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突然の告白に、思考はついていけなかった。ついていかなかった。


「僕は君が好きだ。好きになってしまった。だから、君の隣にいさせて欲しい。いや、君に隣にいて欲しい」


弾丸のように飛び出す言葉の数々に、耳だけがついていく。

何かを話している、それだけの認識しか混乱した彼女の頭ではできなかった。


きりのない、雨のように降り続く言葉の数々にアイリッシュは傘をさした。


「私はあなたを殺しにきた」


棘のように意思の強い重く尖ったその声に、少年は言葉を飲み込んでしまう。


「あなたが私をどうしようと構わないけれど、解放したのなら必ず殺しにかかるわ。それが私の仕事だもの。あなたがどう思おうと、私はあなたを手にかける。ただ、それだけよ」


床に広がる炎の中で、キラキラと輝く二つの瞳。彼女の意思の強さが伺えるそれを少年が見逃すはずがない。


「なら僕を、殺したことにすればいい」


「何を……」


言っているの。

そう続けようとしたのに、声がかすれてうまく出せなかった。


「実は僕、身代わりなんだ。君が今日殺すはずの人間は、ここじゃない別のところで身を潜めてる。だから、どうせ僕を殺しても君の仕事は失敗する」


衝撃的な事実に、アイリッシュは苦悩した。本来の標的でない、ここに居るターゲット。少年の言葉が本当ならば、どうせ失敗に終わるこの仕事。


「君が好きだ」


追い打ちをかけるように注がれた、甘い言葉。

生来、愛情などもらったことのないアイリッシュにとって、始めての好意の言葉。心が揺れないはずがなかった。


好き。

それが何かは説明はできない。

けれど、とてもあたたかいものだという事は知っている。


「すきにすればいい」


風の音で消えてしまうような声でいったそれは、少年の耳に届いてしまったようで


「ありがとう」


そんな言葉を返された。



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