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グッドゲームクリエーター~VRゲームとらぶる開発記~  作者: ありんす
1stG グッドゲームクリエーター編
23/82

嵐の前の

 大型アップデート前日。

 第三開発室は最終チェックもひと段落し、後はメンテナンス時間を待つだけとなっていた。

 開発室のメンバーはいつもより人数が少ない。

 それはこれからメンテ後の予測不能なバグ、サーバーダウンに備えてパッチ後三日間の二十四時間監視態勢を行う為の人員配置であった。

 本来は三日間も開発陣を万全の布陣で展開することはまずない。

 しかし今回のパッチはメタルビーストの今後を占うと言っても過言ではない重要なメンテナンスとなる。

 一週間くらいはこの状態をキープしたかったが、開発陣の方も度重なる無茶の為疲労がたまっているのは把握しており、麒麟の布陣で週末を挟む三日間だけは完全にもたせ、それ以降はコミュニティチームと連携してバグが発生しない限り通常運行に切り替えることになったのだ。


「おいド素人、チェック項目重複してんぞ! こんなんじゃ二十四時間経ってもメンテなんか終わんねーぞ!」

「すみません!」

「時間がねーんだ、ちんたらすんな!」


 矢島の怒号と共に開発室を走り回る遼太郎。

 その様子を尻目に自分たちの仕事を終えた岩城と椎茸は一息ついていた。


「矢島さんソワソワしてるでふね」

「明日でゴザルからな。我々の再起をかけた大型アップデート。よくこんなスケジュールを遅延なしで回したもんでゴザル」

「皆の気持ちが一つにまとまったでふ」

「さよう、それこそが真なるゲーム開発というものでゴザろう」

「姫は落ち着いてるでふね?」

「やりきったのであろう。できることは全てやり切り後は時を待つのみ」


 話していると麒麟がノートパソコン片手に岩城の元に近づく。


「岩城さん、イベント項目の中にある新型ビースト、フロストタイガーなんですけど、モデルデータぶち込んじゃってますけど大丈夫ですか? 中身空っぽですけど」

「心配ご無用。それはただのイベントデータでゴザル。やはりパッチには目玉となる新型が必要でゴザル」

「そうそう、メタルビースト2.0氷結の獅子王フロストタイガー参戦! これだけでドッカンドッカンくるでふよブヒャヒャヒャ」

「やはりバランス調整とアイテム追加だけでは大型パッチの割には地味でゴザルからな。先行で公開したPVには既に登場してるでゴザル」

「ネットも大いに盛り上がってるでふよ」

「私もネットのPV見て初めて見ましたよ。誰? って思いました。おかしくないですか、私一応リーダーですよ?」

「サプライズは誰にでも必要と平山氏から言われたので内緒にしてたでゴザル」

「PV見ていろんなとこに私の知らないのが散りばめられてて、このアイコン何? ってなったり音楽新曲になってるとかいろいろ驚きですよ」

「皆120%を出したんでふよ」

「それにしても椎茸殿は新武器でピーピー言ってる時によくモデリング作れたでゴザルな」

「あれは妖精さんのおかげでふ」

「妖精?」

「昔開発初期の頃、新型ビーストのモデリングをやってたんでふ。でもなーんにも案が浮かばなくてそのまま会社で寝てしまって、起きたらこれが出来上がってたんでふ」


 椎茸はフロストタイガーのモデリングデータを見せる。

 そこには透き通る結晶を身にまとった、美しく凛々しい虎の姿が映し出されている。

 誰もが見ただけで間違いなくこの機体は強いと思える、そんな風格を持っていた。


「確かに椎茸さんぽくないデザインだなとは思ってたんですよね。強そうなんですけど、獅子王というよりは女王の方がしっくりくる機体ですから」

「確かに美しい機体でゴザルな」

「まぁその時はこのモデリングじゃ動かせないって突っぱねられたんでお蔵入りだったでふが、描画ソフトの機能向上と、岩城君の新エンジンのおかげで実装のめどが立ったでふ」

「なるほど」

「きっとこの機体は僕が眠っているうちに真の力を発揮して作り上げたでふ」

「はいはい、起きてる時もその真の力使えるようになってくださいね」

「むぐ」


 椎茸は藪蛇だったと口をへの字に曲げる。


「まぁまぁ、此度の開発は実に血肉わき踊る良いものでゴザったよ」

「まだ終わってませんし、始まってもないですから」

「あっ、岩城さんに姫様」


 今度は高畑が液晶タブレットをもってやって来る。


「ちょっといいですか?」

「どうかしましたか? もしかしてトラブルですか?」

「いや、そんなんじゃないんですけど。ちょっとこれ見てください」

「どれどれ掲示板でゴザルか。メタルビーストはアンチスレが多くて拙者あんまり見てないでゴザル」

「僕も心折られちゃうでふ」

「なんかアップデートに反対する声が多く見えますね」

「そうなんすよ。なんか今回のアップデートで自分たちの知っているメタルビーストが壊されるんじゃないかって、怒ってる人がいたんです。元から一部のアンチの声なんでコミュニティチームも無視してたんですけど、なんかどうやら扇動してる奴がいるみたいで、最近は公式のフォーラムにも意見が出始めて、しまいには今の運営はメタルビーストを全て破壊して自分たちで勝手に新しいものに作り替えるつもりだっていいだして」

「確証もない虚言に尾ひれ背びれがついて巨大な魚になったってところですか」

「ええ、この話日本ではあまり大きくなってないんですけど、特に海外サーバーでは顕著でメタルビーストの廃人ギルドや大規模ギルドが動いてるって話で」

「ギルドが動いたところで所詮彼らはプレイヤーでゴザル。アップデートしてどうなったかを体験してもらえば一瞬で我々の意図はわかってもらえるはずでゴザル」

「そうでふそうでふ、今から手のひらクルーする様子が思い浮かぶデヒャヒャヒャヒャ」

「こちらの宣伝がうまく海外の方たちには伝わってないのかもしれませんね」

「ウチプランナーが何回かかわってるじゃないですか。そのことで結構不安になってる人も多いみたいで」


 高畑が海外のフォーラムを開くと、そこには様々な言語で「迫田に戻してください」「我々には迫田が必要です」「変革は必要ありません」「運営の横暴を我々は許しません」などと書かれている。


「ユーザーは今のメタルビーストがあるのは迫田のおかげだと思ってるでゴザルな」

「ユーザーってなんで内部の情報を知らないくせに、こう開発者の名前で騒ぎ立てるんでふかね」

「迫田さん以外に情報がないからでしょう。今が好きなユーザーにとってはこれを作り上げたのが迫田さんだと思ってますし、言い方は大げさですがゲーム開発者の交代は神の交代に近いものがあります。当然反発はあるでしょう」

「VRの弊害でゴザルな。今までのMMOは所詮モニター越しでの出来事でゴザルがVRは自身が実際にゲームのキャラクターとなって、その世界に入り込んで戦う。正しく新たなる世界でゴザル。VRが出てからゲームの中こそリアルだと主張する危ないやからが急激に増えたでゴザル」

「勿論そんなの少数で、大多数の方は普通にゲームを楽しんでくれていますが」

「確か会社の郵便に神様へって差し入れきてたの何回か見たことあるでふ。ネタか本気かはよくわかんないでふが」

「そんで問題はこっからなんですが、なんか大規模ギルドのユーザーたちがメンテ中にデモやるとかで」

「デモ? 外でプラカードでも持って練り歩くでゴザルか?」

「本社の前でやられると厄介ですね。姉さんがまた怒ります」

「その掲示板にはメンテ中にゲームサーバーに潜り込んで2.0の象徴であるフロストタイガーを破壊するって」

「何言ってるでゴザルか。フロストタイガーにはAI組み込んでないから対戦なんてできないでゴザル。チラッと顔見せして消えていくイベントだけでゴザル」

「それにメンテ中にゲームサーバーに入り込むって、そもそも物理的にネットワークポートを閉じてるところにはどう頑張ったって入れませんよ?」

「いやーごもっともなんすけど。でもなんかもうギルド集めて突入するとか盛り上がってるみたいで……」

「方法がわかりませんね」

「言ってるだけゴザル。ネットの掲示板なんて九割型ネット弁慶なだけで、実行する力なんて持ってないリアルではチワワちゃんばっかりでゴザルよ」

「チワワブッヒャッヒャッヒャヒャ」


 岩城の言うことに確かにと思うのだが、麒麟も掲示板の流れを見て異様だと感じ、すでに潜り込んだ後の会話を細かくしていることが気になる。


「一応姉さんに報告しておきますか……」

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