第八話:事情を説明する
さて、所変わって自室である。
目の前にいるのは、ウィルたち仲間とイースティアの勇者一行ーー向島君たち。
ちなみに、部屋には案内された後らしい。
「とりあえず、ここに居てくれて助かったよ」
「もう、本当にごめんなさい」
そもそも、私が他の召喚に引っかかるというミスさえしなければ、ウィルたちもここに立ち寄る必要はなかったのだ。
「で、何で自分が勇者だって話さなかったの」
「話せるわけないよ。別々に召喚されたり、ウィルたちと行動していたならともかく、一緒に召喚された上に、肝心の召喚者から『さっさと他国の勇者が魔王を倒せば』云々を聞かされたら、言えるわけないじゃん」
特に、あちらとこちらを行き来している私に反論できない。
「何それ、俺たちにも対する嫌味? っていうか、完全に嫌味だよね」
「何事も、すぐに出来るわけがないのにね」
向島君が不機嫌そうに、クリスさんが溜め息混じりに言う。
「それで、榛名から見た彼らはどうなんだ?」
「やっぱり、召喚されてから、まだ日が浅いからね。実力的にはまだまだかな」
けれど、これからの経験次第では、強くなる可能性はある。
「とにもかくにも、合流できて良かったよ」
はい、と勇者装束一式をララから渡される。
「本当だよ。あと、あの場では言わなかったけど、ラクライールの奴がわざわざ襲撃予告をしてきた」
「ラクライール? ……ああ、四天王の一人か」
「けど、それを信じていいの?」
思い出したように言う向島君に、フィアーナ殿下が尋ねてくる。
「嘘言った可能性もあるとは思うけど、桐生君たちの事も考えると……」
「強くなる前に潰す、か?」
「その可能性も捨てきれない」
全員で溜め息を吐く。
「もし仮に襲撃が本当であったとしても、俺たち全員で王族とあいつらを守るのに無理があるぞ」
「それに、現時点で貴女をノーウィストの勇者と知らない以上、この件でバレる可能性もあるわよ?」
「それについては構わない。タイミングの問題だって誤魔化すから」
向島君とクリスさんが肩を竦める。
「さすが、星王生。頭の回転が速いな」
「それに、私の使用属性が解呪されてないのも問題だし」
向島君の言葉をスルーしつつ、そう告げる。
属性制限の『呪い』は、ララやクリスさんに見て貰ったが、二人ともお手上げ状態だった。
「光属性は桐生君も使えるから、向島君と合わせても二人になるけど……」
「だが、高位の光属性を使えないのなら意味がない。はっきり言って、四天王を相手にするなら、同じ勇者でも鷺坂の方がマシだ」
「言ってくれるね」
「強敵を相手にするのに、組むなら実力も実戦経験もある奴の方がいいだろ。それに、お互いのことはよく知ってるしな」
そこまで言われるような実力も全然足りないとは思うけど、確かに組むなら彼らが良い。
「もし、私のことがバレたらフォローは頼むよ、イースティアの勇者様」
「同じ勇者として引き受けた。ノーウィストの勇者様」
小さく溜め息を吐いて言った私に、向島君が同じように返してくる。
「ウィルたちも、お願いね」
「分かってる」
「まあ、もしそれで納得してもらえなければ、“永久詠唱”として、私が何か一言言うわ」
「それでも、聞かないようなら、最終的に私が権力を使うことも念頭に置いておくとしましょう」
「……」
何やら大変なことになったし。
「えっと、何かごめんなさい」
「いいの。ノーウィストの勇者をバカにした罰ってことにするから」
「ついでに、イースティアもね」
互いに黒い笑みを浮かべるフィアーナ殿下とクリスさん。
「まあ、何だ。国王の様子から見るに、大丈夫そうだから大丈夫なんじゃねーの?」
そう言いながら、肩を組んでくる向島君の腕を外しながら返す。
「陛下が良くても、側近がうるさいからなぁ。ここ」
「あ~。確か榛名は、女ってだけで馬鹿にされたもんね」
「でも、あの人。あの後、陛下にこっぴどく怒られたみたいだけど」
「……ぶ、部下が、他国の勇者を侮辱すれば、怒るのは、無理ないと思う」
下手をすれば、戦争になるもんね。
「上に立つ者なんだから、もう少し考えてから物言えってんだ」
「本当だよなー」
向島君が同意してくるけど、元の世界を思い出したんだろう。
「あ、そうだ。ララ、私、別の召喚陣を通ってきたわけだけど、行き来は可能?」
「陣によるかな。見てみないと何とも言えない」
ララの言葉に、そっかぁ、と返す。
「じゃあ、そろそろ俺たちは行くから。長居したな」
「気にしないで。桐生君たちに怪しまれなければ問題なしだから」
立ち上がりながら言う向島君にそう返せば、「お前、もうあいつらに話せよ。ゆっくり話も出来ない」と言いたげな目を向けられた。
「それじゃ、榛名。私たちも行くから。また後でね」
ララがそう言えば、私を除く全員が完全にこの部屋から出て行った。
「……勇者、ね」
とりあえず、私も出来る範囲のことぐらいはしよう。