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期間限定勇者は  作者: 夕闇 夜桜
サーリアン国・王都~王都近郊編
9/50

第九話:勇者二人で伝えに行く


 さて、ラクライールの件を、どうやって陛下たちに伝えようか。

 そんなことを考えながら歩いていたから、普段なら気づくはずのことに気づかなかった。


「さ・ぎ・さ・か・さーん!」

「ぐっ……!」


 背中に衝撃が走り、非難も込めて、抱きついてきた張本人に目を向ける。


「……何の用かな、向島(こうじま)君。私は今、ものすごく痛かったんだけど」

「ああ、悪い。すまん」


 そう言いながら、激突してきた張本人ーー向島君が離れる。


「それで、用件は」

「いやー、歩いてる途中で迷ってたら鷺坂(さぎさか)を見つけたから、ついでに城内の案内でもしてもらおうかと」

「クリスさんたちは?」

「あいつらはほら、お前の仲間たちと一緒に、桐生(きりゅう)たちに捕まってるよ」


 つまり、一緒になって訓練してるわけだ。


「それで、君がここに居るってことは、一人サボったんだね。イースティアの勇者様」

「鷺坂もサボってんじゃん」

「私が出たら、みんなのやる気を()ぐでしょ」


 制限付きなだけで、本気だろうと無かろうと、戦えないわけじゃないし。


「それはそうかもしれんが、腕が落ちないか?」

「落ちてるかもしれないけど、それはそれで仕方ないよ」

「そういうもんかね」


 この状況を甘んじているわけではないが、力のある者が下手に参加するのもどうかと思うのだ。

 下手したら、パワーバランスにも問題が出る。


「じゃあ、久しぶりに手合わせするか?」

「断る。私が剣より魔法の方が得意なこと、知ってるでしょ」

「そう言っておきながら、俺に勝ち越してるだろ」

「一勝だけね」


 あの時は偶然、勝ち越せただけだ。


「なら、魔法ありにするか?」

「制限付きとはいえ、周辺への影響が怖いんだけど」


 そう返せば、向島君が何か言いたそうに、こっちを見てくる。


「つまり、やりたくないんだな」

「いや、知り合いしかいないのなら引き受けたと思うけど、今は他にやることがあるだけだよ」

「やること?」

「ほら、話したでしょ。ラクライールの奴が来たって。それをどう陛下たちに伝えようかって」


 それで通じたのか、ああ、と納得する向島君。


「なら、執務室に行けばいいだろ。場所、知ってるんだろ?」

「まあ、知ってるけど」

「よし、じゃあ行くぞ」

「君が知ってるわけじゃないんだから、先行しない」


 手を引っ張っていこうとする向島君に、溜め息混じりに突っ込んだ。


   ☆★☆   


「失礼します、陛下」

「うん? 君たち二人だけか?」


 執務室の扉の側に立っていた騎士に取り次いでもらえば、中から許可が出たので入ってみれば、意外そうに返された。


「まずは、遅れましたがご挨拶を。ノーウィストの勇者、鷺坂榛名(さぎさか はるな)です。この度は、ご迷惑をお掛けいたしております」

「うむ……まあ、何の手違いかは分からんが、まさか我が国の召喚陣に、他国の勇者が引っかかってしまうとはな」

「それに関しては、こちらも仲間と合流できたので、特に文句はございません」

「そうか。そちらがそう言うのなら、そういうことにしておくが」


 さて、ここからが本題である。


「今回、私たちがこの場に来たのは、陛下にお伝えしておくべき情報があったからです」

「伝えておくべき情報?」


 小さく頷いて、私は告げる。


「先日、魔王直属の配下にして四天王が一人、ラクライールより、この城の襲撃が予告されました。日時は不明ですが、(しか)とお伝えしましたので、対策及び迎撃の準備の方をよろしくお願いします」

「ちょっと待て。四天王が来たのか?」

「わざわざ宣戦布告するためだけに、ここまで来たみたいですけどね」


 陛下が難しい顔をしながら、頭を抱える。


「……勇者である君たちから見て、奴らの目的は何だと思う?」

「勇者ーー特に、桐生君たちの行動を封じることでしょうね。召喚されたばかりの彼らを狙って、こちらの戦力を減らした方が、彼らも楽でしょうし」


 そもそも、いくら能力制限された私も居るからって、自分たちの目的のために、あいつが躊躇するはずがないのだ。


「そうか。情報提供、感謝する」

「もしもの場合は、私たちも迎撃させてもらいますので」

「分かった」


 失礼します、と言って、執務室を出る。


「珍しく口出ししなかったけど、どうしたの?」

「うん? 特に口出しするようなことも無かっただけだが?」


 つまり、本当に私を執務室に連れて行っただけってことになるんだけど。


「それにしても……何て言うか、やっぱり、その姿の方がしっくり来るな」

「そう?」

「らしい、っていうか。見慣れてるっていうか」


 ふむ。今の私は勇者装束だからなぁ。陛下に会うからと執務室に行く前に、わざわざ着替えたし。


「ねぇ、向島君」

「何だ?」

「一緒に来てくれたお礼も込めて、手合わせしようか」

「え、マジで?」


 マジですよ。


「もちろん」

「じゃあ、俺たちが本気出すとヤバいから……自分たちの裁量で調節、ってことで」

「了解。じゃあ私は、剣を取りに行ってくるよ」

「ああ」


 向島君に見送られながら、使い慣れた剣を部屋に取りに行く。

 さぁて、どこまで応戦してやろうか。



榛名視点なので、書きませんでしたが、勇者装束の時は髪をポニーテールにしています



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