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『世界は魔術でつくられる 〜術式を消去する左手を持つ少年、最強の師匠に拾われて理を書き換える〜』  作者: 三ノ宮 櫻


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第39話 王国騎士団西部隊長

 学校の中庭にてこれからの動きを相談していたレオンたちの前に、その男は唐突に姿を現した。

 ゆっくりと歩いてきたのは、深緑の外套を羽織り、いかにもガラの悪い笑みを浮かべた男だ。


「よぉ。テメェらか、北部で暴れたガキどもは。……白炎の旦那を助けたってから、どんなツラ拝めるかと思ってよ」


 男――西部騎士団長ジルヴァ・クロムウェルは、首をボリボリと掻きながら、値踏みするようにレオンたちを睨みつけた。その体から放たれるのは、戦場を幾度も潜り抜けた者特有の濃密な殺気だ。


「……騎士団の隊長さんが何の用だ」


 レオンが前に出ると、ジルヴァの瞳に好奇の光が宿る。


「かっかっか! 挨拶代わりだぜ、悪かったな。……だが、いいぜ。その面構え、ただの学生じゃねえ。特にテメェ、レオンっつったか? ……魔力量は大したことねえが、中身が真っ黒で見えねえなァ」


 ジルヴァが腰にある2対の短剣の柄に指をかける。チリ……と鋭い風が駆け抜ける。


「……やる気か?」


 レオンが左手を構え、クラリスは杖を、ルシフェリアは無言で短剣を抜く。


「ま、待ってください、ジルヴァ様! 理由もなくこのような……っ」


 エレナの制止にも、ジルヴァは「あァ?」と不遜に鼻を鳴らすだけだった。


「理由なんてのは後からついてくるもんだぜ、お嬢ちゃん。……だが、ここは狭すぎて踊るにゃ不向きだ」


 ジルヴァは指先で窓の外にある演習場を指し示し、クイッと首を動かした。


「あっちに行こうぜ。テメェらの実力が本物か偽物か……俺が直々に解体して確かめてやるよ」


 一陣の突風が吹き抜けたかと思うと、ジルヴァの姿はすでに中庭から消え、演習場へと向かう風の道筋だけが残されていた。


「……待ちなさい、ジルヴァ様! 全く、お父様は何を考えて……!」


 エレナが憤慨しながらも後を追おうとする。


「……おいエレナ。あいつ、本気だぜ。遊びで済む相手じゃねえ」


 レオンは冷徹にジルヴァの残した魔力の質を分析し、演習場へと歩き出した。


 演習場の広場に足を踏み入れた瞬間、空気が鋭く鳴った。


「オラオラ! もう始まってんだぜ! ノロマに構えてる暇なんてねえだろッ!」


 ジルヴァは一切の予備動作なく、短剣を軽く振るった。放たれた風の刃が真空の音を立ててレオンたちを襲う。


「光の防壁!」


 エレナが即座に割り込み、光の防壁を展開する。防壁と風の刃が衝突し、火花のような魔力の残滓が周囲に飛び散った。なんとか防ぎきったものの、エレナの腕にはその衝撃の重さが伝わっていた。


「隊長だか何だか知らないけど、あまりに失礼よッ! いきなり攻撃してくるなんて、騎士の風上にも置けないわ!」


 クラリスが怒りに顔を赤くし、杖を突き出す。


「焼き尽くせ、白炎火球!」


 白炎の火球が一気にジルヴァを呑み込もうと迫る。だが、ジルヴァは逃げるどころか、不敵に笑ってその火球に一歩踏み出す。


「かっかっか! 白炎の旦那の嬢ちゃんか? だがよぉ、こんなチンケな炎じゃ俺の服の端っこすら燃やせねぇぜ!?」


 ジルヴァは2対の短剣を交差させ、目にも止まらぬ速さで斬りつけた。

 凄まじい風圧が白炎を物理的に叩き割り、霧散させる。炎の勢いは完全に封じられ、熱気さえも吹き飛ばされてしまった。


「……炎を斬りやがった」


 レオンが目を細める。ジルヴァの風は、大気の流れを完璧に掌握し、魔力の構造そのものを切り刻む精密な技術に基づいている。


「さぁて、次はどいつだ? 突っ立ってるだけなら、その白

い首をまとめて刈り取ってやるぜ!」


 ジルヴァが短剣を逆手に持ち替え、地を蹴る。その速度は、風と一体化したかのように異常なほど速かった。

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