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期間限定勇者は  作者: 夕闇 夜桜
サーリアン国・王都~王都近郊編
27/50

第二十七話:正体を明かす~当日


桐生隼斗(前者)/鷺坂榛名(後者)視点




 ーー榛名(はるな)たちが、謁見の間に姿を見せる数分前。


 俺たちは朝食を終えた後、謁見の間に向かっていた。

 理由としては、国王様からの呼び出しという部分が強い。

 そして、その呼び出された理由というのも、大体の予想は出来ている。


「あれから一日は過ぎたわけだけど、俺たちに報告できることって、何かあるかな?」

「基本的に、鷺坂(さぎさか)向島(こうじま)たちが頑張っていたみたいだからな。そして、俺たちがやったことと言えばーー……」


 魔物を倒したり、奴の攻撃を受けただけ。


「鷺坂さんは呼びに行かなくっても良いのかな?」


 それは純粋な疑問だったのだろうが、今はタイミングが悪かったんだと思う。


「彼女なら、後で合流するそうですよ。先に謁見の間に行っているようにと」


 栗山(くりやま)さんの疑問に、エルがそう返す。


「後でって……謁見の間って、後で入ってこられるようなものなんですか?」

「普通は無理です。陛下が姿を見せてしまえば、何らかの事情が無い限りは、謁見が終わるまでは扉が開かれることはありません。彼女も一体、どうするんでしょうかね」

「どうするもこうするも……」


 (つぐみ)が何か呟いた気もするが、はっきりとは聞き取れなかった。


「推測などは後にして、そろそろ行きましょう。皆様をお待たせするわけにはいきませんから」

「それもそうだね」


 とりあえず今は、エルたちとともに謁見の間に向かった。


   ☆★☆   


「公の場でのご挨拶が遅れて申し訳ありません、陛下。ノーウィスト王国勇者、鷺坂榛名です。此度(こたび)は色々とご迷惑をお掛けいたしております」

「いや、構わんさ。(むし)ろ、こちらにも非はあったのかもしれないのだから、そちらが気にしないとはいえ、こちらとしては他国の勇者殿に対して、失礼をした」


 国王陛下に挨拶をする。

 私が勇者装束で謁見の間に入ってきたとき、反応は二種類だった。

 「何故? どうして?」という疑問を抱いたであろう面々と、「やっと来たか」というどこか面白そうにしている面々だ(イースティアメンバーは後者)。

 薄々勘付いていたであろう面々は、特に反応を示してはいない。


「けれど何故、今になって打ち明けたんですか?」

「タイミングからしても、ちょうど良い機会だから、ですかね。仲間がこの国に居るうちに打ち明けた方が、(のち)の行動もし(やす)くなりますから」

「……鷺坂さんは騙してたの?」

「隠してはいたけど、騙してはないよ。バラバラに召喚されてきたならともかく、同じ召喚陣の上に居て、『私は別の国の勇者なんだけど』なんて言えるわけないでしょ。そんなことを言えば、君たちは私のことを『ちょっと頭のおかしい人』とか『電波』だとか思っただろうし、こっちもそれは避けたかったからね」


 エレンシア殿下の問いに答えた後、桐生(きりゅう)君の問いにも答える。


「私が君たちの召喚に引っかかって巻き込まれなければ、こんな面倒なこともしなくて良かったかもしれないけどね」

「それは……」

「それは違うよ! だって、鷺坂さんが居てくれたから、私だって気まずい思いをしなくて済んだし、あのお店にも行けたんだし!」


 栗山さんが桐生君を遮って告げる。

 そりゃ、同郷者とはいえ男三人に女一人じゃ不安にもなるか。


「だから、面倒とか言わないで!」


 必死にこちらを見てくる彼女。

 後ろからとん、と小突かれて後ろを見れば、にやにやするララとフィアーナ殿下が居た。


「それに、正直、ヒントは沢山あったからなぁ。向島が『友人』って言った時点で勘付けたしさ。いやに仲が良いはずだよな。同じ『勇者』同士なら」


 確かにヒントは出したけど、私はそこまで察しろとは言っていない。

 それにーーと向島君に目を向ければ、肩を竦められた。


「俺は、鷺坂たちが勇者云々話してるのを聞いていただけだがな。この前の件で理解した」


 この前の件って、ラクライール戦の時のことかな?


「ーーどうやら、誤解も解けたようだし、貴女も『ノーウィストの勇者』として、明日の晩に予定している祝賀会に出席してもらえるかな?」

「祝賀会、ですか?」

「これから先、破壊箇所などを直していかないといけないわけだが、そうなると当分先になってしまうからな」


 陛下からそう告げられ、フィアーナ殿下に目を向ければ、頷かれる。


「そういうことでしたら、我々ノーウィスト一行、参加させていただきます。陛下」

「そうか。そういうわけだから、みんな彼女たちに対して、無礼や粗相が無いようにな。我はノーウィスト王国と戦争になることだけは避けたい(ゆえ)

「拝命致しました、陛下」


 陛下の言葉に、この場に集まっていた貴族たちも頭を下げる。

 これは少し、ややこしいことになったか?


   ☆★☆   


「あー、いつまで経っても、あの空間は慣れないや」

「その割には堂々としていたじゃねえか」


 所変わって、私の(使っている)部屋である。


「……間違ったことは言ってないはずだけど……うがぁぁっ!」

「今更何言ってんだよ。俺たちが手助けする隙すら無かったじゃねえか」

「『テメェら。口を挟んだり、邪魔するなよ』って牽制していたのは、どこのどいつだよ」

「だから、何らかの反応を示すはずだった貴族たちも静かだったんだね」


 納得だ。


「それで、勇者様たち。祝賀会の装束はどうするつもりかしら?」


 フィアーナ殿下の問いに、向島君と目を合わせる。


「この姿で良くない?」

「今からじゃ、どっちみち頼んだところで、間に合わないだろうしなぁ」


 現在進行形で着ている勇者装束に目を向けてみるが、私にしてみれば、これが勇者だと示せる装束なんだよなぁ。


「それでも、正装しようとする気は無いの?」

「逆に聞き返すけど、勇者装束は正装扱いしてもらえないの?」

「イースティアの勇者様はともかく、貴女は無理があるでしょ」

「男女差別だー」


 何も無いとは思うけど、帯剣ぐらいはしておきたいじゃないか。


「じゃあ、祝賀会用で勇者装束を改造……工夫するよ。それでどう?」

「あのねぇ……それと今改造ってーー」

「ねぇ、殿下。もう良いじゃん。それで妥協しようよ。サーリアンメンバーに対して、仕立て屋さんが大慌てみたいだし、そこに一人追加されても大変じゃない? 榛名が初めて顔見せするときだって、服から何だって大慌てだったんだからさ」

「むー……」


 ララが口添えしても、フィアーナ殿下が不服そうだけど、勇者装束の一部を変えるだけだから許してほしい。


「さて、と。そういうわけだから、材料調達しにいかないと」

「材料調達って、どうするつもりだ?」

「城下でそれらしいものを探してみるつもり。工夫すれば、いくらでも()かせられるからね」


 さて、どう化かそうか。


「イースティアメンバーも、その格好で出席するのか?」

「まさか。俺たちはともかく、女性陣は魔法使えるからな。仮に何かあったとしても、正装でも問題ないとは思うんだが」

「榛名ぁ」


 ウィルの問いに、アスハルトさんが答えるが、それを聞いたフィアーナ殿下が「どうしてもダメ?」と視線で問いかけてくる。


「着ないよ。魔導師組と違って、私は『勇者』だからね。それに、ドレスに帯剣はおかしいでしょ」

「う」

「身体のどこかに隠し持ったりすれば、問題なくないか?」

「短剣じゃあるまいし、どこに隠せと?」


 この際、何かにつけて文句を言ってると思われても構わない。

 魔導師組のように魔法で対応できないわけでもないが、何かあったりすると怖いからなぁ。


「大体、パーティー系に嫌な思い出があるから、ドレスを着て行きたくないの。勇者だと明かしたのに、絶対『勇者』だと思わずに声掛けられるって!」


 わなわなしながらそう話せば、「あー」と面々の方から声が洩れる。


「鷺坂の場合は、『勇者』って言うより、『どこかのお嬢様』に見えるかもしれないもんなぁ」

「椿樹!」


 クリスさん、気持ちだけ受け取っておきますよ。


「でも、そう言われれば、そうだよね。今日明かしたばっかりなんだから、勇者装束じゃなきゃ、誰も榛名が勇者だなんて思わないだろうし」

「……ララ、笑いながら言ってやるな。見ろ。榛名の奴、かなり落ち込んだじゃねぇか」


 ……部屋の隅って、良いよね。


「鷺坂と誰か一人でも一緒に居るか、声を掛ければ、問題無くね?」

「そうなると、貴方たちイースティアメンバーに任せることになるわよ? 私、挨拶回りしないといけないだろうし」

「俺とララも護衛として、殿下に付くことになるからな。つまりーー……」


 何か、視線を感じる。

 うん、話は聞いているから。分かってるよ。


「ま、何事もなく、上手く行けば良いんだけどね」


 ララが立ち上がり、部屋の扉を開く。


「きゃっ!」

「うわっ!」


 そして、二人ーー栗山さんと桐生君が転がってきた。


「こっそり聞くとか、おねーさん感心しないなぁ」

「あ、いや、これは……」

「あの、その……」


 笑顔のララに、(ども)る二人。

 ちなみに、ララは二~三ヶ月違いなだけでフィアーナ殿下とウィルとは同い年である(つまり、ララが二人に挟まれている形)。なので、桐生君たちよりも年上と言っても、間違ってなかったりする。


「鷺坂さんは祝賀会に着ていくドレスとかいらないのかなぁ、と」

「いらないよ」

「即答ね」


 栗山さんの疑問に即答すれば、魔導師勢に苦笑された。


勇者装束(この姿)で行くよ」

「そっか。その確認がしたかっただけなんだけど、部屋の前に居たのは、いろいろとタイミングを見ていただけだから」

「そっか。けど、ありがとうね」


 おそらく、メンバーを代表としてのこの二人だったのだろうが。

 軽く手を振って去っていく二人を見送り、私も財布などを身に着けて、立ち上がる。


「それじゃ、さっきも言ったけど、私は材料調達しに行ってくるから、後はもう適当に解散しておいて」

「は!?」


 ぎょっとする面々をそのままに、私は部屋を後にした。



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