第四十八話:誰が一番多いのかを競う
鷺坂榛名(前者)/ララティアナ(後者)視点。
さて、鬼ごっこの始まりである。
私たち四人が一斉に別方向に動き始めたのだから、追い掛ける側の彼らもバラけるのは仕方がないとも言える。
「んー……私は二人かぁ」
この様子だと、ウィルとフィアーナ殿下の所に人数が割かれてるのかな。
私たちの中だと、ウィルが一番強そうで、フィアーナ殿下が一番弱く見えるだろうからね。
「でも、私に多めに割いてくれれば良かったものを」
属性制限がある私に大人数で仕掛けてくれば早かったものを、まさか二人だけで来るとは……もしかして、実力者で固めてきた?
「ま、それでも良いんだけどさ」
そろそろ止まってやるか。
「さーて、お兄さん方。私に何のご用かな?」
まさか気付かれてるとは思ってなかった訳じゃないよね?
☆★☆
待ち合わせ場所に来てみれば、その場に居たのはフィアーナ殿下のみ。
「あー、フィアーナ。一応、確認しますが、ずっとお一人で……?」
知り合いが周囲に向けて、誰一人近付くなとばかりにオーラを放っているのだから、声を掛けようにもそんな言い方になるのも無理はなく。
「二番手でここに来たってことは、すぐ済んだみたいね」
「まあ、二人だったしね。あ、でもそのうちの一人は強かったかなぁ」
これでも『勇者』なのだから、せめて自分たちを救ってくれるだろう人物の顔を覚えておくなり、こちらの実力ぐらいは見抜けるほどの実力を持つなりしてほしかった、というのが感想だ。
「そっちは?」
「かなーり、舐められたわね。私がどこかのか弱いお忍びの貴族令嬢にでも見えたんでしょ」
「まあ、フィアーナのことはよく知らなければ、誤解するよね」
貴女たちが相手したのは、本当は他国の王女様だなんて言ったら、一体どんな顔をするか見物である。
「ウィルとララは……掛かってるみたいだね」
「ウィルはともかく、ララは近接戦闘に持ち込まれたら、反撃する手段がほとんど使えないしね」
大丈夫……だよね?
まさかとは思うけど、『囚われのお姫様』なんてことにならないよね?
「……ねぇ。もし、様子見に行くなら、どっちが良い?」
「そう聞いてくるってことは、私はウィルの方に行った方が良いんでしょ?」
いくらフィアーナ殿下が強いと言っても、同じく魔法を主体とするララの方に向かわせるわけにはいかない。
「そうだね。あの二人に限って、捕まったりしてるなんてことは無いだろうけど……」
フィアーナ殿下に向けて、『あるもの』を軽く投げれば、きちんと受け取ってくれる。
「何これ」
「一応ね。ウィルが大ダメージ食らってて、フィアーナがその治療してたら、守る人いなくなるでしょ?」
「つまり、これで呼べと」
「防壁展開されれば、それが合図。何とかして間に合うように向かうつもりだけど、少しでも遅れたら、こっちもアウトと思っておいてくれると助かります」
そんな状況に陥るつもりはさらさら無いけど、万が一と言うこともあるからね。
「変なこと言わないの。……うちの勇者様は、強いんだから」
少しばかり照れながらの言葉だったけど、それはちゃんと聞こえたから。
「それじゃ、今度は四人で」
「合流しましょう」
そして、私たちはそれぞれの救援に向かったのだ。
☆★☆
「はぁっ、はぁっ……! 全く、しつっ、こい!!」
魔導師に体力勝負を持ち込むとかマジふざけんな、と思いつつ、路地と言う路地の間を私は走っていた。
あちらにはまるで、私にも地の利があるかのように思えてるのだろうが、そんなものあるわけない。魔法でこの一帯の地図を視線の片隅に配置し、それを確認しながら、走り回ってるだけだ。
でも正直、そろそろ限界である。
「っ、」
魔法は数初打ったが、どうやら対魔導師対策された奴らを向かわされたのか、そのほとんどは効果がない。
となると、ウィルや殿下、榛名のところにだって、似たような形で相手が送り込まれているとなると、少しどころかかなり厄介である。
そこで走り回っていて、あることに気付き、足を止める。
「やっと、観念したか」
「観念? おかしなことを言うなぁ」
魔法が効果ないと分かってる相手に対し、魔導師が足を止めたのだ。
当然、何かするに決まってる。
「私はここだよ!」
「全く、うちの魔導師様ったら」
それは単なるタイミングだったのか、声を上げたからなのか。塀の向こう側から飛び越えて、私と追っ手の間に降り立つ一人の人物。
「体力が増えたからって、かなり無茶をする」
「でも、こうして来てくれたじゃん」
誰が来てくれるのかな、とは思ってたけど、最悪の状況が免れただけでも嬉しい。
「それで、ララの相手はあの四人?」
「うん」
フィアーナ殿下のように近接でも対応できない限り、魔導師は中距離~遠距離を得意とする。
そして、私の元に来た人はどんな距離であろうと対応できる人。
「さて、どれだけ興味が無いのか知らないけど――」
彼女は奴らに視線を戻す。
「他国の勇者とその一行の顔を覚えるなり、情報を得ておくなりしておくべきだったね」
だって、ノーウィストの勇者は――
「たとえ覚えていたとしても、相手との実力差ぐらい把握できるようにしておけ。刺客ども」
仲間や信頼した人を傷つけられるのを嫌うし、少しでも機嫌が悪いと面倒くさいところもあるけれど。
「ララ、やるよ。そして、さっさとウィルたちと合流する」
何より、フィアーナ殿下やウィルといるときのように、一緒にいると安心できるから。
「もちろん」
ノーウィスト王国宮廷魔導師としての力、見せてやる。




