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期間限定勇者は  作者: 夕闇 夜桜
サーリアン国・王都~王都近郊編
7/50

第七話:早くも再会する


 どういうこと?

 うちのメンバーはまだ良しとしよう。だが、イースティアの勇者一行も一緒に登城してきたとは、本当にどういうことだろう。

 偶然、会った、とか?

 それに、陛下はどうするつもり?


「そうか……では通せ。次にいつ謁見できるか分からんからな」

(かしこ)まりました」


 陛下の(めい)に、兵士が勇者一行を通し始める。


「君たちも、これから他国の勇者とは会うことになるだろうが、もし今それが可能なら、先に顔合わせしておいた方がいいだろう」


 それは間違ってはないと思うけど、私をちらちらと見ながら言われてもなぁ。

 陛下の前まで歩くウィルたちだが、途中で私に気づいたのか、ぎょっとしていた。

 彼らに続いて入ってきたイースティアの勇者一行には、一瞬ざわめきが起こった。

 彼ら曰く、“永久詠唱(エターナル・スペル)”が帝国に、らしい。

 どうやら、彼女(・・)のことは見た目も含め、この国にも伝わっていたらしい。でもまあ、彼女ぐらいの実力者なら、どの国も欲するのは当たり前か。それが能力目当てだとしても。


 “永久詠唱(エターナル・スペル)”。

 イースティアの勇者一行の一人、クリスフィア・フォードという少女の二つ名にして、称号。

 その能力は、全てとはいかずとも、ほとんどの魔法の行使を可能とし、どんなに長い詠唱でも『永久』とある通り、途中で途切れさせても、言い終えていれば発動が可能。

 また、通常なら一つずつ詠唱を紡ぐが、一人同時(・・・・)詠唱も可能となる(本人曰く、慣れるまでは何とも言えなかったらしい)。


「何て言うか、オーラが違うな」

「ああ……」

「“永久詠唱(エターナル・スペル)”……?」


 そう小声で話しながらも、やや首を傾げる桐生(きりゅう)君たちだが、私は彼らに“永久詠唱(エターナル・スペル)”について、教えるつもりはない。知りたければ、自分で調べろ。

 そうこうしていれば、彼らは自己紹介を終えたらしい。


「ああ、そうだ。君たちの後ろにいるのが、我が国の勇者たちだ」


 ……陛下。わざとですか。まさかとは思いますが、狙ったりはしてませんよね?

 ウィルたちと目が合ったけど、「後で合流して、事情説明しろ」と訴えられた。

 イースティアの勇者一行も空気を読んでくれたらしく、何も言ってこない。


「……肝心の勇者不在ではあるが、ノーウィストの勇者一行の一人、ウィルハルト・ユークリウスだ」

「同じく、ララティアナ・グランドベルグ」

「同じく、勇者一行の一人にして、ノーウィスト王国第二王女、フィアーナ・ツヴァイ・ノーウィストです」


 小さく溜め息を吐いて自己紹介を始めたウィルに(なら)うように、ララとフィアーナ殿下も自己紹介していく。


「じゃあ、次はこっちの番だね」


 そう言いながら、イースティアの勇者一行が少し前に出る。


「イースティア帝国から来た勇者、向島椿樹(こうじま つばき)です。よろしく。あと、名前で分かると思うけど、君たちと同じ召喚勇者だから、年齢(とし)も近そうだし、遠慮なく話しに来てくれて構わないから」


 いや、確かに先輩勇者で話し相手にはなるけどさ。

 主に、私や栗山(くりやま)さんの方を向きながら言うのだけは、止めてほしい。

 もし、これで桐生君たちに私のことがバレたりしたら、許さない。


「“永久詠唱(エターナル・スペル)”こと、クリスフィア・フォードです。魔法に関しての相談になら、乗れると思います」


 彼女の自己紹介は、向島君のを参考にしたんだろうな。

 それにしても、二人がやや長めだったせいか、ウィルたちの方が内容的には短かった気がする(名前と地位ぐらいしか言ってなかったし、私も人のことは言えないが)。


「アスハルト・ディーゼルだ。ここに居る間、剣の相手なら出来ると思うから、遠慮なく声を掛けてくれ」


 帝国騎士でありながら、銃も扱えるという『銃剣』使い(普通はどちらか片方)。

 イースティア勇者一行内では最年長の二十歳で、良き兄貴分的な人でもある。


「……レアトリア・ノートン、です。よろしく」


 口数が少ない神殿関係者で、今は緊張からかおどおどとしているけど、向島君を召喚したのは彼女(とのこと)。

 さて、こうしてイースティアの勇者一行の自己紹介が終われば、必然と私たちが名乗る番となるわけで。


「……鷺坂榛名、です」


 名乗る順番は陛下に名乗った順で名乗り、桐生君から始まり、栗山さんの後に自己紹介したわけだが。

 演技だったなら良かったのだろうが、演技(そう)じゃないから、何かストレスになりそうだ。主にメンタル面の。


「では、勇者同士の挨拶も終わったようだし、今度こそ解散としよう」


 陛下の声に、私たちは立ち上がり、偉い人たちも少しずつ去っていく。


「じゃあ、俺たちもそろそろ出るか」


 桐生君の言葉に、吾妻(あがつま)君たちが頷く。


「……鷺坂さん?」


 栗山さんに大丈夫? と心配そうに顔を覗かれる。

 どうやら、何の反応もしなかったから、不思議に思ったらしい。


「ああ、ごめん。ちゃんと聞いてはいたから」

「なら、良いんだけど……」


 だが、本当にこの先どうしよう。

 そろそろ私がノーウィストの勇者であることを暴露するべきだろうか。エレンシア殿下には性別も含めて。

 けど、下手に言って良いことでもないし、こればかりはタイミングの問題だろう。


「また後でな」


 謁見の間から出る際、すれ違い様にウィルからそう言われる。

 まあ、愛剣も勇者装束も彼らから受け取らなくてはいけないから、否が応でも会わなくてはいけない。それに私、このままだと魔法以外の防御方法が無いままだし。

 とりあえず、ウィルたちとの接触方法を考えつつ、謁見の間を後にした。


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