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第五話 聖地 ~The whirlpool~

 数日後、二人は廃墟と化した村に辿り着いた。街道から少し離れた位置にある村の周囲は所々焼け焦げて、乾いた風に茶色い砂埃が舞っている。

「酷いな」

 テオは口元を袖で覆いながら呟いて、村の入り口から家々を眺め渡した。砂レンガで作られた椀を伏せたような形の家は、あるものは風化したように崩れ落ち、あるものは砂に戻って小さな丘を作り、あるものは爆発でもしたかのように周囲にレンガを飛び散らせている。

「この辺りの村が捨てられてからまだ何ヶ月も経っていないはずなのに、この荒れ方は酷すぎる」

「戻った方が良い?」

 荒れ果てたと言うよりは打ち壊されたような形跡のある村の様子に、ランが怯えたように立ち止まる。

「いや。とにかく、行ってみよう。食料をもらわないことには、これ以上進めない」

 テオがレプカの手綱を引くと、ランも小走りで追いつき、並んで歩き始めた。


 村の中央を貫く広い道を歩きながら、ランは今にも建物の影から誰かが襲いかかってくるのではないかと恐れているように、不安げに周囲を見回す。同じように気配を伺いながら歩いていたテオは、ふと前方へ目をやって思わず立ち止まった。

 村の中央の広場に面して、村で唯一高床式の作りになっている社が建っていた。クスファムの村にある社と同じように、鮮やかな赤で彩色されていたはずの柱は無惨に焼け焦げ、屋根瓦も崩れ落ちて、天井を支えていた骨組みがむき出しになっている。

「……火をかけられたのか……?」

 テオは社を見上げ、呆然と呟いた。

 先祖代々の土地を捨てられず、残った者も多いと東へ向かう人々は言っていた。だが、ここまで来ても人の気配はなく、村の要であるはずの社は荒れ果てたまま放置されている。

「テオ……」

 レプカにほとんど寄りかかるように身を寄せながら、ランが小さな声で呼びかける。

「……向こうに畑があるようだ。悪いが、勝手に貰っていこう」

 テオは目の前の社の様子から、無理矢理視線を外して言った。ランの視界から社を隠すように、レプカの手綱を引いて右へと逸れる。

 広場を横切るとき、社の方から流れてきた空気には、微かに腐臭が混じっているようだった。


 ほとんど野生に戻っていた作物をより分け、さらにランが怒れる神々の影響を受けていないものを選び出す。レプカの背に食料を積みながら、テオはこの先食料を手に入れる機会はあるのだろうかと考えていた。

「ほかの畑も当たってみた方が良いだろうな」

「だめ」

 思いがけず即答されて、テオは思わず背後にいたランを振り返る。

「風の気配がする」

 ランは胸元の水晶を強く握り締めて呟いた。

「風?」

 動くものの無い村の中には、今は風すらも吹いてはいない。レプカの草を食む音だけが、不気味な沈黙を破っている。不審そうに問い返したテオに、ランはいっそ悲愴なほど真摯な表情で頷いた。

「風たちが言ってるの。殺せ、って。もっと殺し合えって」

「殺せ?」

「テオならわかるはず。周囲の魔力分布をサーチしてみれば……」

 思わず上空を見上げるテオに、ランの切羽詰まったような調子の声が訴える。慌てたためか、言葉にテオの知らない単語が混ざっている。

「魔術を使う前の準備。周りに合わせるために周りを探る。その段階だけをやってみれば、わかる」

 もう一度ランに視線を落として眉根を寄せたテオに、ランはもどかしそうに歩み寄りながら言った。それでようやくランが何をしろと言いたかったのかがわかって、テオは剣の柄に手を置いて周囲の気配を探る。感じられた魔力は、強い力を持つ風の神のものだった。おそらくこの村の守護神だったのだろう。だが、今は無言のまま突き刺さる強い敵意しか感じない。神々の言葉を聞くことの出来ないテオにもわかるほどの、強く冷たい意志だ。

「行こう、テオ。ここは、安全じゃない」

 ランが辺りをはばかるような小声でささやく。テオは無言で頷き、落ち着かない様子で草を食んでいたレプカに食事を切り上げさせ、歩き始めた。

 帰りは行きよりも早足で、行きよりも周囲に気を配りながらの道行きとなった。街道へ戻る道すがら、ふと上空を見上げれば、先ほどまではどんよりと垂れ込めていた雲がめまぐるしく形を変えている。地表の空気は重く湿って動かないが、上空では風が荒れ狂っているようだった。


 さらに西へ進むうちに、植物は奇妙な形状を示し始めた。大気は敵意に満ちて、強く二人を圧迫した。遠く目指す方向には毎日のように黒煙が上がり、不穏な雰囲気を伝える。食事は東から持ってきた食料と、ランが大丈夫だと判断したわずかな植物だけで食いつないだ。空気は熱せられて湿っぽく、ただ歩き続けるだけでも次第に息が上がる。時折空気が酷く薄くなる瞬間もあって、そのたびにランは立ち止まって小さく呪文を唱えた。


 廃墟となった村を出て一週間後、テオは道の脇に不恰好な車輪を付けた大きな鉄の箱がいくつも転がっているのを見た。生存者がいることを考え、テオはランとレプカを街道に待たせて様子を探りに行った。

 鉄や鋼で出来ているはずの箱のいくつかには穴が開き、あるいは半分に裂け、よじれつぶれているものもあった。周辺の草むらは焼け焦げ、地面には穴が穿たれている。遠くから見えていた煙はこれだったのだろう。焼け焦げた草むらや穴の底では、楽園の住民と鉄を使う者たちが重なり合うようにして腐臭を放っていた。動くものの気配はどこにもなかった。

 テオは、街道で待つランに向けて、来るなと仕種で示しながら引き返した。

 奇妙な戦場だった。鉄の箱に乗った者たちが楽園の住民を虐殺したのかと思ったが、どうもそうではないらしい。鉄の箱に乗った者たちが、刃物を武器としてはあまり使わないということをテオは知っている。彼らがよく使用する武器は長短様々の筒のようなもので、それによって出来る傷は火傷の痕のような独特のものだ。楽園の住民にあった刀傷や、馴染みの薄い服装をした者たちにある独特の傷跡。味方同士、互いに争い合ったとしか思えない。

「テオ? どうかしたの?」

 街道へ戻り、服の裾に付着していた草の葉を払ったテオにランが首を傾げる。

 なんでもないと答えようと顔を上げて、テオははっと身構えた。

「……人の気配がする」

 ランとレプカを庇うように気配の方へ向き直り、剣を抜いたテオの視線の先の草むらが揺れる。

「何者だ!?」

 鋭く誰何する声に応えて現れたのは、複数の人影だった。

 厳しい表情で鍬や鋤や錆の浮いた剣を構える男たちは、鮮やかな魔除けの紋様の描かれた服を身につけた、楽園の住民たちだ。

「我らはこの地を守る民。汝らが狂える者ならば、ここを通しはせぬぞ!」

 リーダー格らしい壮年の男が、一団の中から一歩踏み出して声を張り上げた。男の言葉と共に膨れあがった殺気に、テオはいつでも呪文を放てるよう、周囲の魔力を引き寄せる。

「待ってください」

 一触即発の空気に気づいたランが、テオの利き腕を押さえながら前に進み出た。

「私たち、まだ神々の狂気に侵されてはいない。あなた方も、そうでしょう?」

 緊張しつつも敵意は含まない口調に、男たちの間に困惑した空気が流れる。指導者らしい男は訝しげにランとテオを見比べ、身振りで男たちを制止してからこちらへ歩み寄った。

「確かに、理性を失ってはおられぬ様子だな」

 テオは男の口調から、とりあえず争いにはならなさそうだと判断して切っ先を地面に向ける。男は一行から十分な距離を置いて立ち止まり、よく通る声で言った。

「なれど、我らにはそなたたちが邪悪であるか否かは判断がつかぬ。武器をこちらに預け、さとまでご同行願おう」


 男たちの郷があるという森は、街道から少しそれた場所にあった。クスファムの村の周囲にあったような、深くて穏やかな森だった。

「あの鳥、クスファムの森にもいたね」

 ランが無邪気な調子で言った。周りを見知らぬ男たちに囲まれて連行されている途中だというのに、むしろ街道を歩いていたときより落ち着いているようだ。

 テオはランのようには緊張を解くことができなかった。剣を取り上げられていたせいもあるが、この森は荒廃した周囲の環境とあまりにもかけ離れている。不自然なものを感じずにはいられない。

「ラン、この森はどうなっているんだ?」

 小声で尋ねると、ランは木立の上をさまよっていた視線をテオに向け、やはり小声で答える。

「この森、守護している神様がいる。だから怒れる神々の影響をまだ受けていない。ここは安全。今は、まだ」

 ランはそう言って、少しだけ苦しそうに笑った。


 細い獣道を行くうち、前方から強い水音が聞こえだした。滝の音のようにも思えるが、密生した木々の間からは先の様子はうかがえない。男たちは押し黙ったまま、水音の方へと進んでいく。

 さらにしばらく行くと、一行の上に水飛沫が降り出した。見上げれば、周囲の木々は飛沫に濡れ、雲の向こうの陽光をわずかに弾いて輝いている。よく茂った葉の向こうに時折きらめくものが水源なのだろう。男たちはそこを目指しているようだった。

「あれは?」

 ランが向かう先を指差し、側にいた男に尋ねる。

「あれは我らの聖地にして最後の砦。我らを守護せし大地の神の顕現した姿であり、我らの住処でもあるイルキスの樹です」

「樹……?」

 テオは目を細め、木々の間からそちらを透かし見ようとした。向かう先にそびえ立つ何か大きなものは、とても樹木には見えない。むしろそれは、渦巻き立ちのぼる、水で出来た巨大な竜巻だ。

 近づく程に水音は耳を聾するほどになる。会話もままならない轟きに、一行はただ黙々と足を進めた。


 水の竜巻の前で森が途切れ、代わりに澄んだ水をたたえた湖が現れた。視界一面を覆い、天頂まで達するかに見える水の竜巻は、その湖の水から立ち現れている。

 リーダー格の男は、そこで待てと仕草で示し、一行を置いて岸辺へ歩み寄った。小さな村ならば楽に飲み込んでしまうだろう巨大な竜巻の前で、男はひどく小さく、頼りなげに見える。男は竜巻に向かって両腕を差上げ、何か呪文を唱え始めた。水音にかき消されて声は聞こえなかったが、男の呼びかけに応えて湖の水が割れてゆくのが、少し離れた場所に立つテオからはよく見える。水は男の足下から通路状に割れ、渦巻く竜巻もその場所だけは避けて逆流してゆく。割れた水の向こうには、竜巻に守られてそびえ立つ大樹が、その巨大な幹を覗かせていた。樹は数種の樹木が絡み合って育ったもののようで、場所によって葉の色や実った木の実の形が違っている。

 道が完全に開くと、男はこちらへ振り向いて頷いた。周囲の男たちに促されるまま、テオとランはその道へ歩き出した。

 割れた水が壁となってそそり立つ通路を抜け、湖底に張った大樹の根に刻まれた段を登って竜巻の内側に入る。

 竜巻の内側に入ってしまえば、耳を聾するほどだった水音はささやかなせせらぎほどにしか聞こえなくなった。

 節くれ立った巨大な木には、そちらこちらに梯子や吊り橋が架けられ、穿たれた穴や洞が住居となっていた。二人を連れてきた男たちは、レプカを下層に残して、木肌に直接杭を打ち込んで作られた階段を上層へ上っていく。張り出した枝々で機織りや木の実の採集に精を出す人々を横目に見ながら、人口は百人にも満たないだろうとテオは判断を下した。

 住居が集中している辺りを超え、さらに上層へと上り続ける。手すりもろくに無い階段から下を見下ろすと、もうかなりの高さになっていた。幹の太さも、ここまで登ってくると家一つ分程度まで細くなっている。

 ふと、先頭を行く男が立ち止まった。

「入りなさい。そなたたちが邪悪なものであるか否かは、巫女様が判断してくださるだろう」

 男が指したのは、緻密な紋様の施された布で外界と隔てられた木の洞だ。布を押し上げて一歩足を踏み入れると、透明な緑色の光が二人を包み込んだ。光は、部屋の中心にある光の滝から発せられていた。滝はちょうど幹の中心に位置する天井の洞からあふれ、同じく床の中心に開いた穴へ音もなく落ち込んでいる。その穴の前に、こちらに背を向けて一人の巫女が座っていた。部屋の中にいたのは、彼女一人だけだった。

「お待ちしておりました」

 滝の手前に座っていた巫女は、立ち上がって一同を迎えた。不思議と年齢を推し量ることの出来ない容貌の、白い髪の女性だった。髪には色とりどりの組み紐が編み込まれ、着ている服には神々との交信を助ける呪いが、色鮮やかに織り込まれている。

「そしてヤスリブ、よくぞ帰りました」

 巫女に穏やかな視線を投げかけられたリーダー格の男が、黙って頭を下げる。

「外の様子は如何でしたか?」

「暗い知らせばかりです」

 ヤスリブはため息と共に首を横に振った。

「我らの他に、この地に残っている者は見つかりませんでした。そこの二人以外は」

 巫女に視線を向けられたランが、一歩進み出る。

「あなた方も、この地を去らなくてはならない。いずれ、神々の怒りはこの地にも及びます」

「それはできません。我らは最後の一人となろうとも、この地を守らねばならない。我らの神がこの地におわす間は」

 巫女は硬い表情で棒立ちになったランに、穏やかに笑いかけて背後を振り仰いだ。

「その光が、御神体、ですか?」

 ランはかすれた声で問いかけながら、巫女に歩み寄る。

「そう。この地を守る神の、かりそめの姿たるイルキスの精髄。流出せし神の魔力です」

 ためらうことなく巫女の隣まで行って光の滝を見上げたランに、巫女は厳かに答えた。

「大地の神ですね」

 ランは低く呟いて、両手を光の滝へと伸ばす。

「聖なる光ぞ! 触れてはならぬ!」

 ヤスリブが大声で制止した。ランはゆっくりと振り向くと、何を言われているのかわからない様子で瞬きをする。

「……ラン?」

 茫洋とした視線がまるで違う世界を見つめているようで、テオは不安になる。

 ランはテオの呼びかけには答えず、表情を消して再び光の滝へ手を伸ばした。ランの手のひらに緑色の光が降り注いで弾ける。触れた箇所から、ランの手が滝と同じ色に透けてゆく。

「貴様!」

 ヤスリブがいきり立って剣を抜いた。それに応じるようにテオも身構え、周囲の魔力を引き寄せる。

「ヤスリブ、おやめなさい!」

 ランを見守っていた巫女が鋭くヤスリブを止めた。

「しかし、巫女様!」

「いいのです、行かせておやりなさい。無理に引き止めるのは危険です」

 言い争っている間にもランの姿は透けていき、ついに緑色の燐光を残して、倒れこむように光の中へ姿を消した。

「……何が起こった?」

 呆然と静まり返った中、テオは身構えたまま巫女に視線だけを向けて訊ねる。

「この光は神の力そのものであると同時に、神々の領域への入り口です。光の中へ消えたということは、神々の領域へ行かれたということです。神々の領域へ辿り着けるのは神々に近い者だけ。これほどの力を持った巫女は私の知る限りでは居りません」

 答えた巫女の声は微かに震えていた。それが初めて目にした現象に対する畏怖によるものなのか、興奮のためなのかは、テオには判断がつかない。

「戻って来るのか」

「わかりませぬ。我らの知識にこのようなことは記されていない」

 テオはため息と共に構えを解き、光の滝の前に進み出て目を細めた。光の滝は、相変わらず穏やかな緑色の光を放っている。

「待つしかないということか」

 ため息をついて巫女を振り返る。

「俺たちはユリンの街を目指している。ランが戻ってくれば……明日の朝にはここを出るつもりだ」

「ユリン……天籟てんらいの砲座を?」

 巫女は眉根を寄せて首を横に振った。

「ユリンは我らを受け入れることはありませぬ。ユリンに入ることを許されるのは、『あちら側』に属する者、知ることを許された者だけです」

 そう告げた巫女の声は、もはや震えていなかった。探るような視線をテオに向けてくる。

「ランはユリンに住む者たちと同じ側の人間だ」

「では、貴方は?」

「俺は……」

 射るような視線で見つめられて、テオは一瞬答えに迷い、瞳を伏せた。けれど、始めから答えるべき言葉は一つだった。

「……どちらでもない」

 答えた瞬間、巫女の表情がふっと和らぐ。その表情で、もしかしたらこの巫女も自分と同じ『どちらでもない』人間なのかもしれないと、テオは思った。だが、そのことを問いかける前に、巫女ははっと視線を上げる。テオも背筋が泡立つような気配を感じて、光の滝へ振り向いた。

 いつの間にか、光の滝は明滅を始めていた。

 強く渦巻く魔力を感じる。テオに魔術を教えた母は、強い魔力は他者のありように歪みをもたらすと言っていた。これほどまでに強力な魔力の渦は危険だ。

 滝を一段と強い光が駆け抜け、いくつかの球体となってしこりのように滝の中にとどまる。その球体は泡がわき上がるように見る間に数を増し、寄り集まって人の形を取った。

「ラン!」

 テオはその光に向かい、呼びかけながら手を伸ばす。腕の中へ倒れこんできたランは、目で見ることができるほど強く濃密な魔力をまとっていた。

「だめ、触っては……危険……」

 緑色の光に包まれたままの腕で、ランはテオを押して体を離そうとする。

「そのくらい見ればわかる」

 テオは肩で息をするランを一言でたしなめて、低く呪文を唱えた。ともすれば飲み込まれそうになりながらも、少しずつランの魔力を落ち着かせてゆく。

「大丈夫か」

 明滅する光がランの上から消え、肌が泡立つような気配も薄れてきた所で、テオはランの肩を支えながら訊ねかけた。

「……うん。……ありがとう」

 ランは小さく息を吐き、テオの腕にすがって立ち上がる。そのまま周囲を見回して、ランは厳かに口を開いた。

「この村を守護している神は、貴方たちを守って東まで行くと言っています。怒れる神々の影響を受けてしまった方がいれば、今、私が出来る限り治療いたします。だから……だから、皆さんは一刻も早く東へ向かって下さい」

 呆然と見守っていた人々にそう言って、巫女の方へと向き直る。

「巫女様、これを……」

 巫女が両手を差し出すと、ランはその手のひらに胡桃ほどの大きさの種を乗せた。巫女は種に視線を落とし、静かに微笑んで頷く。

「……聖なる木の種ですね。信じましょう。貴方の言葉が、真実我らの守護神から出たものであると」

 ランは苦しそうに微笑んで頷いた。

「ありがとう。準備が出来次第東へ向かってください。出来る限り早く。でもあせらずに。この村を守っている神様は、貴方たちを見捨てたりはしないから」

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