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期間限定勇者は  作者: 夕闇 夜桜
サーリアン国・王都~王都近郊編
16/50

第十六話:お茶会のお誘い


桐生隼斗視点




「チーム名、かぁ」


 (つぐみ)からの話を聞いて、考える。

 どうやら、鷺坂(さぎさか)さんからそのことを聞かれてから、ずっと考えていたらしい。


「ゲームとかで使ってた名前はあるんだが、さすがにリアルで使うのはなぁ。気が引けるっていうか、何て言うか」

「それには同意だな」


 何かヒントでも有ればいいのだが。


「それにしても……何だか最近、城内が物々しくなったよな」


 今まで無かった訳じゃないが、城内を警備している騎士との遭遇回数に疑問を持ったのか、鶫が言う。


「俺たちが居ない間に何かあったのかも」


 昨日は城下に出ていたから、城内の様子は分からないが、何かあったことだけは分かる。


「あ、桐生(きりゅう)君! 吾妻(あがつま)君!」

栗山(くりやま)? どうしたんだ?」

「あのね。みんなでお茶会でもしようかと思って。お城の中、こんな風になっちゃってるけど、少しでも空気を変えようかと思って」


 なるほど、と納得してしまう。


「それで、メンバーは?」

「召喚された私たちだけかな。あ、エレンシア殿下も一緒なんだよ」

向島(こうじま)たちは呼ばないのか?」

「うん。今回は私たちだけでやろうって、エレンシア殿下と鷺坂さんとも話して決めたんだ」


 嬉しそうに、栗山さんが話す。


「鷺坂も? あいつ、よく受けてくれたな。最近は何か、ウィルさんたちとよく一緒に居ただろ」

「それについては、確認済みだよ。同年代との付き合いも大事だから、って返されちゃった」


 栗山さんが苦笑する。


「そっか。なら、俺も参加しようかな」

「俺もするよ」

「ありがとう。じゃあ、ここに鷹槻(たかつき)君も加われば、全員参加だね」


 場所は中庭ね、と伝えると、栗山さんが「鷹槻君にも知らせないと」と去っていく。

 どうやら、彼女の役割は連絡係だったらしい。


「そういえば、久しぶりか。召喚時のメンバーで集まるの」

「そういえば、そうか」


 王様に謁見してからは、向島たちとほとんど一緒に行動しているから、本当に召喚時のメンバーで集まるのは久しぶりだ。


「場所は中庭だったな」

「ああ。今からでも行くか?」

「んー、お茶会するとは言っていたけど、時間を聞き忘れてたね」


 凡ミスだ。鷹槻は聞いてくれているだろうか。


「鷹槻の所に行くって行ってたなら……結局、中庭か」


 あそこには大きな木もあるから、遅刻も何も無いだろう。


「殿下か鷺坂にでも聞くか?」

「まあ、その二人だと答えてくれそうではあるけど……」


 どこに居るんだろうか。


「城内を捜せば、どこかに居るだろ」

「そりゃ居るでしょ」


 片やお姫様、片や自由行動する人だし。

 で、少し捜してみれば。


「居たよ」

「ん? どうしたの。二人揃って」


 手に生クリームを持ったまま、こっちを不思議そうに見てくる鷺坂さん。

 ……うん、こっちが『どうしたの?』だよ。


「いや、何してんの?」

「お茶会用の、一部菓子制作」


 まあ、クッキーとか並んでいるのを見ると、大体予想できるんだけど。


「で、用件は?」

「リクエスト、有りか?」

「違うだろ。聞きに来たのは、お茶会の時間だよ」


 そういう風に言えば、鷺坂さんがあっさり「二時だよ。でも、準備とかあるから、二時半開始になるかもね」と答えてくれた。


「お茶会って言っても、格式()ったものじゃなくて、ちょっとしたお喋りの場として、捉えておいた方が良いよ。姫様も一緒だけど」


 なるほど。考え方を変えれば良いのか。


「で、リクエストは?」

「え、マジで言って良いの!?」

「作れる範囲でなら」


 何言おう、何言おう、とぶつぶつ呟く鶫に、鷺坂さんが冷静に「座る場所あるんだから、座って考えてねー」と言ってくる。

 それにしても、食堂なだけあって、良い匂いが漂ってくる。


「なぁ、鷺坂。チョコ系って、出来るか?」


 思いついたらしい鶫が、鷺坂さんの所へ突撃する。


「出来なくはないけど、時間掛かるよ?」

「食べられるなら、俺はいくらでも待つぞ」

「あー、うん。分かったから、ちゃんと作るから、顔を引っ込めてくれない?」


 うわぁ、厨房の皆さんの怒りが伝わってくる。


「おい小僧。こっちは忙しいんだ。邪魔するなら、出て行ってくれないか」


 ヤバい。この人、めっちゃ怒ってる。


「大丈夫です! 大丈夫ですから! 落ち着いてください!」


 鷺坂さんが、おそらく料理人の人を(俺の知る限りでは)全力で止めに行っている。


「桐生君! 君も見てないで、吾妻君を連れて早く出て行って! こっちはどうにかしておくから!」

「あ、ああ……!」


 とりあえず、鷺坂さんの言う通り、食堂から出て行く。


「……悪い、隼斗(はやと)

「謝るなら、俺じゃなくて、鷺坂さんに謝れよ。面倒な方を引き受けてくれたんだから」

「ああ、後で謝っておくよ……」


 中から、そんなに音がしないって事は、鷺坂さんがどうにかしてくれたんだろう。


「……お前ら、こんな所で何してんの?」


 声がした方を見てみれば、そこには向島が居た。


「入りたきゃ、入ればいいだろ」


 そう言って、向島が中に入って、数秒してからそっと出てきた。


「お前ら、何したの? 料理人の人たち、めっちゃ怒ってるんですけど」


 どうやら、中の様子を把握したらしい。


「鶫が興奮しすぎて、鷺坂さんに顔を近づけすぎたんだよ」

「……ああ、そういうことね。最近、出入りしているせいか、鷺坂の奴、料理人に好かれてるみたいだから、あいつが嫌がる素振りでもすれば、すぐに止めに入るみたいだからな」


 つまり、保護者だな、と向島は言ってくる。

 答えるときの間については、聞かない方が……いいよなぁ。


「でも、見ていた俺からしたら、鷺坂さんは嫌というより、困ったような顔していたけど?」


 それを聞くと、向島は考える仕草のまま、動かなくなる。何なんだろうか?


「まあ、そうなるだろうな。それにしても……お前、あいつに顔を近づけすぎた癖に、何の反応も無かっただろ」

「ああ、今思えば照れる素振(そぶ)りすら無かったよ! 何だろう。今になって、男として駄目みたいなこと言われてるように感じる……」

「……今はああなだけで、後で恥ずかしがりそうだがな」


 向島が最後に何て言ったのかは分からないが、視線が食堂に向いてるのを見ると、鷺坂さん関係なのは予想できる。


「そうだ、向島。聞きたいことがあったんだ」

「何だ?」

「お前と鷺坂の関係って、どういう関係なんだ?」


 単刀直入だった。

 俺たちと居るよりも、鷺坂さんは向島と居ることの方が多いから、俺も気になってはいた。


「何で、そんなことを聞くんだ?」

「何でって……」

「まあ、敢えて言うなら、恋愛関係では無いな。けど、もっと詳しく知りたいなら、本人に聞くんだな。本人が話さない限り、俺も話せないから」


 そう言って、去っていく向島。

 でも、何か上手く逃げられた気もするが、言われたことは正論のような気もする。


「隼斗」

「何だ?」

「俺、後でいろいろと聞いてみるわ」

「そうか」


 彼女が、素直に話してくれるなら良いのだが。


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