第12話「守備隊の奮闘」
フェロウルフの群れが襲いかかる。
オルグは剣で迎え撃ち、カイは二刀流で華麗に魔物を斬り伏せる。
戦闘中の二人の掛け合いには余裕すら感じられる。
だが、レジンベアの群れが迫り、戦況は厳しくなっていく。
オルグたちは協力して立ち向かうが――
(来る!)
最初の一体が弾丸のように飛んだ。
フェロウルフの爪が閃くより早く、オルグは剣を突き出していた。
フェロウルフの胸から赤い鮮血がほとばしり、苦しそうな鳴き声を発する。
「グルル‥‥‥」
オルグは鼓動が止めることができないほどに高ぶっていくのを感じていた。
(もっとだ、もっとこい。全てオレが裂いてやる。ヌーベルは‥‥‥リョカは、オレが必ず守る!)
オルグが剣に刺さったフェロウルフを投げ飛ばすと同時に、次々とフェロウルフの群れが隊列前列に飛び込んでいった。
オルグの横には両手に剣を持った二刀流のカイがいた。
カイはオルグとともにヌーベルで戦士として最も有能さを認められていた。
オルグもカイの実力を高く評価している。
確かに破壊力や突破力ではオルグには敵わない。
しかし2つの剣から繰り出される妙技にはいつも驚かされていた。
そんなカイのところにもフェロウルフが突っ込んでいく。
オルグのように剣を突き刺すのかと思ったが、フェロウルフを紙一重でヒラリと避けると同時に、2本の剣が躍るように動く。
喉、脇腹、脚――急所だけを短く深く、確実に裂いていた。
(どういう動体視力と剣捌きしてんだよ‥‥‥。普通、串刺でいいじゃねえか。なんでそんな難しいやり方すんだよ)
理解できず、オルグは呆れていた。
「なんだよそれ」
オルグはつい横にいるカイにぶっきらぼうに尋ねる。
「何って?」
「なんでそんな面倒な倒し方すんだよ」
「面倒?オレには最も簡単だと思ったが」
カイは涼しい顔のまま、二本目の剣で狼の眼窩を切り裂きながら答えた。
「相変わらずぶっ飛んだやろうだよ。お前が焦っているところを見たことがない」
「焦るヤツはゴキブリ以下だ」
「相変わらず、言葉がキツイな」
苦笑いを浮かべるオルグ。
「どうやったら、お前みたいに冷静でいられるんだ?」
「簡単だ。いつも冷静でいればいい」
「いや、それができないから聞いてるんだよ」
「常に意識する訓練をすればいい。人間は習慣の生き物だ。一貫性を求める」
「俺には、冷静さという一貫性がないと言いたいのかよ」
オルグはむくれて言った。
「わかってるなら、聞いてくるな。ムカデみたいに不快だ」
カイが無表情で言う。
「なあ、前から思っていたんだが」
「なんだ?」
カイが素直に聞き返す。
「お前って、一定間隔で暴言吐いてないか。あと、虫系が多いな」
「気のせいだ」
「そうかな」
「そうだ。しつこいぞ、ダニか」
「ほらな」
オルグがニヤっと笑って言った。
「もういい、敵に集中しろ」
そう言うと、カイは口を閉ざす。
オルグも視線を前へ戻す。
フェロウルフは、オルグ達以外にも、守備隊たちの攻撃によって少しずつ数を減らしていた。
‥‥残り、まだ八頭はいる。
盾列が踏みとどまっているのは、ベルノの指示が早いからだ。
前列が半歩詰め、間隔を埋め、二列目がその背後へ重なる。
穴を作らせない"壁"の形。
村の家族達が無事でいられるかはこの隊列の維持にかかっている。
オルグが門を見ると、大きな足音とともに巨体をゆすりながら近づく存在に気づいた。
巨体が柵の破口へ姿を現す。
レジンベアの群れだ。
数は五頭。
灯りを受けた装甲は鈍く光り、簡単には刃が通らないことを物語っていた。
顔の輪郭すら硬そうに見えた。
「オルグ、次が来る。次は少しやっかいだ」
カイが落ち着いた声で言う。
しかもフェロウルフもまだ八頭残っていた。
「レジンベア、やっかいだな。あの硬い装甲をいかに崩していくか」
オルグは苦々しい顔を作った。
「そうだな、通常の攻撃では傷一つ付けられない。クソ虫め」
カイが感情を出さずに言った。
「ベルノ!どうする?レジンベア相手だと、こちらもかなり損耗するぞ!」
オルグが叫ぶ。
ベルノが即座に叫んだ。
「レジンベアの相手は魔法による強化が使える者で対応だ!オルグ、カイ、ハルト、ガレン! 前へ出ろ!それ以外は横陣のままフェロウルフを止めろ!リョカも"中央の四人"を優先で支援しろ!」
四人が一歩前へ出る。だが同時に、盾槍列が即座に詰めて穴を埋めた。
二列目が前へ入り、後列がさらに半歩詰める。
「いいか、数は相手の方が多い。まずは一匹ずつ集中的に攻撃して確実に数を減らすぞ。ガレン、一発目をその盾で受けろ!そこに合せて装甲が薄い首に叩き込むぞ!」
オルグが早口で指示をだす。
「分かった!」
ガレンは大きく息を吐き、盾を前へ出し、踏み込む。
1頭がオルグに突進してきた。
鋭い爪を振るって襲いかかる。
ガンッ!盾に衝撃が走る。
ガレンの体が激しく揺れ一歩、二歩、押し戻される。
そのとき、ガレンの後ろからオルグが飛び出した。
(今だ!)
「光の王ヌアザよ、我が剣に闇を裂く力を!」
言葉が発せられると同時に、刃に淡い光が宿り、
オルグがレジンベアの首に剣を振り下ろす。
オルグの剣ははじかれることなく、レジンベアの首を切り裂いた。
鮮血がほとばしりレジンベアが苦痛の声を上げる。
「よし!」
そのとき、背後に黒い影が迫った。フェロウルフが矢のように飛び込んできていた――
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