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『世界は魔術でつくられる 〜術式を消去する左手を持つ少年、最強の師匠に拾われて理を書き換える〜』  作者: 三ノ宮 櫻


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第38話 集結

 王都のアステリア王国騎士団本部。重厚な円卓を囲み、王国の盾たる隊長たちが一堂に会していた。

 中央に座る総団長アルガス・ゴールドバルトが、重々しく口を開く。


「……急に集まってもらったのは他でもない。北部にて、ヴォルカニカスが魔族の進撃を受け、深手を負った」


「あァ!? あの白炎の旦那がやられたってのかよ!」


 ジルヴァが椅子をガタンと鳴らして身を乗り出しました。不敵な笑みを浮かべつつも、その瞳には戦慄が走っていた。


「かっかっか! あの親父をボコるなんて、一体どんな化け物だよ。……興味が湧いてきたぜ」


「ヴォルカニカスさんが……」


 ガルドスは痛ましげに眉をひそめ、真面目な顔つきで拳を握りしめる。


「……それで、その魔族はどうなったのです? 北部の兵だけで撃退できるような相手ではないはずですが……」


「……あら恐ろしい。でも、無事だったのでしょう?」


 フェリスが妖艶に微笑み、長い髪を指で弄びながらアルガスの反応を伺う。

 アルガスは、一同を見渡してから静かに告げる。


「撃退には成功した。……ヴォルカニカスと共に戦った、学生たちの手によってな。以前、オーリエル王国を危機から救ったという、あの若者たちだ」


「それって、貴方の娘さんのことじゃない。……ふふ、よく出来た娘さんねぇ。親の顔が見てみたいわ」


 フェリスのからかうような言葉に、アルガスは表情を変えませんでしたが、室内には一瞬、奇妙な沈黙が流れる。


「規律の乱れは王国の乱れ。学生という不確定要素を戦場に出すなど、あってはならないことです。ましてや魔族を撃退したなど……その力が正しきものか、厳重に調査する必要がありますね」


 ガルドスは眉間に深い皺を刻み、厳格な口調で断じる。


「けっ、相変わらず堅苦しい野郎だぜ、ガルドス。そんなこたぁどうでもいいんだよ!」


 ジルヴァが机を蹴らんばかりの勢いで立ち上がり、アルガスを真っ直ぐに睨みつける。


「白炎の旦那を助けたっていうそのガキども、俺に会わせろよ。どれほどのモンか、この俺が直接拝んでやるぜ」


 アルガスは感情の読めない瞳でジルヴァを見返し、短く答える。


「……好きにしろ。あいつらは今、魔術学校に戻っているはずだ」


「かっかっか! そうこなくっちゃなァ!」


「あーあ……厄介なのに目をつけられちゃって。あの子たち、可哀想にねぇ」


 フェリスがわざとらしく溜息をつき、ジルヴァを小馬鹿にするように肩をすくめる。その言葉に、ジルヴァの顔から笑みが消え、獰猛な殺気が室内に充満していく。


「あァ? てめぇ、今なんつった……。影女、その減らず口ごと切り刻んでやろうか?」


 ジルヴァの手が腰にある2対の短剣の柄にかかり、抜刀の風が周囲の空気を震わせる。対するフェリスも、不敵な笑みを崩さぬまま、その足元からどろりと濃い影を広げ始める。


「あら、怖いわねぇ。やってみなさいよ。あなたの風が届く前に、その影に沈めてあげるから」


「……そこまでにしろ。ここは貴様らの私闘の場ではない」

 アルガスの重厚な声が響き、二人の魔力を一喝するように押さえつける。彼は立ち上がり、冷徹な声で解散を告げる。


「……解散だ。各々、己の職務を全うせよ」


 各隊長は無言で席を立ちましたが、その足取りは三者三様だった。

 規律を重んじるガルドス。好奇心という名の刃を研ぐジルヴァ。そして、妖艶な影フェリス。

 重苦しい空気がアステリアを包んでいた。

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