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『世界は魔術でつくられる 〜術式を消去する左手を持つ少年、最強の師匠に拾われて理を書き換える〜』  作者: 三ノ宮 櫻


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第4話 魔族の脅威、舞うメイド

「…っ、ふざけないでよ! 結界を抜けたなら、焼き尽くすまでよ!」

 

 クラリスが執念で杖を振り抜く。

 極限状態で放たれたのは、彼女の全魔力を注ぎ込んだ白炎の火球。至近距離、回避不能。


だが――。


「……無駄だと言っただろう?」

 

 魔族が嘲笑い、指先を一回なぞる。

 直後、白炎の槍は魔族の目の前で「折り紙のように」不自然に折れ曲がり、主であるクラリスへと逆流した。


「えっ……あ、あたしの術式が、書き換えられ――」

 

自分の魔力に飲み込まれる。死を確信し、クラリスが目を閉じた瞬間。


「ルシフェリア」


 レオンの静かな、けれど絶対的な指示が飛んだ。



 パキィィンッ!


 空間が割れるような音と共に、クラリスの体が、まるで透明な巨人に攫われたかのように唐突に宙へ浮いた。


「ひゃっ!? な、何!?」

 

逆流した白炎が、クラリスが先程までいた場所を空虚に焼き払う。

 当のクラリスは、誰もいないはずの虚空で、まるで見えない椅子に座らされているかのような奇妙な体勢で浮遊していた。

 実際には、《透明魔法》を展開したルシフェリアが、クラリスを横抱き(お姫様抱っこ)にして、瞬時に間合いを離したのだ。

 クラリスから見れば、視界にはレオンと魔族しかおらず、自分を抱えるルシフェリアの姿は、光の屈折によって完全に消失している。


「……あ、あたし、浮いてる……!? な、なんで!?」

な、なんなのよこれ! 離しなさい……あ、いや、離さないで! 落ちるぅ!」


「……少し、騒がしいですよ」


 透明な腕に抱かれ、宙を舞う恐怖に叫ぶクラリス。

 ルシフェリアは魔族の追撃を紙一重でかわしながら、訓練場の隅にある石造りのベンチへとたどり着く。


 直後、クラリスを抱えていた力が唐突に消失した。


「わぷっ!?」

 

優しく降ろされるどころか、ルシフェリアは「荷物でも放り出すように」、クラリスをベンチの座面に雑に突っ伏させた。

 クラリスは顔面から石の座面に衝突しそうになりながら、必死で踏ん張る。


「ちょっと! もう少し丁寧に扱えないわけ!? あたし、これでもシルバーフレイム家の――」

 

文句を言いようと顔を上げたクラリスの目の前で、ふわりと光の屈折が戻り、ルシフェリアの姿が顕現した。

 ルシフェリアはクラリスの抗議など一切耳に入っていない様子で、無造作に彼女のスカートに付いた土を払い落とすと、一礼もせずにレオンの方へと視線を戻す。


「命があっただけ幸運だと思ってください。それと……あまりご主人様の手を焼かせないでいただけますか。これ以上の乱入は、掃除の邪魔ですので」

 

その瞳には、一欠片の情愛も、心配の色もない。

 あるのは「レオンの邪魔になる異物を排除した」という事務的な充足感だけだ。


「な、なによあの子……! 助けてくれたのか、追い払われたのか分かんないじゃない……!」

 

クラリスが呆然と呟く中、ルシフェリアはすでに背後の短剣に手をかけ、レオンの背中を守る「盾」としての配置についていた。

 

 前方では、魔族が苛立ちを露わにし、四本の触手を凶器のようにしならせている。 


「逃がしたか……。だが、盾を失った貴様に何ができる?」

 

 魔族の嘲笑に対し、レオンは左手の白手袋をゆっくりと脱ぎ捨てた。


「……盾? 勘違いするな。あいつを下がらせたのは、お前を消す時に巻き込みたくなかったからだ」

 レオンが踏み出す。

 

「火の粉さん、そこでよく見てろ。……魔術ってのは、こうやって壊すんだ」

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