熟してはいないものの黒の肩だしニットセーターに包まれた胸は縦に入ったラインをその部分だけ大きくゆがませ、繊維を押し上げる。
女性特有の柔らかさを視覚だけで感じさせ、海外ファッション誌のモデルと言われてもおかしくはなさそうだった。
「この肩を出しているのがいいでゴザルなぁ」
「こう、このままセーターを下に引っ張って剥きたくなるでふ」
遼太郎は、擁護しようがないくらい岩城と椎茸の気持ち悪さに顔を引きつらせる。
見ていて恥ずかしくなってくるので、遼太郎が次の動画に進むボタンを押すと、今度はまっとうなバンドグループの音楽が流れる。
「それは確かZAKⅡでゴザルな」
「あれ? 確かディアナさんが所属しているのってZAKですよね? 姉妹ブランドとかですか?」
「一応ディアナちゃんの肩書はZAKでふが、ZAK自体は彼女以外脱退してるでふ」
「ディアナちゃんが途中から入ってきて爆発的人気を得たでゴザルが、完全にディアナちゃんのワンマンチームでゴザったからな」
「ディアナちゃんを抜いてZAKⅡとして再結成したらしいでふが、これが鳴かず飛ばずで」
「完全にディアナちゃんの人気だったと痛感しているでゴザろう」
「気の毒でふが、彼らだけでは多分やっていけないでふよ」
「……ZAKは残ってるのにZAKⅡができあがってるんですか……なんか変な話ですね」
遼太郎は引っ掛かりを感じつつも、ディアナの名前だけはしっかりと覚えたのだった。




