第十三話:城下に出る
「おぉ、こんな感じなのか。この国の城下は」
「そういえば、榛名は知らなかったのよね」
この国に来てからは、ずっと城の中でしたからねぇ。
「すっごぉい!」
ちなみに、桐生君たちも一緒です。
「っと」
「ああ、ごめんーーって、こらこら。人のもの取っていかない」
「うわぁっ!」
ぶつかったから、謝ろうとしたら、相手は子供だったのだが、何となく何か取られた気がしたので、捕まえてみた。
「君がどこの子かは知らないけど、もう少しだけ、人を選ぶ目を持ちなよ。相手が暴力的な人だったら、どうするの」
「……」
相手が根に持つタイプなら、厄介だったと思う。
「ほらほら、突き出さないであげるから、早く行く」
さっさとこの場を離れさせる。
私たちが相手だと可哀想だしね。
「あの子、貧民街の子かしらね?」
「だろうな。だが、それを見つけたのが、榛名で良かったのか悪かったのか」
「今回は良かったんじゃない? だって、ああ言って解放したってことは、あの子は良い方に転ぶんでしょ」
フィアーナ殿下、ウィル、ララがそう話す。
「良い方かはともかく、あの子、人を見る目はあるんじゃないかな。お金が有りそうな人として、私たちを狙ってたみたいだし」
「そこまで分かったのか?」
「今後の生活を考えるなら、多少のリスクがあっても、そうしないと生きられないんでしょ。ああいう子たちは」
こちらの世界で、そういう子たちを見てきたせいか、さっきの子のように、見極めるとまではいかなくとも、見れば分かるようにはなって来ちゃったのだけど。
「……ララ」
「うん?」
「私が居た世界へアクセスできた?」
「出来るには出来るけど、送るのは多分無理。榛名はサーリアンの陣を通って来ちゃったから」
「そっか」
確認してみれば、予想通りと言うべきか、そう返される。
「鷺坂さん、鷺坂さん」
「どうしたの?」
珍しく栗山さんが話しかけてきた。
「ちょっと、一緒に来て!」
「ちょっ……」
急に手を引っ張られたかと思えば、雑貨屋の前で止まった。
「男の子たち入りにくそうだったから、お店と距離が離れる前に、勢いで連れて来ちゃった」
「ああ、そういうこと」
納得しました。
「だったら、入ろう。私も探したいもの、あるし」
「うん」
そして、二人で雑貨屋に入るのだがーー
「おおっ……!」
「これは……」
綺麗というか、ファンシーっていうか。
とにかく、この世界と世界観が合っていない気がするのは、私の気のせいか。
「鷺坂さんっ! 鷺坂さんっ!」
栗山さんのテンションがおかしい。
「ほらほら、落ち着いて、ゆっくり見よう?」
「あ、ごめん……」
そのまま、二人で店内を見て歩く。
「……栗山さんって、桃色とかピンク系が似合いそうだよね」
「そうかな? 鷺坂さんは青とか緑系が似合いそうだけど……うん、これなら赤系でも合うね」
周囲を見回した栗山さんが何かを見つけたらしく、それを私の髪の毛の近くに当てる。
「あー……私のは良いから、自分が欲しいものを選びなよ」
「あ、うん」
栗山さんが見ている間に、私も欲しい奴がないか見ていく。
「……」
そういえば、うちのパーティは女三人も居るのに、街で見掛けても、こういう場所に来たことは無かったよなぁ。
「あ。これなら、良いかな」
根付けというかストラップみたいなものを見つけたけど、何種類かあったから、ララやフィアーナ殿下だけじゃなく、クリスさんやレアちゃんにも上げようかな。
「何かあった?」
「こんなにあると迷っちゃうよぉ」
栗山さんの様子を見に行ってみれば、いろいろと手にしながら唸っていた。
「結構あるみたいだし、欲しいのなら、次に来たときにも買ったら?」
「それは、そうなんだけどさぁ。そのとき売り切れたら、意味ないじゃん」
確かに、そういうことは元の世界の時にもあったけどさ。
「じゃあ、半分買ってあげるから、貸して」
「いや、さすがにそれは、鷺坂さんに悪いっていうか……」
そのまま、また悩み出す栗山さん。
気持ちは分からなくは無いんだけどさ。
「そろそろ戻らないと、みんなが心配して、捜し出しかねないから」
「うぅ……分かった。じゃあ、この三つだけにする!」
栗山さんは決めたらしい。
お金を払って店を出れば、こちらに向かって軽く手を振るララさんが居ました。
あ、何かすみません……。




