【『勇記』の過去。〜1年後〜】
あれから1年が経った。
馬鹿話や真剣な進路の話をしていたあの3人はと言うと、勇記は地元の工場に、美妃と良樹は同じ大学に合格、それぞれが新たな生活がスタートし、今の自分達に置かれた環境に慣れ始めた頃である。
冷たい初秋の風が心地よいこの季節、勇記は電車の中にいた。
『はー。やっと着いた。』
地元から電車で2時間かけて来たこの場所はというと、
『ゆーーうーーきーー!!』
改札を出るやいなや猛スピードで走って来る女の子。勇記はその子を抱きしめ一言、
『久しぶりだな、美妃。』
そう、美妃の進学先の大学がある場所。当然ながら美妃がいるならあいつもいる。
『おーおー、駅のど真ん中で見せ付けてくれるねお二人さん!』
後ろを振り向くと良樹がいた。
『なんだ、いたんだ。(笑)』
『なんだとはなんだ!お前が来るって聞いてはるばる来た親友にかける言葉かよ。』
ちゃかすつもりが少し良樹は落ち込んでしまった。
『嘘だよ嘘!さあ、俺こっち分かんないからもてなしてよ!』
すると落ち込んでいた良樹が何を思ったかクルっとこっちを向きニヤニヤしながら
『勇記!俺先週合コンとやらに行ったんだけどなかなかなネタ手に入れたぜ。』
『おっ!なんだよ良樹コソっと楽しい事やってんじゃん。俺にも紹介してよ(笑)ん?』
冗談交じりに良樹とこんな会話していると背後から殺気を感じ振り向くとそこには微笑みながらにらみをきかす美妃が仁王立ちでこっちをガン見していた。
『なにやら楽しそうなお話ね。私も混ぜてもらおうかしら。』
すかさず勇記が、
『冗談だって冗談!本気にするなよー。』
『そんなことばっか言ってたら本当に私も浮気しちゃうからねっ。』
ふくれっつらの美妃を勇記がなだめる。
『すいません、人生において浮気などやりません。ここに誓います。アーメン。』
片膝をつき勇記は美妃に謝っている。
『勇記、お前の将来楽しみだな(笑)。』
高校時代の様に3人は仲良く馬鹿話をしながら街へ歩いて行った。この環境がのちに大きく3人の関係を変えていくことになる。