第三話:魔法と剣の使い方を習う
さて、マジでどうしようか。
魔法はともかく、剣はマジで誤魔化しが利かない。
とはいえ、お姫様ーーエレンシア殿下がじっとこちらを見てるから、魔法での加減もしにくくい。チッ。
「……ふぁ」
「ハルナ! もっと真面目に練習してください! 足手纏いになりたいんですか?」
少しばかり欠伸をすれば、そう言われたため、ささやかな抵抗をする。
「……『火炎展開』、『雷鳴展開』、『氷結展開』」
「ちょっ、何ですか」
「珍しい。召喚されてまだ日が浅いのに、使い始めで『属性展開』まで得られるなんて、才能があるのかね」
「はは、どうなんでしょう」
『属性展開』。
各属性に存在する、その使い手が使える最大魔法数の魔法陣をその場に表示し、展開する。
そして、それぞれを展開する時の呼び名も属性ごとに違う。
私が使える属性で説明するのなら、火属性は『火炎展開』、雷属性は『雷鳴展開』、氷属性は『氷結展開』ということになる。
もちろん、『属性展開』は魔法がある程度使えるようにならないと、展開する事は出来ない。
「凄いな、鷺坂さん」
基礎よりワンランク上の魔法を使いこなせるようになった桐生君たちに言われてもなぁ。
「いや、でも、これかなり魔力持っていかれるから」
そう、『属性展開』は得られる情報の代わりに、かなり魔力を消費する。
とはいえ、今の『属性展開』だけで消費した魔力はほんの少し。だから、そんなに私にダメージはない。
その後、魔導師からは「『属性展開』できるなら仲間の面倒も見てあげな」という面倒くさい役目を与えられた。
でも、やることがないのは事実なので、彼らの面倒を見ることにした。
☆★☆
「重っ!」
「こんのっ!」
「無理して持とうとすると、身体が使い物にならなくなるぞ。特に腰」
剣の訓練の時間になり、エレンシア殿下に案内されて訓練場に来たのはいいけど、とりあえず剣を持とうとする二人に、思わずそう言ってしまう。
ちなみに、これは仲間の騎士に言われたこと。
「とにかく、まずは体力をつけなければ!」
と、訓練場を走らされたのは今では良い思い出である。
「鷺坂はいいのか?」
「んー? やっておいて損はないとは思うけど、人には向き不向きがあるから」
準備しない私に気づいたのか、鷹槻君に聞かれたので、そう返す。
私は確かに剣も使うけど、別のも使えるから問題ないんだけどね。
あと、栗山さんは魔法に集中する事にしたらしく、剣の訓練については後から追いかけるとのこと。
「そういう君はいいの? やらなくて」
「そうだな」
私の隣から離れて、「体力作りからだな」と言わんばかりに、先に走っていた二人に加わっていく。
すると、それを見ていたのか、騎士団長だか隊長だか分からないけど、それっぽい人が近付いてくる。
「お前は走らないのか」
「必要ありませんから」
それを聞いてどう思ったのか、模擬剣を目の前に突き出される。
「ふむ。かなり余裕のようだが、持てるのか?」
「余裕、といいたいところですが、あの二人を試した剣で言われても困りますね。持たせた理由なんて、体力や腕力、姿勢とかを見るためでしょう?」
「気づいとったか。あの二人は気づかなかったみたいだが」
さて、それはどうかな。
「気づいていながら気づかない振りをする。貴方こそ、一番試したいのはあの三人じゃなくて、私じゃないの?」
「……何者だ、君は」
「言うと思います?」
でも、サービスぐらいはしてあげよう。
「誰も見てないときに、お手合わせしてみましょうか。そうすれば、私が何者なのかは分かると思いますよ」
私が何者かは教えるつもりはない。
それでも、この国の勇者は彼らだから、その分頑張ってもらわないといけないかもしれないが。
その間、私はサポート要員と化していよう。
その後、限界まで走り回った三人に、飲み物を差し入れながらご苦労様と声を掛ければ、何でお前は走ってないんだ、と目で見られたけどスルーした。
三人も体力が残ったままの私を相手にする気はないのか、結局そのまま解散となった。